第16話 奇襲
「今日は散々だったな。まさか私達、狼煙部が狙われるとは」
九条先輩との帰り道、九条先輩は安否確認のため、部員達にスマホでメッセージを飛ばしていた。
数人からは返信が来たものの、まだ何名か返信が来ていない。
その中には今日は、パスと言っていた三神由美も入っていた。
「まあでも無事でよかったですよ」
「そうだな。それにしても敵さんの狙いは何なんだろうな。まあでもこれだけ暴れられたら犯人も絞れて来るか」
「そうですね。蝙蝠を飛ばしていた点からみて、ヴァンパイアですかね」
「同じ意見だ」
九条先輩はそう言って、少し早歩きになり言った。
「ペア契約がいよいよ明後日だ。なろうな」
照れ隠しなのか少し顔が俯いている。
夕焼けの日の加減で顔色も伺えないが、俺は直ぐに答えようとした。
その時だった。
烈火の如く、炎が立ち込めたかと思うと強烈な炎の塊が撃ち込まれた。
俺は完全に背後を取られていたため反応ができず、俺の対面にいた九条先輩は、咄嗟に動き俺を突き飛ばして、その炎に直撃した。
「九条先輩ッ」
いきなりの事で思考がまとまらない中、奇襲を受けた事だけは理解した。
地に倒れる九条先輩の元へ向かおうとしたその時、俺の周囲に炎の檻が現れた。
「何で......」
俺の目の前に立つのは、赤石玲奈だった。
そしてその後方に立つ女性は、ドラゴンを使役している。
「三神?どう.....して」
俺の目の前に立つもう1人が三神由美だった。
俺は動揺を隠せないでいた。
「殺す」
三神はそう言ってドラゴンにブレスを命じた。
先程同様の炎が容赦なく襲いかかって来る。
影の
俺は目を瞑り、死を覚悟した。
だが、その瞬間は訪れなかった。
「み、しろ。無事で、よかっ......」
九条先輩が魔法武器の円盤チャクラムを起動させ、ブレスから俺を守っていた。
思考が少し動き始める。呆然。絶望。俺のそういった感情を九条先輩は、少しかき消してくれた気がした。
「発射」
炎弾を撃とうと指を向けたその時、九条先輩の身体を持ち上げる男がいた。
「2年のエースはこの程度か。1年のエースといい、この学園の最強格は雑魚ばかりだな」
クローシスだ。
目元まで髪で隠れている小柄の男。
鷹虎の周りをウロウロしていた男だ。
「クローシス。九条先輩をどうするつもりだ。いや、三神や赤石に何をした!お前の目的は」
「無様ですね。あんなに影影と騒がれていたのに、ただの雑魚。もはや囲まれてしまえば為す術が無く、ただ仲間がやられるのを見ているしか出来ない。そして何より、負傷した先輩にまだ守って貰うその無能っぷり。よくもまあイープレスに入学出来ましたねぇ?あぁ、そうかこんな雑魚ばかりの学校なら余裕かぁ。後は三年のエースだけですがこの分なら余裕そうですね。後君はウザいので死んで貰いましょうか」
返す言葉が無かった。
この戦い。俺に勝ち筋は無いのだ。
嘲笑われ、九条先輩が拐われ、三神や赤石は敵に操られ、いいように扱われている中。俺の頭に声が届いた。
(人よ。我は今の主人のあり方を望んではおらぬ。しかし主人が至らぬ故、このような始末だ。影の子よ。我はイフリートなり。お前の前に立つドラゴンなり。さて、全力で生かすから生き延びて、我が主人を助けてくれ)
その直後、俺の身体を炎のブレスが包み込んだ。
ーーーーーー
気がつくと俺は、先程の場所より少し離れた、生垣の中にいた。
どうやら、ブレスの一部を空気にして放ち、周りのみを焼き焦がして、俺はこの中に叩き込まれたわけか。
スマホを開くと19:34と表示されていた。
18時前にあの家を出たから、約1時間気を失っていたか。
メッセージ42
多いな。
【友晴!無事か?やばい!三神さんが拐われた!部長まじでブチギレテルっていうかブチ殺すって言ってもう抑えられない!】18:25
中谷からのメッセージだ。
【友晴?お前何かあったのか?これから部活会議だ。19時部室集合。結構ヤバいかも。何人か部員が拐われたっぽい】18:46
これも中谷からだ。
【御白君。由美ちゃんがやられた。早く来て】18:54
部長からだ。
【攻め込むのは禁止された。これはもう生徒の出る幕を超えていると顧問が判断した。俺達は自宅待機だそうだ】
19:32
その他にも同じような内容のメッセージが届いていた。
通話64
中谷からが40で、律子先生黄色からが24だ。
最後のメッセージは今しがた送られて来たものだろう。
(黒!ねぇ!聞こえる!黒!話せない状況なら心の声で答えて!お願い!どうしたの!黒!)
黄色から直接心に語りかけられた。
この様子じゃ何度も試していたのだろう。
「黒だ。無事ではないが、状況は把握している」
俺はそう答えた。
(黒が無事なら、一先ずは安心。九条さんも無事みたいね)
......。
(え?まさか。嘘でしょ)
その声には動揺が滲み出ていた。
「悪い、しくじった。ごめん」
(わかった。被害者がまた1人ね。聞いているかはわからないけれど。部活でこの件に関わることは中止よ。後カラーズにはまだ依頼が来ていないから動けない。やってくれたわ吸血鬼)
「ごめん。もっと早く動けたら」
(いいよ黒。とりあえずこっちでも早く依頼来るように動くし、それに、私の中で黒は)
「何だ?」
(一度守ると約束した人を助けに行かないわけないわと知っているから。まだまだね。どれだけ冷静を装ってもこれは心の声での会話。ある程度君が魔法に対して心の声を塞ぎ込めるとしても、真の叫びは塞げない。使用者の私にはそれが聞こえてしまう。嫌な魔法よね)
「そうか。それは......嫌な魔法だ」
俺は魔法を拒絶した。
この通話魔法は拒絶する事により、強制的に解除できるのだ。
さて、始めようかな。
「蝙蝠狩り」
『御白です。無事というか九条先輩に助けられて無事です。九条先輩が拐われました。ごめんなさい。助けられなかった』
グループにメッセージを入れた。その瞬間だった。その言葉を待っていたかのように、一斉に返信が送られて来た。
『友晴。さっきも言ったが部活では動くの禁止された。【部活では】な』
中谷からのメッセージだ。
『友晴君。逃げないよね』
真田からだ。
『部長命令はもう使えない。でもね。私として三神美咲として頼みがあるの、手伝って』
部長からだ。
『というか、我々、革命の狼煙部は部活ではなく、個人的に動く事になりましたので、御白君も来てくれると助かるのですが』
竹田先輩だった。
『敵のアジトの位置は全て、把握しています。狼煙部のサポートしてくれている先生から聞きましたので。その結果系6箇所あります。同時に攻め落とすという事になりましたので、行けそうなら言ってください。作戦に組み込みます』
竹田先輩達。悪いがその作戦には乗れないな。
『ごめんなさい。断ります』
俺はそう打ち込んで、スマホの電源を切った。
【我が炎よ。翼を作れ】
背中に炎の翼を出現させ、俺は空を飛んだ。
あまりに不安定な炎の翼魔法。燃費の悪いこの魔法は普段なら使わない。
常に体力をジェット噴射しているような状態なのだ。
潰さなければならない敵がいる。
だがまずは聞かなければならない。
あの男に。
ーーーーーー
「白聞いて欲しい事があるの」
私は酷く困惑していた。
黒の心の声を聞いたからだ。
(まさか黄色。心の声について他人に早すぎじゃねぇだろうな?たとえ俺でも黒の心を教えるのは無しだぞ?)
黒と通信を終えた後、私は直ぐに白へコンタクトを取った。
理由は簡単だった。
「ごめん。でもあれは変よ。仲間を先輩をペアを組むって人を拐われたのに。あの子の心の声はこう言っていた」
(おいアホか。言うなっつてんだろ?それにな、知ってんだよ。カラーズ結成時メンバーはアイツの心の中ってやつを。聞くでもなくただ普通に共にしてきたんだ。知っているさ。
黒が......
友晴が他人に全く興味が無いという事は)
魔法を解除して、律子は思った。
白は黒の成長を知らないのだなぁ。
私は結成当時のメンバーではないから、昔の黒は知らないけれど、私が入った時から今までで、すごく成長をしているんだよ。
心の声が聞こえるっていうのは、その成長を直で感じる事ができるんだ。
だから黒、頑張って。
(絶対に助ける)んでしょ黒。
私は悩める羊達に、行く道を作ってあげないとね。
魔法学校【 革命の狼煙 】部 吉野 龍馬 @yoshino0044
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