第16話 鈴
天竜という言葉は、昴の頭に纏わり付いて離れようとはしなかった。紅南国は朱雀を崇める国だが、柳瀬の祖先が悪の神だということから、それも祭っている。ゆえに、善の神の側に付いた天竜は、紅南国にとっては敵同様で、憎み疎まれる存在だった。
幼い頃、昴もそのように教えられてきた。紅南国以外の三国での悪こそが、紅南国では善であり、それが全てだから、碧、白、緑とは信じるもの、学ぶものが全く相違しているのだ。
――天竜の存在を知ったら、紅南国はどうするだろう?
ふと、懐かしがりたくもないが、祖国のことが思い浮かび、考えて、昴は一人苦笑した。
――分かりきっているじゃないか。
捕らえて殺す、それだけだ。
昴は紅南国が戦を繰り返す所以を知らない。父のように重大な仕事を授かるには、昴は幼すぎたし、政務が出来るような年頃になった時には、紅南国内にいなかった。
当時まだ幼かったとはいえ、傍らで見ていた昴には、喜瀬村が己の満足の為に戦を起こしているのは分かっていた。あの傲慢で我が儘で欲の強い男が、改心したとは思えない。
昴は額に手を当て、唇を強く噛んだ。口の中で鉄の味が広がって、それで噛み切ってしまったことに気がつき、乱暴に手の甲で拭う。
――それだけの為に……どれだけの人が死んだと思っているんだ。
どす黒い空気を纏う城から逃げ出した昴に、かの国に憤りを感じる権利も非難する権利もないことなど分かっている。非難するなら、昴はあの城に――朱雀城に留まらなければならなかったのだ。残って強い権力を持っていた父の跡を継ぎ、なんとか、本来の国としてのあるべき方向へと持って行く。仁と愛に満ちた、正常な道へと。だが、何年も前に昴はそうすることを破棄した。
「……」
ふと、なぜ自分はこんな物思いに耽っているのだろうか、という疑問が浮かび、昴は顔をあげた。答えはすぐに出た。
琴音だ。琴音が原因なのだ。
先程の彼女の様子が、今でも頭から離れない。徨来に対してものもだが、少しだけ垣間見ることが出来た小さな笑顔と、頬を染めて照れる姿。そして、自己を責めるように変貌した、怨みと、憎しみと――強い悲しみを含んだ表情。
彼女の笑顔を見た時、本当に綺麗なものだと思った。優しくて、愛に溢れていて、一瞬、同一人物なのかどうかも分からなくて、ポカンとしたほどだ。あれが琴音の本当の姿なのだと、昴は思う。いつも昴が見ている琴音は、おそらく戦の後に創られた、大きな闇だ。父母を始め、兄弟や、友人、知人、そして最終的には祖国までもを奪われている。突然膝をついたあの時のことも、それが原因なのだと予測出来る。さしずめ、乃依が親しい者に似ていて、それに記憶が重なって甦って来た。――そんなところだろう。あんなに深い苦しみを月日が流れた今でも持ち続けているのだから、全てを失ったばかりの頃はどうだったのだろうか。
「う……ん」
小さな声が聞こえて、昴は顔をあげた。音の元を見れば、床に横になっている琴音の姿があって。
「琴音……?」
声をかけてみるが、返事はない。音をたてずに昴は立ち上がり、琴音を覗き込んで――笑ってしまった。
「まったく……」
あどけない表情で規則正しい呼吸を繰り返しているのは、まさに十五歳の少女のそれだった。いつも憮然としているだけに、琴音が年相応の娘に見えることは、新鮮味があって、それはとても良いことだ、と昴は思っている。既に頭に巻き付けた布が取れ、長い髪があらわになっていた。昴は琴音の髪をあまり見たことがないが、彼女の髪が綺麗だったいう強い印象は頭の中にある。なんのことはない、初めて出会い、初めて刃を交えて、相手が女だと分かった瞬間に、真っ先に思ったことがそれだったのだから。
「あの時は本当に驚いたんだけどな」
起きないよう小さな声で、昴は呟いた。
「まさか自分を殺人者扱いするやつと、共に旅をすることになるなんて」
自分の着ていた袍を脱いでかけてやる。それにしても、まだ日は随分高いのに、熟睡とは――よほど疲れているのだろう。
部屋からそっと出て、長い廊下を歩き、その辺にいた女の人に、
「連れが仮眠取っていますので、人払いお願いします」
とだけ言って、屋敷を出た。
袍がない外は、やはり肌寒かった。あと数日で雪月に入るから、もうそろそろ雪も降り始めるだろう。地面が白一面に覆われ、そこにつく自分だけ足跡がおもしろかったりするのだ。
しかし、今現在の空は、水の底より青く、陽の光よりも高かった。雲一つない快晴とも呼べる美しい天上の下、何人かの子供は走り回り、大人は畑作業をしている。
――変わるべき時なのかもしれないな。
そんな人々を眺めながら、昴は思う。自分が本当は紅南国の者――それも、朱雀城に住まうほど高い身分の父を持つ者であることや、昴自身がその身分を継ぐはずだったこと。城を抜け出したこと。そして、琴音の中に碧の姫を見ているからこそ一緒に旅をしていること。
――いや、見てしまっていた……かな。
まだ琴音と一緒にいた期間は短い。けれど、その短い期間の中で、昴は一人の少女を見出だした。克羅の姫の代わりでも、克羅の姫を知っている者でもない。彼女という人間はこの世にたった一人しか存在しないなのだ。他の誰と重ねることも、間違えることも許されない。
全てを話そうと思った。琴音に全てを。自分の全てを洗いざらい。それで初めて、昴が彼女の横にいることも、彼女のことを心配することも、彼女の笑顔を見たいと思うことも出来るのだと思う。
「……きっと嫌われるな」
――今だって好かれていないけれど。
空を仰ぎ見て、昴は自嘲した。
辺りを見て回るうちに、村が随分と裕福なことに昴は気がついた。天竜の子孫という存在があるからかと最初は思ったが、それにしては人々の中に、特別的な幸福も優越も見えない。むしろ、当然のごとく、長くて温かそうな衣を身に纏い、丈夫で肉付きのよい体つきをしている。『天竜の血を持つ者がいる村』として、他の村々から崇められ、何かを貢がれたとしても、裕福なのは乃依や、その息子の徨来だけで、他の者の生活はあまり変わらないはずだ。
「おにーちゃん」
村というよりは、白西国自体が変わったのではないだろうか――と、考え込んでいた昴の背中に声がかかり、振り向いた。見れば、先程までまとまって遊んでいた子供達が、昴を興味深げに見上げていた。ちゃんばらにも石蹴りにもかけっこにも飽きたらしい。昴で新しい遊びをしようとしているのが、全員のキラキラした瞳でわかった。
「や、やあ」
頬をぴくぴく痙攣させながら、昴は無理やり作り出した笑顔を向けた。また何か嫌な予感がする。がきんちょは勘弁してほしい。さっきだって、鈴を馬からわざわざ降ろしてやったのに、あいつときたら体中を蹴り飛ばしてくれたのだ。あんな経験は人生のうち一度だって充分だ。
無意識のうちに半歩程後退していた昴の袖を、誰かがクイッと引っ張った。
「え……」
「あっ!なんでお前がこんなところにいるんだよっ」
人生で一度かぎりになる予定の蹴りをかましてくれた鈴が、昴の後ろに隠れるようにして足にしがみついていた。それに気付いた子供達は、途端目を三角にして鈴を睨み付ける。
「俺達がこの人と話してたんだぞ!お前はどっかに行けよ!」
「そうだそうだ!」
「で、でも……」
「行けったら行け!」
「……」
昴はうんざりして周りを見回した。四、五人がまとまって一人をいじめる。よくある光景だ。それだけに、こんなくだらない――しかも子供の喧嘩には巻き込まれるのはごめんだった。
「あー、ほらほら、喧嘩は止めろ」
本当子供は苦手だ――と、心の中で呟きながら、昴は一応仲裁に入った。鈴を庇う形になるが、面識があるのだ。当然だろう。
もともと昴と遊ぼうとしていたからか、鈴に寄ってたかっていた四、五人は、言葉を無視することはなかった。だが、そんなことをしなければ可愛らしい面であろうに、眉根に皺を寄せるか頬を膨らますかして昴を見上げ、口々に言葉を吐くから、全員が全員小鬼のようになっている。そのうち角でも生えてきそうだ。
「だって兄ちゃん、こいつ、普通じゃないんだ」
「そうだよ。なのに乃依様や徨来のそばについて回って……おとうがあいつには近付くなって言ってたんだ」
「こいつだってそのこと知ってるもん」
非難の言葉の羅列を聞き、昴は鈴を振り返った。表情は変わっていなかった。しかし、衣を掴んだ状態で、布を皺くちゃにしてくれている。
「ほら、お前さっさとこの兄ちゃんから離れろよ!」
「俺達が先にこの兄ちゃんに旅の話聞こうとしてたんだぞ!」
「いつもいつも邪魔しやがって……お前なんかこの村からいなくなればいいんだ!」
「……」
「黙ってないでさっさと失せろよ!夜叉にでも食われろ!」
怒気が強くなり、子供達の声は大きくなる。周りの大人達だって気が付いているはずなのだが、誰も咎めようとはしなかった。むしろ、完全に無視し、関わりを持とうとしないのが、昴の目にも明らかだった。
そんな村の様子に、昴は顔をしかめた。子供達の鈴に対する態度は、一定の域を超えている。最後に放たれた言葉など、言語道断。本気だろうがふざけてだろうが比喩だろうが揶揄だろうが、口にしてはならないはずだ。そんな冗談にもならない暴言を黙認するほど、この村の教えや教育はなっていないのだろうか。
昴は鈴の頭に自分の掌を置いて、グワシグワシと撫で付けた。突然の行動に鈴はもとより、子供達全員が唖然としている。
――強いんだな。
そう声をかけようと、昴は鈴の方を見て、ぎこちなく笑ったと同時に、子供の一人が声をあげた。
「やばい……」
その子供の視線の先を追うと、見覚えのある人物が目に入った。忘れもしない、昴の長い旅人生の中で、異例中の異例な出迎えをしてくれた、弥生月と呼ばれていた女だった。
先程は乃依に縋り、ぐじぐじブツブツと一人呟いたり泣いたりおろおろしたりしていた。今度はガンガンに怒っているらしい。頭から湯気を吹き出さんばかりの剣幕で、獲物を追う猛獣のような勢いでこちらに突進してくる。
「こらぁ~!あんたたちー!」
声が届いた途端、子供達は虫を散らすように、本気で恐怖におののいた表情をして散り散りになって逃げて行った。残された昴は仰天して、そんな昴にくっついていた鈴は衣を握っていた手の力を緩めて、弥生月を出迎える。
「はぁ……はぁ……あいつら、またやったの?」
「ううん。おにいちゃんが珍しかったみたい」
「……全く」
いじめられていた鈴がそれを言わないことに、弥生月は気付いているのだろう。走って荒くなった息を整えながら、じっと見つめて、しばらくしてから昴に視線を移した。
「……あなた、旅人よね?乃依様を助けてくださったうちの一人の……確か……」
「昴です」
「そう、昴。私は弥生月よ。これでも巫女見習いなの。よろしく」
唐突に自己紹介を始めた弥生月に、昴はただ、こちらこそよろしく――と返しただけだった。何より昴の中には、先程のすさまじい様子で乃依を心配していた弥生月の印象が刻み込まれている。あまり言葉を交わしたくないのが本音だった。自分は乃依のように、彼女の言動を綺麗に流せるような優れた器量は持ち合わせていないからだ。
しかし、弥生月は昴のことなどどうでもいいようだった。眼中にすらないらしい。両手を腰にあて、怒気を含ませた雰囲気と瞳で見据えている相手は鈴のみ。
「今度は誰なの?」
「……」
子供にしてはありえないほど洗練された作り笑いを鈴は浮かべて、弥生月を見上げていた。しかし、昴の背後に隠れたまま動こうとはしない。その対照的な様子が、今まで昴が見てきた子供の中では、突出して奇妙だった。喜瀬村の若君達もなかなか良い根性していたけれど。
そんな鈴を、弥生月はじっと見つめていた。その瞳に悲しそうな色が浮かんでいることに昴は気付いた。親しいからこそ来ているのであろう瞳の色に、この二人は姉妹か何かなのだろうか――という疑問がわいた。鈴と徨来は姉弟じゃないのか――と、琴音が聞いたとき、鈴は首を縦に振らなかったし、弥生月も鈴も同じように乃依と親しい。もしかしたら――と、昴は思ったのだがしかし、その答えが否だと、二人の会話を聞いて、気が付いた。
「またあの村長んとこのガキ?少しは言い返しなさい。男の子だからって少し年上だからって村長の息子だからって鈴が気兼ねすることはないのよ!むしろ噛み付いて引っ掻いてぶっとばしてやりなさい!反論するだけじゃ私の気がすまないのよ!あなたのお母様だって、あなたが我慢することなんか、全然、これっぽっちも、米粒程も望んでないわよー!」
うがぁー!と、頭を抱えて、傍にあった拳大の石を蹴り飛ばすこの女は、本当に巫女見習いなのかと誰かに問いたくなる程、普通の村娘以上に、感情の高ぶりが見事だった。昴の記憶に間違いがなければ、巫女は、神と通じる者のことを指す言葉だったはずだ。常にその声を聞けるよう、いつも冷静であるのが、巫女たるものの最大の条件。確か、朱雀城の神祇官はそう言っていた。
――あえて突っ込むまい。
獣のような唸り声をあげる弥生月を見て、そう決めた昴は、鈴を自分の後ろからそっと押し出した。鈴は少しよろけながらも、引っ張り出されるがまま、弥生月の前に立った。
「……ほら」
昴がトンッと背中を押してやると、我慢していたのか、鈴は弥生月に走り寄り、ぎゅっと抱き着いた。まだ一人、苛々と地団駄踏んでいた弥生月は、やっと子供らしい様子を見せた鈴を見て、溜息をつき、そしてやんわりと笑んだ。
「全く……鈴は本当におばかさんなんだから」
「弥生月お姉ちゃんよりかはばかじゃないもん」
一瞬、弥生月の頬がピクリと動いた。同時に、ブチッという何かが切れたような音が響いたが、昴は当然のことながら、音の元であろう弥生月も聞こえないふりをした。
「……さあ、早くお母様のところに行ってらっしゃい」
頬をひくつかせながら、それでも弥生月はにこにこと笑っていた。確信犯であるはずの鈴は、そんな弥生月を見ておもしろそうに笑い、昴の方を振り向いて、
「乃依様がお暇になったらいらしてくださいって言ってたから、昴おにいちゃん、喬おにいちゃん連れて来てね」
と、笑顔を残し、踵を返して走り出した。
残された昴と弥生月は、小さな背中がますます小さくなってゆくのを見つめていた。
「不思議な子ですね」
「やっぱりそう思う?」
昴が弥生月を見ると、彼女は鈴の去って行った方向をじっと見ていた。
「あの子、拾われ子でね。乃依様が引き取って育てておられるのだけれど、それに引け目を感じているみたいなの」
「拾われ子?」
昴が聞き返すと、弥生月は頷いた。
「まだ乳飲み子の時の話よ。小川の辺で子供が泣いているのを乃依様が見つけられたの。白西国では育てられない子供がいる場合は、国が引き取ることになっているから、捨て子はあまり身近なものじゃないわ。だから偏見が多くて……仁多に連れていっても良かったのだけれど乃依様は、私が育てるから、っておっしゃって」
だから鈴の母親は乃依様同然なのだけれど――と、弥生月は息を吐き、目を伏せる。
「乃依様を絶対に母と呼ばないのよ。村の人々がそれを見て反感の念を持つことを感じているから」
「……鈴は何歳なのですか?」
弥生月の話を聞いていて、鈴が年相応の行動を取るとは思えなかった。初めて見た時は、五、六歳かと思ったが、おそらく実際は――。
「四歳よ」
弥生月は厳しい表情を変えることなく、言った。
――四歳。
弥生月が答えた数字を、昴は心の中で反復した。四歳といえば、まだ喋る言葉も不確かで、考えることなど自分勝手なことばかり。周りの心配など全く気にせず、したいようにするのが常だ。
それを昴が言うと、弥生月は頷いた。いわく、既に子供という生き物ではないらしい。世の条理や非情、仁、悪、生、死。そういった人に関わる全てのものを理解しているのだという。
昴はあの小さな女の子を頭に思い浮かべた。あの大人びた雰囲気は、周りの環境によるものなのか――。
琴音とは真逆ではないか、と考えが浮かんで、しばらくしてからたまらず一人苦笑した。
違う。真逆どころかむしろ、琴音と鈴は似ている。ほぼ同じと言って良いだろう。境遇により頑なに心を閉じている琴音と、頑なに乃依を母親だと認めない鈴と。前者には喜びの表情がなくて、後者には哀しみの表情がない。この二者は対となっているが、似過ぎている。
「鈴も巫女見習なのよ」
弥生月が唐突に言った。
「私なんかより……下手したら乃依様よりもすごい力を持っているわ」
「すごい力?」
突然の言葉だったから一瞬面食らったが、返答に時間はかからなかった。弥生月の台詞を反復すると、これが肝心とばかりに声を潜めた。
「真実を見抜けるの」
目の前にいる女にとって、昴はただの旅人でしかないはずなのに、何故ここまで鈴の詳細を知らせるのかが分からない。そして、彼女の放った言葉の意味が分からない。その二つが相俟って、昴は弥生月をしばらく見つめていたが、彼女の言葉を唐突に理解した昴は、眉を潜めた。
「それはどういう……」
「文字通り、誰かの嘘や偽りの姿、人の心の奥まで、覗こうと思えば覗けるわ。だからあの子は人が思う様々な感情を理解しているし、特に、憎悪とか嫌悪とか……そういう感情にはとても敏感なの」
だからいつも表情を偽っているのでしょうね――と、悲しそうに言う弥生月を、昴は凝視していた。
――真実が分かる?
体に緊張が走った。体中の肌という肌から冷や汗が吹き出しているのを感じ、その冷たさに、鳥肌までたってくる。
――鈴が……。
真実とやらが見抜けるのは納得出来る。琴音が本当は女であると瞬時に判断出来たのも、多分そのせいだろう。だから余計に怖い。その能力を知ってしまったから、自分の不安は膨張して、心臓の鼓動を早くする。
――もし……俺の出生がばれて……琴音がそれを知ったら……。
自分から琴音に告げようとは思っている。昴は紅南国の――それも、朱雀城に住まう政事関係者の息子で、碧の国の滅亡は昴のせいでもあるのだと。だが、それを伝えるのは今じゃない。緑北国を抜け、知人と似ているであろう乃依と出会い、心身共に疲れきっている彼女にとって、昴の言葉は鋭い槍でしかないはずだ。
昴は拳を握った。
「弥生月殿」
平常に見えるよう、怒鳴りだしそうな自分を昴は抑えた。呼ばれた弥生月は顔をあげ、昴を見上げる。その動作さえも、今の昴にしてみればかなり不吉に思えた。
「乃依様の所へ案内していただきたい」
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