第3話

  ☯


「ヒルコ……だと?」


「ああ、それが彼の名前であり、僕と同じ属性の神だ」


 電流を吸収したことがスイッチとなり、俺は、ありとあらゆる情報を自身に取り入れた。


 そして――。


「――…………これが、俺?」


 芋虫のような姿だった俺は、いつの間にか人間の姿に変化していた。腕と足も、ちゃんと存在している状態で。


「『千変万化せんぺんばんか』が、うまく働いたようだな」


「……父さん」


「残念だけど、僕は、もう……父さんじゃない。お別れだ」


「なんで!?」


「僕は日本ひのもとの君を受け入れてしまった。それがばれた。だから罰を受ける。それでいいだろ……父さん?」


「俺が許すと思っているのか?」


「いや、そうでないと困る。ヒルコと戦うってことはね、存在と存在による戦いの長期戦を意味するんだ。ヒルコの存在は、そう簡単には消えやしない」


「なぜ、わかる?」


「僕は詳しいんだ……彼のことはね。だから、彼のことは見逃してほしい」


「理解はした。だが、貴様には罰を受けてもらう。いわゆる……奈落へと、な」


「じゃあ、また、いつか会おう……ヒルコよ」


「そのヒルコって、俺のことなのか?」


「ああ、日本ひのもと神話しんわで最もマイナーな神が君なんだよ、ヒルコ」


「マイナー、なのか」


「でもね、最も可能性のある神でもあるんだよ」


「可能性……?」


「最も謎がある、と言ってもいいかな? これから君は知るだろう……自身が持つ可能性を。まずは帰るべきところへ帰ろう。行ってくるんだ、日本ひのもとへ」


「でも、俺は……あの国の神々へ追い出されて」


「あのときは、そうだったかもしれない。でも、今の君を見たら受け入れてくれるだろうさ」


「そう、かな?」


「そうとも」


 その会話の途中、彼は俺に「あるモノ」をプレゼントしてくれた。


「……自転車?」


「改変式自転車――カレイドスコーパーさ。これは海を渡るとき、ボード状に姿を変えることができるんだ。それとヘルメットとゴーグルをあげよう。これらがあれば、海にいる神々との戦いに勝利を収めることができるだろう」


「まさに至れり尽くせりって感じだな……ありがとう、父さん」


「もう僕は君の父さんじゃないよ」


「それでも俺は、あなたを父さんだと思いたい。あなたがいたから、俺は生きられた」


「……そう、だといいな」


 父さんは悲しそうな目をした。

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