第二十二話 『もしも』の時に備えて

 ――かちゃり。

 手にした刀が、そう音を立てる。


 というのも、春馬はるまたちからの忠告もあって、警戒しないよりは良いだろう、と判断しての事だ。

 でも――


「……」


 あんな風に彼らに言ったわけだが、本当に勝てるかどうかは分からない。

 黒髪の彼と相対して、勝てないと判断できてしまった私に、現『最強』となったであろうあの人と相対して、私は本当に勝てるのだろうか。


   ☆★☆   


「マーリリン。どうかした?」


 菜々美ななみが顔を覗かせながら、尋ねてくる。


「んー? 別にどうもしてないよ? 何で?」

「何か考え事してるように見えたからさ」

「ああ、そういうこと」


 どうするべきなのか、対策を考えていたから、きっと気になったのだろう。


「いや実はさ、今度ちょっと面倒な人が来る予定だから、どうしようかと」

「面倒な人?」

「何かいろいろと勝負したがる人なんだけどね」


 少し言い換えただけで、嘘はついてないはずだ。

 面倒な人=だし。


「しかも、結構な負けず嫌いだから、こっちが負けるまで続けようとするし、手を抜いたら手を抜いたでうるさいし」

「うわぁ……」

「だから、どうしようかと」


 そうだねぇ……、と菜々美たちが唸る。


「異能でどうにかしちゃうのは?」

「菜々美はさ。戦闘系能力者相手に、勝てるかどうかも分からない自分の異能で対抗できると思ってるの?」

「う……」


 私のは戦闘系に近い・・・ってだけで、戦闘系ではない・・・・から。

 その事を菜々美も知っているからこそ、言い淀んでいるのだろう。


「だから、悩んでるんだよ」

「それなら、戦闘系異能の持ち主に一緒に行ってもらうとか?」

「むー……」


 それもなぁ……。

 それに、知り合いの戦闘系異能者なんて、そんなに居ない(バイト先の面々は、緊急時を想定して除外)。


「後は……」


 かなでがそう言い掛けたところで、チャイムが鳴る。


「まあ、頑張って何とかしてみるよ。二人とも、ありがとう」

「そっか」

「良い案、浮かぶと良いね」


 頑張れ、と言って、菜々美たちは席に戻る。

 さて、本当にどうするべきか。


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