第27話

  ☯


「えっ……この神社で?」


「ああ。なぜ青葉ちゃんが魂珠を作れないのか、なにか理由があるはずだ。その手がかりを見つける。まずは……だが」


「まずは、って?」


「何事にも段階が必要だってこと。その第一段階が今、目の前にある葛原神社だ」


「…………そう、なんだ」


「青葉ちゃんには葛原神社へ行くことが、つらいことなのかもしれないけど、手段は選んでられない。とにかく、この神社の中に入るしかない。こっそりとな。さて、術式を発動させるか」


「術式?」


「神霊術式、発動!」


 俺と青葉ちゃんの姿が景色に溶け込んでいく。


「…………えっ、と?」


「今、俺と青葉ちゃんの姿は周囲に発見されにくくなった。つまり、透明化だ。ただ、俺と同程度の存在には見つかってしまうけどな。葛原神社には葛原青花くらいしか見ることができないだろう。今は彼女がいない。行こう」


「うんっ!」


  ☯


 葛原神社にある歴史的な書物を確認する俺たち。


「これが葛原の家系図か」


「たぶん、ね」


「まあ、青葉ちゃんは葛原神社を追い出されているから、わからないのは仕方ないか」


「ごめんね……」


「ううん、俺のほうが嫌なことを思い出させてしまったね。こっちこそ、ごめん」


「いいよ」


「……それで、家系図を確認したわけだけど」


「うん」


「葛原の家を継ぐのは先祖代々から名前は『青葉』のようだけど……それについて、なにか心当たりは?」


「ある、よ」


 青葉ちゃんは悲しそうな顔をして語っていく。


「わたしのお母さんもね……『葛原青葉』という名前だった。言いたくなかったんだけど、『青葉』の名を冠する巫女は正当な後継者の証だって言われていたんだ。だけど、わたしは出来損ないで、本当の正当後継者は青花ちゃんだった」


「まだ、わからないよ」


「そう、かな」


「そうだよ。青葉ちゃんは俺からしたら若すぎる。まだまだ、これからだよ」


「これから、かな……」


「青葉ちゃん、君が葛原神社を追い出された過去は変わらないけど、未来は……いや、目の前にある現実だけは、いくらでも変えられる。たとえ陰陽院の人たちが認めなくてもだ」


「……そう、だと、いいな」


「これから、そうなるための判断をしていくんだ。俺たちが、ここへ来た目的は、まだ、あるよ」


「……えっと?」


「――ああ、あったあった」


 俺は倉庫の中にある、ある歴史的な書物を手にする。


「これを見てくれ、青葉ちゃん」


「これって……」


「『葛原家訓……葛原の家を継ぐ巫女の名は必ず「青葉」にせよ』……なるほどな。どう思う、青葉ちゃん?」


「どうって……」


「やはり広輪京の五方の巫女は先祖代々、同じ名を継ぐらしいな。噂通りだったか」


「噂、通り?」


「まだ悩むには早いってことさ。これで第一段階は終わったな。次の段階へ移行しようか」


「第二段階?」


「第二段階か最後の段階になるかはわからないけど、次は陰陽院の歴史書物が格納されている場所まで、とりあえず行ってみようか。今より、だいぶ危険になるけどね」

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