第十話 友人×再会×急転直下
さて、三人――ではなく、四人で集まることになったのだが。
「……」
「……」
「……」
「……」
何で、無関係な人まで、一緒にいるのかな?
☆★☆
さて、私たちの予定が合う日など、滅多に無いので、前回からそんなに経っていようが無かろうが、会えるときに会わなければ、次にいつ会えるかなんて、分からなくなってしまう。
なので、
「
今日はあの中学出身者四人で過ごそう、と。
「悪い……」
「ごめん、撒こうとしたんだけど……」
「先輩は悪くありません!」
「そうだよ。オレが勝手について来ただけだしね」
謝る二人に、元凶たちが口を挟んでくる。
予想していなかった訳じゃないが、やっぱりというか、何と言うか。
「……
そう聞いてきた黒城君に困ったような目を向ける。
え、私をこんな所に置いていくの? ――と思っていたのだか、それを阻止するかのように、美樹さんと結城が彼の両腕を捕まえる。
「誰が、帰って良いって言った?」
「俺はお前に聞きたいことがあるって、万里経由で言ったはずだが?」
「ちょっ……」
そのまま連行するような形で歩き始めた三人(一人は引き摺られているが)に、私は驚きで固まっている結城と美樹さんにくっついてきた二人に軽く頭を下げてから、追い掛ける。
「ほらほら、このまま行くよー」
美樹さんは黒城君の腕を解放したらしく、私の手を引いてくる。
結城も結城で、黒城君の腕を解放しながらも、何やら話している。
「行くよって、どこに行くつもりなの」
美樹さんたちが居る以上、遊園地とか、明らかに誰かと遭遇しそうな場所は駄目だ。
「ん? ショッピングモールだけど?」
あそこなら色々あるし、と美樹さんは言う。
確かに、飲食街やゲーセンスペースもあるから、あそこなら楽しめることだろう。
それからは、ショッピングモールで服などを色々見て回ったり、昼食を取ったり、ゲーセンスペースで勝負したり、と様々なことをした。
「あー、楽しかった」
「本当に、楽しそうだったよね。美樹さん」
「少し休みたい……」
上機嫌な美樹さんに対して、男性陣はぐったりしていた。
「二人はお疲れ様」
「つか、あの二人。まだ諦め悪く付いてきてるんだな」
「あー……」
黒城君の言葉に、苦笑いするしかない。
まあ、私でも気付いていたんだから、結城と美樹さんが気付いていないはずがない。
「こいつらが一番楽しそうにしているのが、俺たちと一緒に居ることだって、気づけば良いんだがな」
「そうだね」
自販機で飲み物を買ってる二人を見つめていれば、「万里」と黒城君に呼ばれる。
「何?」
「お前、覚えてないのか?」
「何を?」
黒城君が何を言い淀んでいるのか分からないが、表情から迷いや困惑は見てとれる。
そんな時だった。
悲鳴が聞こえ、爆発音がして、少しばかり揺れが響いてくる。
「暴走異能者だーー!!」
誰かが大声で叫び、その内容に私は思わず反応して、立ち上がる。
「万里?」
訝しむかのように、黒城君が目を向けてくるが、そういえば彼は私のことを
「え、何。何かあったの?」
「暴走異能者が出たらしい」
美樹さんの問いに、黒城君がそう答える。
そのタイミングで携帯が鳴る。
相手を見れば、やっぱりというかバイト先の先輩で、その内容は――出動要請。
――でも。
もし、今向かえば、美樹さんたちのことだから心配されるし、今のバイトを辞めさせられる。
「っ、」
どうする、どうする、どうする。
「万里」
名前を呼ばれたので振り返れば、友人たちが仕方ない、と言いたげな顔をしていた。
「気になるんだろ? 見に行きたかったら、さっさと行ってこい」
「その代わり、ちゃんと戻ってきてよ?」
「無理して、暴走異能者を止めようとか考えるなよ?」
結城、美樹さん、黒城君の順に告げてくる。
「みんな……ごめん」
頭を下げて、暴走異能者が居るであろう場所に向かう。
――爆発したってことは、火属性系の能力者? それとも、魔力量が多すぎるか少なすぎるかで、制御できてないのか。
どちらにしろ、被害が広がる前に、防げるだけ防ぎたい。
「こちら、『シュリ』です。先程は申し訳ありません。現場近辺には居たのですが、友人たちの説得に時間が掛かりました」
『そうだったの。でも、出来るだけ急いで』
「はい!」
とりあえず、連絡を入れて、そう話し終えれば、通話を切って、速度を上げる。
「っ、」
けれど、私がその場に着いたとき、事は
一体、何があった、とか言う問題じゃない。
「……な、」
声が出ない。
――何で?
脳裏に蘇った光景のせいで、問い掛けたいのに、問えない。
けれど、そのほとんど発されない言葉は、地面に
こちらに目を向けられる。
「あんた――」
暴走異能者の上から居なくなったかと思えば、目の前に現れ――……
「――ッツ!?」
振り下ろされた刀を、間一髪で避ける。
刀をすぐに出せない訳じゃないけど、完全に対峙することになると――きっと、負ける。
「……どういうつもりですか? 私は見に来ただけなんですが」
「嘘が下手だな。どうせ、こいつを止めに来たんだろ?」
「……何のことです?」
こいつ、どこまで知っている?
「貴様の能力は、こういう奴らに使うべき
ああ、やっぱり――
「っつ!?」
「ありゃ、気付かれちゃった」
背後からの攻撃を避ければ、けらけらと笑いながら、茶髪の男が青年の隣に並ぶ。
「……」
「
「……なるほどね」
つまり、『
「一緒に行かない?」
「誰が行くか。あんな場所」
「うっわー、メッチャ嫌われてるー」
茶髪の男はこちらに指を指しながら、腹を抱えて笑っているが、冗談じゃない。あんな生活、もう二度と――送ることになってたまるか。
だが、先に来ていた青年にとってはどうでもいいことらしいのか、こちらに背を向けて、去ろうとする。
「あれ? リュー、もう帰るの?」
「もう、ここに用は無い。このまま居ても、時間の無駄だ」
茶髪の男に『リュー』と呼ばれた青年は、暴走異能者をその場から回収すると、去っていった。
「それじゃあね。センパイ」
青年の後を追うように、茶髪の男もその場からいなくなる。
「……」
後に残されたのは、爆心地となったために凹み、ひび割れたコンクリート地面と、私と、数が少ないながらも遠目にこちらを見ていた人たちのみ。
「……戻ろう」
そう言って、友人たちのもとに戻れば、美樹さんに抱き付かれる。
「もう遅い! どれだけ迎えに行こうかと思ったことか!」
「ごめんごめん」
止めるの大変だったんだぞ、と男性陣から目で訴えられる。
「二人も、心配させていたならごめん」
「反省してるなら良い」
「けど、高校でなくて良かったと思っておくべきだな。
「あー……」
確かに、
「……まあ、もしそうなっても、何とかなるでしょ」
「なら、いいんだけどな」
黒城君の指摘したこともそうだが、一番の問題は私のことを『センパイ』と呼んだ茶髪の男と、暴走異能者を止めた青年だ。
私の予想が間違っていなければ、彼らは『研究所』の関係者だろうから、その対策もしなくてはならない。
「それじゃあ、時間も時間だし、もう帰ろうか」
「なら、このまま解散するか?」
美樹さんの問いに、黒城君が問い掛ける。
「どうせなら、中学校の側まで行くか? その方が確か全員の家から近かっただろ」
まあ、徒歩圏内だしね。
「じゃあ、そうしよっか」
そう話し合って、歩き出す。
確かに、『研究所』の方の問題も大切だけど、今は――今だけは、友人たちともう少しだけ一緒に過ごそうじゃないか。
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