第9話 ペア
4月19日
1限目-魔法学 特別授業
「さて、本日の授業の前に、君達の中にも組む生徒がいることだろう、ペアについて説明する」
担任の先生が1限の授業でペアについて話し始めた。
一応、説明会でザッとは説明されたし覚悟がある者は、ペアを考えておけと言われていた。リスクがあることは承知の上だが、その詳しい内容については説明されていなかった。
「まずは、ペアに必要なのは契約魔法による契約だ。これは学校が雇っている契約魔法師立ち会いの元、行うので安心してくれて構わない。必要な口上などはその時に説明を受けてもらう」
会場は学校内の教会か。
生徒は配布されたプリントを見ながら、話を聞いている。寝てる者やぼーっとしてる者は一人としていない。
それ程までに、これは重要な話なのだ。
欠席している生徒はこのクラスでは例の中谷に絡んできた男だけだ。
彼と共にいた根暗な男は、普通に登校している。
教会とはまた神様に誓へと言わんばかりの場所を指定してくるものだ。
「メリット・デメリットについてだ。まずはメリットは契約をすると腕に刻印が現れる。刻印を受けた相手の魔法適性を一部預かる訳だから、今まではなかった部分が伸びるパターンが多い。前年の例で説明すると、前年の卒業生のペアに、太陽の刻印を刻んだ生徒がいてな。それを受けた者は冬でも寒くなかったそうだ。ただ夏は暑いってずっと言ってたがな。ははは」
笑い話ではないですね。
つまり刻印によっては日常生活にも関わってくる訳だ。
「んで、その太陽の生徒が、ペアを組むんで受け取った刻印は弓だった。このクラスでは弾丸系の魔法を得意と言っていた生徒もいたが、その刻印を持った生徒が炎弾を撃ったら太陽光のレーザーへと変わった。まあ妙な話だが弾道にまで破壊力がついたわけだ。もちろん貫通力、威力も上がっていた。ちなみに弓を付与した方の生徒は現在も在学中なので先輩と組むともしかしたら弓になるかもな」
太陽属性の魔法使い
炎属性だと思われていた適性は契約の刻印によって太陽の属性であったことが判明した。彼女は「今更ですね。私は元から知っていましたよ」とメディアに語り、後は何も話さなかった。彼女は現在大学生で前年度まではこの学校の生徒だった人だ。
ちなみにだが、前提として、炎属性ではある。ただその威力が馬鹿げているために太陽属性と言われているだけだ。
神様の大元の問題で、彼女の炎属性の元の神様が太陽の神様とかなのではないかと予想している。
「次はデメリットだが、契約時にとある紙を契約魔法師から渡される。それの内容が裏切りとみなされる内容。つまりそれを行うと刻印の魔法が発動し、刻印により様々だがいいことにはならないからな。まあ息を吸うなとかそんな条件はない。心臓を貫くとかはあったがな。あとは腕に大なり小なり、刻印が刻まれる訳だから、恥ずかしがる奴もいる。契約するまでなんの刻印がされるかわからないわけだからな」
ある程度は理解した。
つまり相手の力を少し分けてもらう代わりに、相手から制約も受けるというわけだ。
「つまり分けるとなると、自身の魔法の威力が落ちる?」
隣の席の真田へ話しかけたのだが、先生がそれに反応した。
「御白。質問は手を上げてから言え。まあその質問は的を得ている。正解だ。力を少し渡すわけだから己の魔法の威力が落ちる。だからペアは必ずなれとは言わない。なった者達には校則で色々特典が付くってだけだ。それとな。契約解除時に魔法の力は本来の力へと戻るが、相手との相性によっては、契約時のその力の少しを受け継ぐ事ができるみたいだ。そこはよく考えて欲しい。契約の儀式は来週の月曜日。つまり1週間後だ。よく考えるように。後のことはそのプリント3枚に纏めてあるから読んでおくように。ちなみにだが、同学年以外に先輩達にも未契約の先輩はいるから声をかけてみるといい。刻印は腕についていて見えないが、制服の胸ポケットに星の刺繍がない人が未契約の人だからな。それじゃ1限は終わり。お疲れ」
そう言われて胸元を確認すると星型に枠のみが縫われていた。つまりこの上に契約をすると星の刺繍がされるわけか。
そういえば、革命部の先輩達にも何人か星マークつけている人がいたが、あれはオシャレでは無かったのだな。安心した。部長や副部長までつけていたから流行りなのかと思ってしまっていた。
ガヤガヤという生徒の話声と、立ち上がる生徒達の椅子を引きずる音が各教室からなり始めた。
1限は全クラス共通で契約の説明を受けていたので、皆各々話したいことがあるのだ。
そしてそれは俺達の教室も同じでやはり皆、話し合っている。
「真田と御白はペア誰かと組むのか?」
中谷が俺の机の上に座り、質問してきたので、隣の席の真田もこちらに椅子を向け話を聞く体制をとった。
「僕は考え中かな。それに組む人もしっかり考えて選ばないといけないし、力が得られるって言ってもそれなりにリスクもあるみたいだから」
真田はしっかりと考えた上で悩んでいるみたいだ。
まあ教室の後ろから聞こえてくる「俺と組まない?ハニー?なんちゃって」「何それうざーい!キャハハ」浮かれた連中の様な考え方の奴もいるくらいだからな。
真田はしっかり考えている方だ。
まあ高校一年生はそんなものか。
というか俺は、よく考えていない部類なわけだが。
「へーお前しっかり考えてるんだな」
「当たり前だよ!友晴君は?」
「俺は組む予定だ」
......
......
!?!?!?
「ハァッ!!?」
「えぇええええ!?」
突然二人か立ち上がり顔を近づけてきた。
もちろん組まないという答えを予想していた二人からすると一番驚く答えだったようだ。
「いやいやいや友晴が一番組みそうにないから!つーか誰と組むんだよ!」
「そうだよ!友晴君!僕たち以外に友達いないでしょう!?」
こいつら失礼だな。
「いるよ。それに約束していたしな」
ガタン!?
「私という存在がありながら、私以外と組むのですか......?」
移動教室のため移動の準備をしていた三神が、教科書を全て落としこちらを向いてそんなことを口走った。
は?
貴方に関しては、全然理解できないのですが。
だって三神さん。貴方部活でもほとんど話さないし、教室でもあまり話さない。話した量なら入学前の方が多いレベルだぞ。
「えーと。友晴。どゆこと?お前と三神は恋人なのか?」
「「「「なんだってぇええええ」」」」
「「「「なんですってぇええええ」」」」
中谷のその一言で教室から校舎へ悲鳴の様な声が響き渡った。
「三神様!本当なのですか?」
「どうかお考え直しを!」
「あの様な陰気臭いの良くありません!」
三神取り巻きガールズと俺は呼んでいる彼女達はすぐに三神に駆け寄った。
ひでえ言われようだな。
「おいこら!テメェ!抜け駆けしてんじゃねぇ!」
「同じ部活だからって抜け駆けはダメだよ!」
「やっぱ俺もあの部活入ればよかったのかなー」
とまず話したことのないクラスメイト達から色々質問責めにあった。
後ボロクソに暴言も投げつけられた。
流石に心が痛むよ?
中谷許さんぞ。
と中谷を睨みつけると、中谷は焦りを隠しきれずその場でこちらに向かって、静かに土下座をしていた。
うん。それホント意味ない。
今はこれ収めるために尽力してくれ。
★★★★★★
「というわけで、九条先輩に誘われたんだ」
現在俺と中谷、真田、三神由美、そして何故か赤石玲奈が食堂にて集まっていた。
先程騒がしくなり過ぎたため、場所を変えることにした。
野次馬の様について来ようとした連中もいたが、三神が「そんな事実はありません」と一喝したため皆教室へと戻って行った。
そして食堂にて、どの様な経緯で誰とペアになるのかの説明をした。
まあ理由の部分は初任務で、上手く立ち回れていた俺を見て、先輩が誘ってくれたということにした。
「でも九条先輩がそんな理由で組むのかな」
真田の意見は正しい。
他者からすればただのホムンクルスだからだ。
「ま、九条先輩が組みたいってことなんじゃねーの?つーか、九条先輩ってペア組まなかったんだな」
中谷は食堂にて、炭酸水を貰って来ていた。
「美味しいのか?」
「普通」
俺は炭酸飲料をあまり飲まないからわからないが、そもそも炭酸水を飲もうとは思わない。
「組んでいない人も多いみたいだからね。もしくは組んでいて前年卒業された方という可能性ね」
赤石は当然の様に話に加わっているが、三神にやたら絡んでくる人という印象しかない。
「私の姉は副部長と組んでるみたいよ。以前姉とお風呂に入った時に、腕にライオンの顔のタトゥーみたいなのが入ってたから、気になって聞いたら、その時に言ってたの」
三神はコーヒーを口にしながらそう語ったが、ここにいた全員がこう思っていた。
【姉と一緒にお風呂に入ってるんだ】
・・・・・・
「あっ!?いやちがッ!毎日じゃないわよ!」
一同の視線を一斉に受けていた三神が、少しの間、何?と言った顔でこちらを見たのち、少ししてあっ!と失言に気づいたらしい。
しかしその言い訳がまた完全否定では無く、毎日ではないという言い訳だったので、俺達もやはり入ってはいるのか。という結論に至った。
ボイスメモの時は別々に入っていたようだったし、毎日では無いのだろう。
だが毎日では無くとも、高校生で一緒に入るのは無いだろ。
「コホン。それよりもよ!私は組もうと思っていた人が組むとなった以上、フリーになったわけだから誰か探してみるわ」
そう言って三神は立ち上がりその場を去ろうとした。
「あ、あの!三神!待ちなさい!」
赤石が立ち上がり三神を呼び止めた。
また喧嘩か?と思ったが表情を見るに、どうやら違うらしい。
赤石は頰を赤らめ、右斜め下を見ながら一言呟いた。
(私とペアになってください)
しかしそれはあまりにも小さく、隣に座っていた俺に辛うじて聞こえる程の声量だったため、勇気を振り絞ったのだろうが、三神には届いていなかった。
「何かしら?用がないのであれば行きますが」
「え?あ!えと!ごめん呼び止めて」
なんじゃこりゃああああああ!
突然どうしたんですか!?赤石さん!?
アレですか!好きな女の子には意地悪したがる小学生男子ですか!?
衝撃の事実です。
「ん?御白どうかしたのか?そんな大きな口開けて」
「ん!?い、いや!何でもない!」
危ない危ない顔に出ていた。
そう思い赤石を見ると非常に恐ろしい目で俺を睨んでいらした。
「私も行くわ!」
そう言って赤石も去って行った。
なるほど付いてきた理由は、三神のペア事情について知ることと、三神へのお誘いだったというわけか。
「とりあえず今日のところは戻らない?今日はこの授業だけみたいだし、部活に顔だして先輩達に聞いてみようよ!」
真田がそう言ったので、俺と中谷は、そうするか。と言うことで意見が一致し、部室に顔を出すことにした。
そもそもこの部活は、部長による集合がかからなければ自由参加なのだ。
そのため最後に顔を出したのは、以前のホムンクルス討伐報告が最後なので、あの時はまだ桜が綺麗に咲いていた。
現在は桜も徐々に姿をなくし始めている。
2週間ほどは顔を出していない事になる。
いつも共に帰っている、真田と中谷もきっと同じくらいだろう。
九条先輩にも本当に組むのか聞きたいし、今日は顔を出すとするか。
というか本音としてはアレが冗談だったとしたら、俺はかなり恥ずかしいことを口にしたことになる。
冗談を真に受けて他者に先輩と組むと言うなど最悪だ。
つまり。それを確かめねばなるまい!
「よし部室に行くか」
そう言って三人は部室に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます