第9話
これで何度めだろう、アニメに説教するのは。
オシャレは何度目かわからないため息をついた。アニメはそれを相当な嫌味と受け取ったらしく、ヒステリックに逆切れしてくる。
アニメの技術にはなんの問題もない。しかしライブ中に必要以上に不機嫌な顔を見せるのを止めろと言っただけだ。バンドのイメージがイメージなだけに常ににこやかに笑う必要はないが、流石にステージ上での態度が悪いのにも限度があるということだ。
エースが運転する車の中、事務所すぐそばにあるアパートまで送って貰っている途中での事だ。
そのアパートは事務所が借り上げたいわゆる寮で、ふたり1部屋という割り振りでアンデッド・ブースターバックバンドの面々は共同生活をしていた。最近はスタッフ2人も同居となっている。一か所にまとめておけば管理が楽だから。アニメは不貞腐れて真っ先にバン車を降りて階段を駆け上がって行った。
同室のクイーンが「鍵!忘れてる!」と急いで追いかけていった。
オシャレが疲れた顔で自室に入ると、苦笑いしながらジャズさんが後に続いた。
「まあ、あの子は後でなんとかフォローするよ」と言われるとオシャレのリーダーとしての面目が立たない。
しかしオシャレは表情を崩さずに「あんまり甘やかさないでくださいね」としか指示が出来ない。
今日はそれくらい疲れて居る。
大体パンクも最近様子がおかしい、けれどパンクのフォローはエースがしてくれるはずだから今は良い。丸投げなのはわかっている。
それにしても女はめんどくさい。
パンクやジャズさんにはよく「オシャレはモテるでしょ」と言われる。
だけれど実際、まともな恋人が居たのは何年も前の事だ。
セフレのようないい加減な関係の女がいた時期もある。
思えば女とまともに関係が築けなくなって一体どれだけ経つのだろうか。
幸せな未来を夢見る事。
それが出来なくなっている。
だから「結婚」という2文字をちらつかせる女とはどうしてもうまくいかない。
幸せになりたいの。
その言葉はいつもオシャレを惑わせるのだ。
まるで現実感がない。
その女に愛を感じなければどんな優しい言葉も無意味なのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます