第7話 魂を持ったホムンクルス
「やはり、各チームがこの土日を狙っていたみたいですね。出現場所の近くにいたチームが、直ぐに始末しているみたいです」
俺と九条先輩は集合したのち一番近くの出現スポットに向かったが部長達のチームが先に来ており、すでにホムンクルスとの戦闘が始まっていた。
横取りするのはどうかということで、別の場所に向かったが、その場所も既に真田達が戦闘を始めていた。
というか、この2チームに関しては鉢合わせはないと思っていたのだが、思いのほか早く動いていたようだ。
「これでは他の場所も期待できませんね。やはり昨日までの出現数が少なかったので、この土日でやることにしたチームが多いみたいですね」
「困ったな。少し遠くまで行きかしかなさそうだな」
九条先輩はスマホを見ながら今回の場所にチェックを入れていた。
「この滋賀県寄りの一体は、まだなんじゃないですか?流石にここまで端で張ってるチームは無いと思います」
俺は自分のスマホに表示されているマップを確認して、九条先輩に見せた。
「そうだな。少し遠いが行ってみるか」
マップに表示されているマークの内一つだけが不自然に離れている、京都と滋賀県の県境にそのマークはあり、現在も尚、滋賀県へと少しづつマークが進んでいる。
京都の中心寄りに出現するはずのホムンクルスがもうあそこまで移動してるということは今日出現したホムンクルスじゃないのか?
「危険かもしれませんね。移動スピードが早すぎる」
「それは私も思っている。だから、あまり行きたくは無かったのだが、後輩の試験であるわけだし、君が行くのなら私も付いていくさ」
俺がここを示すまで、九条先輩がここのホムンクルスを指名しなかったのは、少しでも危険があるからというわけか。
電車に乗り、まずはその近くの駅まで行くことにした。
「田んぼですね。ここの近くにマークはありますが見えませんね」
俺と九条先輩は京都駅から、滋賀県方面への電車に乗り、守山駅で降りて、少し離れた場所にマークがあったので、そこまで徒歩で向かった。
「農家の人の魂でも埋め込まれたのか。わざわざこんな場所まで移動するとは」
九条先輩は、歩きながら俺に、魂持ちの存在を教えてくれていた。
俺は知っていたが、知らないフリをして聞いた。
「ホムンクルスは体力という概念がありませんからね。歩こうと思えばどこまでも歩けますし」
「うん?物知りだな。始めて異界の生物と戦うというのにここまで落ち着いていられるものだろうか?」
九条先輩は、俺の冷静さを不思議に思ったらしい。
うんマズイ。そりゃそうか。始めてなのにこんなに冷静に考えたり判断したりはおかしいか。
テンパって見せるのもいいが大根芝居にならないだろうか。。。
「キンチョースルナー!フルエガトマリマセンヨー」
はい失敗。恥ずか死ぬ。いっそのこと殺してくれレベルの恥だ。
演技とか無理なのだから、やらなければよかった。
「プフッなんだそれは......ワタシモキンチョースルナー」
遊ばれてる!
「なあ御白。人がいなくないか?田舎とはいえ駅は駅だぞ?ここまで人が見えないものか?」
そうなのだ。駅からここまで、一人も人を見ていない。
不思議に思ってはいたが、言葉にしなかったのは、九条先輩が気にしていなかったからだ。
「あーそうですね。田舎の駅でもここまで誰もいないのは変......避難している?」
これはとてもマズイのではないか?
俺はここに来て冷静さを欠いていることに気がついた。どこか遠足気分だったのだ。
女性の先輩と休日に電車でなんて。高校1年生にしたら、とても喜ばしいことなのだから。
変なんてレベルじゃないだろ!
(冷静になれ。俺)
「避難?一体何から?」
「ホムンクルスです」
俺は声のトーンが一つ下がり、冷静に答えた。
「ホムンクルスから避難?それはまた強力な魂でも埋め込まれたホムンクルスなんだろうな。set」
九条先輩から突然、闘気のようなモノを感じた。
魔法?
いや、今はホムンクルスだ。
強力なホムンクルスが、数日前に現界していたらしいし、この場所まで移動していてもおかしくない。
だがもし、この場所の人達が避難しているのだとしたら、その好機を見逃すほどカラーズも馬鹿じゃない。既にこの場所に来ている可能性もあるな。
「御白、ホムンクルスへの警戒を上げるぞ。この近くの人の中にも魔法で戦える人はいたはずだ。それでも逃げたということは相当なホムンクルスに違いない。set」
「既にホムンクルスの場所と、現在俺たちがいる場所が、重なっていることについてどう思いますか?」
先程からスマホのターゲットマークの位置と、俺達の現在地の位置が重なっているのだ。
「隠れていると考えるのが自然だろう。このレーダーも50mの誤差はあるらしいから、周囲を探しながら奇襲には備えておこう。set」
「魔法を使いますね。あぶり出します」
「できるのか?よろしく頼む」
九条先輩は驚いた顔をして、興味深そうに此方を見ていた。
「形を持て影よ。存在する物を包み込み。証明せよ」
影立体化魔法。
御白が使った魔法は、周囲の影に立体を持たせるというもの。
影が浮き上がり、地上のものを飲み込み、周囲の建物や影を持つ物全てが黒く染まる。
「何だこれは。まるで影の世界だな」
その通り、これは俺のフィールドだ。
影魔法をいつでも最大限で発動できるようにする魔法。
発動中常に体力が消耗するので、短期決戦向けの魔法ではあるが、作り出した影に触れた敵を索敵するなどに使うこともできる。
「いやまあ影を濃くして立体化させただけなので、それ以外に別の効果はないんですけど。生命体の色はこの魔法では変えられないんですよ」
草や木といった植物は、別だが、虫や鳥はこの魔法発動時、そのままの色になっている。
もう少し、魔法を発動段階で上位のもので発動すれば、全てを飲み込めるのだが、それはそれでリスクが大きいのだ。
「そしてこの魔法のもう一つの利点は、影が増えることなんですよね。影の範囲が広ければ広いほど俺の魔法は強くなるんですよ」
影を基盤として発動される影属性魔法は、影が無ければ使えない魔法が多数ある。
そのためこういった魔法で、その範囲を広げ、影がない場所でも少しの影で戦えるようにする。
「捕まえた。俺の影の上を歩く別の生命体。こいつ保護色のように身体を背景に同化していたみたいですね。まあ関係はないんですが、影を踏んだ時点で終わりです」
目で見ても、色が変わっているホムンクルスは見えなかったので、もしやと思い、影に意識を移すと、そこを歩く異物を確認できた。
「やはり慣れているように見えるんだが」
「気のせいです!」
「そうか」
九条先輩はそういうことにしておこう。と言ってその件に関しては触れないでくれた。
「それよりどうしますか?今なら敵の場所を完璧に把握していますが」
「勿論倒す。場所を教えろ」
「えーと?俺の試験では?」
「御白の実力はもうわかったよ。ここまで出来るんだ。上出来だ。後は先輩に任せておけ」
九条先輩はそう言ってくれたが、どうしたものか。
「わかりました、影を貼り付けます。色濃く残る影発動。立体化解除」
辺りが見えないのは慣れていないと戦いづらいので、影魔法は解除した。
周囲の色は元の色へと戻った。そして目の前で一際目立つ存在が動いていた。人型をした黒い塊。
「アレです」
保護色魔法なんてしてるから黒のまま残ってしまうんだよ。ヘマしたな。ホムンクルス。
「本来なら一年生への試練なんだが、状況が状況だ。全力で叩くぞ」
「わかりました」
バンッ!
その瞬間空気が弾け、前方で破裂した。
「なっ!?」
咄嗟に地に伏せ、周囲の確認をした。
ホムンクルスに魔法で攻撃された?
「危なかった。私の魔法だ。地雷型防壁魔法、地雷壁だ。セットしておくと魔法がそれに触れた瞬間に爆発して効果を発揮するものだ」
俺達の目の前に光の壁が展開されていた。
「つまり俺たちはあのホムンクルスから攻撃を受けたということですね?」
そしてその奇襲による攻撃を、九条先輩に助けられた。この人も慣れてるだろ。
「そういうことだ。こちらが干渉したことであちらも臨戦態勢に入ったみたいだな」
九条先輩は「set」と呟き刀身の無い刀を抜いた。
setというのは地雷魔法の発動詠唱か。先ほどの会話の中ではあまり気にはしなかったが。なるほど、詠唱が極端に少ない。相当イメージ力を鍛えているのだろうな。
「攻めてもいいですか?」
「了解。援護する」
九条先輩の返事を聞き、飛び出す。
ホムンクルスの動きを把握するため、ホムンクルスに貼り付けていた影を解く。影のままで敵の攻撃モーションなど、判断が効きにくいなど戦いずらくなる。
さて、御対面っと。
一般的な人の顔。いや、金髪に長い耳?エルフの魂を埋め込まれたのか?
エルフとは異界に存在する魔法に特化した生き物だ。文献を以前読んだことがある。そしてその特徴は何よりも耳が長いことだとかかれていた。
「我を構成するは影、影を構成するは我、双極の断り外れ、現界せよ!影の
危険があると判断し、影の自分を発動させた。
まずは挨拶。
「火炎・装填・螺旋・標的・発射!」
敵の顔面にめがけて火炎弾を撃った。
その弾丸はホムンクルスに当たる前に何かの壁に防がれて消えた。
「防御魔法?」
次の瞬間、反射的に顔を左へ逸らしたが、俺の顔の横を見えない斬撃が通過し俺の頬を切った。
「無詠唱!?」
しかも魔法が見えなかった。魔法の視認もできないように細工されている。
「驚いた。ここまで強いホムンクルスは初めて見たな」
九条先輩はやはり強力な魂持ちのホムンクルスと戦ったことは無いのか。
魂持ちと言っても、ただのチンピラ程度なら、あまり強さは変わらない。
だが、たまに龍人や、今回のようなエルフなどの魂を埋め込まれた個体が存在するということ、以前白をから聞いたことがある。
「九条先輩。アレはただのホムンクルスではありません。油断は禁物です」
説明している時間が無いので簡潔に伝えたが伝わっていてくれ。
「OK。わかった」
その瞬間、九条先輩は動いた。
九条先輩が動いたと思った瞬間、ホムンクルスの動きが変化した。
九条先輩を危険と見て、連続的に魔法を発動させ、接近させないようにしている。
「ホムンクルスよ、先ほどまでの余裕はどこにいったのかな?全く油断は禁物と後輩に言われるとはね。ナメられたものだ」
九条先輩は近付こうとするも、魔法を避けるので精一杯に見えた。
「set」
「消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!私の邪魔をするな!」
初めてホムンクルスが言葉を発した。やはり魂はエルフでも肉体は人型だから話せるか
「burst」
空間爆破による加速とは。また器用な使い方をする人だ。
「
刀身の無い刀に、黄色く光る刀身が構成された。
「加速からの一撃切断だ!その防御魔法では防げないだろう!」
魔法の発動されるタイミングを見計らっていたのか。そしてその瞬間、爆破により加速して、一気に距離を詰めた。
「甘いよ人間。カウンター魔法って知ってる?」
ホムンクルスの前に青く光る壁が出現した。
だが九条先輩は既に、ホムンクルスへ加速して突っ込んでいた。
九条先輩が完璧に捕らえられた。
「喰らえ影」
「え?」
「なっ!?」
その瞬間ホムンクルスの体に雷が走った。
強制的に地雷をぶつける魔法 地雷剣 その魔法によりホムンクルスの体は千切れるほどの激痛に襲われていた。
だが斬った本人も疑問を持っていた。
「御白君。何をしたの?」
「影魔法。魔を喰らう影 という魔法です。対象の魔法を結果的に打ち消す魔法です」
影がある魔法に限られた話なんだが。カウンター魔法なんて言ってあんなデカイ壁を作ったら影からしたら餌だな。餌。
魔法により作られた影から、本体を喰らう魔法である。
「回復!回復!回復!回復!アアァアアアアアアア!このような器に私を収めるなど許さぬ!傷をつけたものも許さぬ!全て許さぬ!」
ホムンクルスは、自らへ回復魔法を重ね掛けしながら、あまりにも想像とかけ離れた事を叫んでいた。
ホムンクルスの肉体へ魂を入れられた者は、それが本当の器だと思い込むのが普通だ。それなのにその器が違うと、自分で理解しておりそれを憎んでいるか。
上位の種族ともなれば、記憶を抹消することはできなかったのか。
全く向こうの世界の奴らも、訳の分からん物を作ってこっちの世界へ流すなよ。
「殺害!復讐!全て壊す!」
ホムンクルスの身体が青く光り、魔法が発動された。
無詠唱の怖さ。何の魔法が使われたかが分からないため、無駄に警戒しなくてはならない。
まあそもそも敵の使う魔法なんか気にしてたら負けるんだけど。
「訳が分からない。何だ。このホムンクルスは?set」
九条先輩はやはりすごい人だ。冷静だし、考えすぎもしない。割り切って正確に判断をしている。
だが、どこかで自分の方が強いという自信があるのだろう。
油断が過ぎる。
「なっ!?」
ホムンクルスが空間地雷に引っかかり、その隙を見て九条先輩は追撃を行おうとした。しかし、ホムンクルスは何らかの魔法で、肉体を強化していたのだろう。ほぼ無傷でそこへ突っ込んで来る九条先輩へカウンター魔法が突き刺さった。
九条先輩の体を青い光が貫いた。
「ガハッ」
九条先輩の身体から血が溢れ、そのまま地に落ちた。
「獲物!餌!餌!餌!雑魚!アレ?お前が雑魚なら強いのはアイツ?」
ホムンクルスはハハハと笑いながら、俺の方を見た。
「正直1対1は得意じゃないんだけどな」
「炎よ我を纏え」
肉体を覆う熱気。真夏日のような暑さ。熱中症になるのでは?というレベルで現在体温急上昇中。
紅色のローブが御白を包んでいた。
「暑いので早く終わらせるとするか」
「炎属性の魔法。私の餌」
ホムンクルスはそう言って青色の魔法を発動させた。
つまりは水属性が得意と。
属性相性が悪いからと引くわけにはいかないだろ。
九条先輩ぶっ倒れてるし。こんな狂気を人のいる場所へ連れ出すわけにはいかない。つーかなんで人誰もいないの?
「隙見せスギィ!」
無詠唱の水弾ね。
三発の同時発射が可能と。
うーん肉体貫通してるね。これ。
「弱スギィ!キャハハハハハハハ」
影の自分解除
「キャハ!?!?」
俺の影と繋がっている影は俺の領域っつーわけ。
一度領域に取り込んだ敵を、わざわざ逃すと思ったか?お前の影さっきから伸びてんだよ。
ホムンクルスの足元の影は俺の影と繋がっていた。
影の世界を作った時にこの直線の影のみは解除しなかった。
死ねよ。
「炎弾」
ホムンクルスの足元から姿を出した御白の炎弾は、バリアを張る間も無く、ホムンクルスの心臓部を貫いた。
「効かないよ?キャハ!」
心臓を貫かれたホムンクルスはピンピンしていた。
うーん流石に魂の格納場所は心臓部では無いか。
これだから厄介なんだよ。ホムンクルスの作者の好みによって、魂の格納場所が異なるから、倒すのに可能性のある場所を
魂持ちのホムンクルスの倒し方はその魂を破壊することである。
最も魂と肉体との共鳴度が高いのが心臓なんだけど、一番バレやすいので共鳴度が落ちたとしても、別の場所に隠される場合がある。特にスペックが高い魂ならそのパターンの方が多い。
「死ね!」
「イッテェ。完全に貫いてるわこれ」
御白の脳をホムンクルスの放った水弾が貫いた。
影の自分解除
「ほい。炎弾」
再びホムンクルスの足元から姿を出し、再び炎弾を撃ち込んだ。
「二度は効かないよ?バリアできるし」
だろうな。だから今回は貫通制度特化型だ。
炎弾は螺旋を描きホムンクルスの脳を貫いた。
「なん......で?ナンデナンデナンデナンデ!?バリアしたはず!貫かれる訳がない!」
ホムンクルスは頭を抑えながら発狂した。
うーん脳もハズレと。こりゃ性能面ではなく生存率をとった魂の埋め込み型だな。心臓部と脳部以外は一気にそのスペックが落ちる。
だが、その魂が強大なため、できる強引な手法だ。
これは厄介。
「死ね!死ね!足場貰った。これで逃げられない」
水魔法か。成る程俺の足場を水で覆って影へと逃げられなくしているのか。
「死ねよ!」
竜巻系の魔法。コレはは死ぬな。
「こんなんじゃ死なない。それが俺の魔法だけど。はい解除っと」
足場を捉えられていた、俺は影の俺だから別に捉えられても関係ない。
捉えるなら本体の俺を捉えないと意味がないのだ。
次は腹。
「炎弾」
「クブァ」
うーん腹もハズレと。
「早く死んでくれないと俺が外道みたいになるんだけど。いたぶる趣味とか無いんだよ。早く終われよ」
「ナンなんだよ貴様!貴様無詠唱で魔法を使っているだと!?そんなもの!たかが人間風情がしていいことでは無い!魔法に敬意を払え!それは元々我々の世界の物だ!」
ホムンクルスは俺の魔法について今度は文句を言ってきた。
「無詠唱?できたらやってるっての。だから何度も炎弾って連呼してるだろ。色々省いてるけどな。至近距離まで近づけば弾道とか狙いとかどうでもいいんだよ。ただ出せば当たるんだからな」
「違う違う違う違う!それじゃない!もう一つの魔法だ!何の魔法だ!ズルいぞ!教えろ!何故当てたのに死んでない!何故私の下から出てくる事ができる?まさか地面に隠れて?」
「半分正解だが、ハズレよりの正解。実質......炎弾。ハズレか」
左太腿ハズレ
仕方ない、一気に畳み掛けるか。そろそろスタミナ切れする。
「な?え?二人?どういう事だ?何だこれは!?幻覚系の魔法?何が起きて」
御白の姿が2人に増え、ホムンクルスを攻撃していた。
「炎弾」
ズンッ
左肩もハズレと
「三人目!?何なんだこれは!?アアァアアアアアアア貴様ら全員死ねぇ!」
御白が影からドンドン増え続ける現状に、ホムンクルスは竜巻魔法で一掃しようとした。
馬鹿だなぁ。先ほど、気づいたのにな。地面攻撃したら俺のこと捉えられるのに。まあそうさせないように、色々動いてみたらまあ綺麗に思考から地面への注意が消えましたと。
同じ顔の人は世界に何人いるか。そんなことはわからない。でもその不気味さ。不思議さは感じてしまう。
カラーズ団員カラー黒色の黒に染めるという事は。
何があるかわからない恐怖や不安。それが連なりより不安と恐怖に襲われる。未知という恐ろしさ。それがどれだけの力かわからなくなり、格上なのではないかと感じさせる。
全ての色は黒に染められる。
他者の意識を自分より下だと思わせる事こそ、黒の特徴の一つなのである。
逆に言えば、どうすれば勝てると試行錯誤させ、結果として本来の力を出せなくさせ、事実としてその時、力の逆転が起こる。
このようにエルフという魔法族の魂持ちのホムンクルスが、本来の魔法をほとんど使えなくなるほどに。思考は停止される。
竜巻
竜巻
竜巻
竜巻
一辺倒。染め上げられたホムンクルスはもはや魂があった事が仇となっていた。
「さぁ後はは1箇所ずつ壊していくだけ」
★★★★★★
「まさか脇の下とは。魂埋め込んだ奴の頭のおかしさが滲み出てるな」
解除っと。
「そうですねぇ〜あの人は頭はおかしいですが腕だけはいい人ですから」
え?
俺の独り言に誰かが答えた。それも知らない男の返答。
咄嗟のことだが冷静を保ち声のした方を見たが誰もいない。
「遅いですねぇ〜」
後ろ!?
回り込まれた!?それよりも!
「炎弾!」
何も無い空へと炎弾は消えていった。
「誰だ!?」
「そうですねぇ。お遊びはこの辺で。お初にお目にかかります。地球の民よ」
天使?
目の前に姿を現したのは、白い羽根の生えた青年だった。
「何の用だ?そこのホムンクルスの仲間か?」
「ん?あ!いいえ違いますよ!こんなゴミクズと一緒にされると困りますねよ!私はオーディンと名乗るのがわかりやすいですかねぇ」
は?
「オーディンって言ったら北欧神話の主神だぞ!?信じれる訳無いだろ!それに天使じゃねーか」
「そうですよねぇ。私だってこんな見た目の若造がオーディン名乗ったら信じないですよ。ははは。まあ実際は姿形なんて変えられるんですよ。こちらに来る時はこの青年の姿で来てるんですけど。あ、この羽は威厳?出るじゃないですか」
「うん?うーん?はぁ?とりあえず死んでみる?」
俺は言葉を発するより先に炎弾を撃ち込んでいた。
「はははダメだよ。あまり私を怒らせるなよ若造。今回だけは水に流すが次はないぞ?」
炎弾は青年の体に当たるとその瞬間に消えた。
うーんまじか何だよそれ。バリアとかいうレベルじゃねぇ。当たっただろ今!
「いやさ。信じろっていう方が無理あるんだよな。ほらオーディンって言ったら、グングニルとかさ見せてくれたら信じれるけど」
「えぇ。めんどくさいなぁ。まあいいよ。来なよグングニル」
え?
自称オーディンの手に確かに槍は出現した。ただその見た目が良くある見た目の槍なのである。ほらなんか歴史の教科書とかで良くみるタイプの。
戦国時代のお侍さんとかが使ってたようなアレ。
「それがグングニル?」
「そーだよ」
「なんかもっと神々しいの想像したんだけど。ほらアニメとかでよくあるような」
「そんなこと言われてもねぇ。一回投げて見たらわかってもらえるのかなー?」
「でもそれが本物なら投げたらどうなるんだ?」
「極力威力を抑えて投げても、ここら辺は焦土と化すだろうねぇ〜ははは」
「うん却下だ。まあ信じてもいいよ。めんどくさいし。それで何しに来たんだ?」
「ほんとに!?やったね!やっぱり君にして正解だったよ!ほら数年前にこっちの世界に来た子だよね!」
「人違いです。ほらこっちから向こうの世界って行けないし」
本当は向こうの世界へ行った子が俺だけど。何でこいつ知ってんだよ。俺こいつと出会ってないんだけど。
「隠すことなのかなー?まあいいや、それでだけどね。そろそろ魔法に慣れて来たと思うんだけど。こっちの世界に多分あと数年。いや少しかな?とりあえずこっちに巣食う厄介な奴らが攻めて来るから気をつけてねぇ〜それじゃあね」
そう言い残し青年は黒い穴を作り出し消えて行った。
向こうの世界とこちらの世界の門のようなものである。
しかし
「あらあら?あれれ〜?戻って来てしまいました?どうしてでしょう?」
黒い穴に入ったと思ったらそこから再び自称オーディンが出て来た。
「何しに来たんだよ。お前」
どれだけこっちの世界で遊びたいんだよ。
「いえいえ。私は帰ろうとしましたよ?何故か戻って来てしまいましてぇ」
どういうことだ?何者かによる妨害?
「仕方ありません。何者かによる結界が張られていますのでぶち抜きましょうか。来なさいスレイプニル」
次はオーディンの愛馬の名称が呼ばれた。次は何が出て来るのだろうか。さっきはただの素槍をグングニルと言っていたから何が出て来るのやら。
「スレイプニルは世界を翔る馬です。このような結界、いとも容易く......え?」
ポニーだった。
イメージはサラブレッド系の黒い毛皮の馬を予想していたが。。。
出て来たのは小さな黒い毛皮をしたポニーだった。
それとオーディンさん本人もなんじゃこりゃぁ!といった顔をしている。
「叔父さんポーカーフェイスは得意な方ですが流石に。さ・す・が・に!これは許せませんよ!何処ですか!私の槍とか我が愛馬を小さく変形した愚か者は!出て来なさい!隠れているのはわかっているのですよ!」
ははは。オーディンさんがブチギレてしまわれた。。。
流石に素槍にポニーだからなぁ。もし本当に形を変えられたら怒るわな。
「炙り出しましょうか」
オーディンの手が青く輝いた。
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