第6話

  ☯


 いまだに青葉ちゃんは自身が、その果実の持ち主だということに気づいていない。


「神さま……ありがとうございます。では、いただきます」


 むにゅ。


 俺はたわわに実った二つの大きな果実――つまり、青葉ちゃんの胸をわしづかみにした。


 ぷにゅむにゅ。


 俺は青葉ちゃんの果実を引っ張る。むしろうとしているのだが、むしろうとしても、なかなか青葉ちゃんの果実は手に入らない。


 もちろん、それは胸を揉むという行為にほかならない。


「あれ? おかしいな? この果実……なかなか取れないぞ。……そうか。取ることができないのなら、直で食べればいいんだ。なんで気づかなかったんだろう……俺の頭はどうかしてるぜ」


 はむはむ。


 俺は青葉ちゃんの果実に口をつける。その果実が青葉ちゃんの体の一部であることに気づかずに。


 はむはむ。ちゅっちゅっ。はむはむ。ちゅっちゅっ。


 俺は青葉ちゃんの果実を小刻みにリズムよく優しく食べる。


 一方、青葉ちゃんはあまりのことに軽く失神していた。


(…………)


 今まで青葉ちゃんは異性から積極的に体を触られたことがなかった。


 一度の接吻せっぷんさえもしたことがなかったのに。


 青葉ちゃんの体はマグマのように熱くなっていく。


 顔も体も灼熱のように燃える赤い色へと変化していく。


 そして、なにかが青葉ちゃんの中で切れた。


 ぷちん……と。


 その音が頭の中でいくつもはじける。


 ぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷち。


 青葉ちゃんは右手を構えた。


 その構えた右手を俺の顔へと勢いよく。


「いいやああぁぁぁっ! こんっのあほんだらあぁぁっ!」


 声を張り上げ、平手打ち――要するにビンタ――した。


「うぶ……っ……はあ……っ……ん……っ!」


 そんな声を発した俺は、再び意識を失った。


  ☯


「……! ここは……?」


 気づいた青葉ちゃんは、すぐさま俺のもとへ駆け寄った。


「大丈夫? なにも体に異常はない? 痛いところとか、寒気がするとか、なんでもいいのっ! わたしに教えて!」


「……えっ? ……へっ?」


 俺は頭を抱え、考え込む。


「ほっぺたが痛い」


「それは関係ないよね」


 俺の言葉に、あきれた青葉ちゃんは問いかける。


「わたしの名前は葛原かつらはら青葉あおば。君の名前は? 君、どうして海岸で倒れていたの?」


「…………」


「服が海水でビショビショだったから、服は勝手に替えさせてもらったけど……」


 青葉ちゃんは俺の体を思い出し、顔を赤らめながら言った。


「……まさか、海を泳いでやってきた……というわけじゃないよね?」

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