第3話 部活動勧誘


部活紹介


それは、各部活が新入生を、自分の所属する部活に入部してもらうためにPRする場である。


体育館に集まり、各部活が順番に5分間の間にアピールをする。


帰宅時などの勧誘では聞いてもらえないという意見から、数年前よりこのように紹介の場を設けたそうだ。


この学校にある部活は運動部が4、文化部が3、魔法系の部活が6である。


運動部系の部活は魔法を禁止している。野球、サッカー、テニス、バスケの4つだ。

試合のルールでも魔法は禁止されている。


文化部として、美術部、吹奏楽部、文学部の3つ。


魔法系の部活が、魔法競技部、魔法研究部、魔法部、魔法組織【革命の狼煙のろし 】部、お姉ちゃんと魔法をまな部、魔法陣研究部。の6つだ。


紹介を見る限りでは、校内での無断魔法使用は禁止されているが、私たちの部活では許可をいただいております。と魔法系の部はどこも同じようにこのような台詞を使っていた。


年々魔法系の部活に入部する人も増えており、魔法系の部活では似通ったことをしているところもあるため、新入生争奪戦なのである。


各部活の紹介が終わり、教室に帰り、先生が帰る為の準備を済ませ、真田にじゃあなと言って足早に教室を出た。


理由は1つしかない。


下校が遅くなるにつれ、先ほどの部活連中が勧誘に走り回る。


迷惑だ。


そもそも学校の敷地でなぜ、前日ホールにて行われた説明会が行われないかというと、部活勧誘がしつこ過ぎて、毎年クレームが学校に行くようになった為、勧誘禁止と言っても何とかして勧誘する者たちが現れたりした為、結果としてホールを貸し切って行うことになったのだ。


部員が増えると部費が上がる。


もはや新入生は上級生からすれば、金を持ってくる人という感覚のやつもいる位だ。


だが問題は別のところにある。


俺が問題としているのはあの、革命の狼煙部の連中だ。

部活の紹介の時のPRがやばかった。



数十分前



「こんにちは、新入生の皆さん。私は革命の狼煙部、部長の三神 美咲です。そうですね。まあ私達の部活内容は大まかには、賞金稼ぎです。優秀そうな人はこちらからゆうか.....勧誘に向かいますので是非!それと我こそはという方は我々の部室まで来てくださいね。では最後に1つ魔法を見せて終わりにしようと思います」


「来なさい!炎龍!グレンヴァラガン!」

は?えん......りゅう?


三神美咲がそう叫ぶと三神美咲の隣に巨大な赤色に輝く魔法陣が展開されそして、中から赤色の鱗に、黄色い瞳のドラゴンが顔を出した。


場からはオォオ!という歓声が上がった。


「ここでは顔だけだけれど、安心してほしいのは賞金稼ぎをできるだけの力は持っている者達の集まりだから、無謀な集団ではありません!では皆様の入部を期待しています」


お辞儀をして、ステージから降りたが皆顔だけ覗いているドラゴンから目を離せないでいた。


いやあれ消してから終われよ。


「あ、忘れてた!もういいわよ!」

マイクに三神美咲がそう叫ぶとその魔法陣は消えた。


そして俺は見てしまった。


斜め前に座る三神 由美が頭を抱えながら「お疲れ様、グレンヴァラガン。」と呟いていたのを。

ん?三神美咲?【ミサキは私の姉です】とボイスメモでの内容が頭にフラッシュバックした。


コイツの姉カァアアアアアアア!


どこかで聞いたことのある声だとは思っていたがあのボイスメモの声だよ!


こいつの姉やばすぎる。


すでに妹は手中に収まってるってか!?


怖ぇよ。


そう一人で思っていると三神由美がこちらを向いた。


「なんだ?」

とあくまで平静を装って話しかけた。

「気づいた?」

「ま、まあ?」


「貴方のことを思って先に言っておくわ。私に姉さんから与えられた使命は同じクラスから優秀な者を選び出すこと。でもね、貴方はきっと影属性というだけで、姉からは目をつけられる。私も興味を持っているのだから当然、姉も興味を持つ」


「そ、そうなのか?」

「そうよ。だから先に言っておくわ。これが終わったらすぐに帰ることをオススメするわ。影属性を持つ人が4組にいるのは既に学校に広まりつつある。私が予想すると、姉は一番に私達のクラスである4組に来るわ。私は既に革命の狼煙部に入部が決まっているから、姉が来たら、目的は私以外の誰かということになる」


「お前。入部が決まってたのかよ。それであんな手助けでドラゴン召喚したのか。俺の可能性は低いと思うがな。影属性なんて魔法は無いわけだし」


「甘いわね。考えが。1つだけ答えでは無いけどヒントはあるのよ。


2属性持ちがこの学校への入試を通るには、両属性で80点以上取らなければならないという評価がね。


貴方の立場から、学校が片方の火属性だけで許したとしたならばそれはそれで仕方がないこと。貴方の生い立ち上あり得ることではある。


でもそれ以外の可能性も少なからずあるわけよ。


火属性と影属性で80点以上取ったとしたら?」


「あ、ありえないことではないわな」

こいつマジか。

的確すぎる。

俺は入試の時に火属性と影属性で火属性は84点。影属性は前例がないため、測定不能だが、間違いなく80点は超えているという評価だった。


なるほどな。

それは面倒だ。


「まあでもそんなこと信じて、4組に来るなんてあり得ないだろ!ははは」

俺は笑って冗談っぽくお茶を濁したのだが。


「その辺の判断は任せるわ」

真剣な目でそう言われたので、考えを改めた。


ーーーー




そして今に至る。



即帰宅。



来る。あのタイプは間違いなく来る。


俺の直感が早く逃げろと言っている。

三神由美のあの表情は間違いなく来ると言うことが、わかってしまっている顔だ。



そしてもう1人怪しい人物が俺の中では候補として上がっている。


黄色だ。


体育館を出ると黄色から声をかけられ、「放課後少しだけ話があるから職員室に来てほしい」と言われた。


あいつから話しかけられることなんてない。

カラーズの黒としての俺になら兎も角。今の俺は入学生の御白友晴だ。朝の一件はここにいるという自己表明だと判断して、基本的には無闇な接触はしないのがカラーズだ。


考えられる可能性は......

賞金稼ぎ集団の顧問が黄色だとしたら?そんな危険な部活を学校が許可しているのも納得がいく。


もし俺の考えが間違っていて、黄色にもし何故帰ったのかと聞かれたら、野暮用だったと言えばいい。


部活紹介で妹を使って、龍呼び出すやつの部活なんて絶対嫌だ。


さあ、あと少しで昇降口だ。


そこで上履きと靴を履き替えて帰るだけ。


その時の俺は忘れてしまっていた。


そう。


部活動の勧誘に動いているのはあの部活以外にもあるということだ。

そして、部活勧誘には予め決められた各部の代表だけが出ており、それ以外の部員は勧誘するために昇降口で待っているということを。


ーーー



1ー4教室


「あれ?友晴君は?」

「ほんとだ。いねーな。何部入るか聞こうと思ったのによ」

真田と、魔法の無断使用の注意を受けたが入学したてのため、許してもらえた中谷が教室に帰ってきた。


「相変わらず人気だな」

「?。ああ。三神さん?そうだね、容姿端麗、学年主席ときたらね」

相変わらず三神の周りには人だかりができていた。

「何部に入りますか?」「何部入るか教えて〜」などなど部活関連の話がメインである。


しかしそんな連中のことよりも、三神の頭の中ではここへ来るであろう姉の存在に怯えていた。


何故なら。


「とゆうかあの革命の狼煙?アレやばくね?あんなの入るやついるのかよ」

「マジそれな!」

という会話や


「革命の狼煙ってのに勧誘されたらどうする?」

「え?断るだろそりゃ」

「だよね」

など【革命の狼煙】というワードが入っている会話から聞こえているのは悪評ばかり。


なぜ初日からこんなにも評判が悪いのか......。

龍のせいでみんな引いてるんだろうなー。


そして私は既に姉に誘われた時( 入学前 )に入ると言ってしまったのだ。


まさか姉があのような部活をしているとも知らずに。


部活動紹介ということで魔法の許可は得ているからと先程もあんな無駄なことに炎龍を紹介させられた。


私の願うことはただ一つ。


頑張って逃げなさい。御白友晴君。


そしてそんなことを考えていると自分の周りを取り囲んでいた連中が急に黙り込んだ。


間違いない。姉が来た。


「ゆーちゃん!お姉ちゃんの登場よ!」

「か・え・れ」ニコッと恐ろしい笑顔を向けた妹に姉である美咲は一瞬固まった。


「ごめんなさぁい!でも許して騙してたわけじゃないの!ただお姉ちゃんはゆーちゃんと同じ部活をしたかっただけなの!」

と由美の足にすがりつきながら泣き始めた姉の姿に教室中がどよめき始めた。


やばいな。


「姉さん!いいから、そのことは許したって!私が嫌だったのはなんでどんな部活か説明してくれなかったかってこと!聞いたよね!どんな部活って、楽しい部活は答えじゃないからね!」


「だって説明してたら入部してくれなかったでしょ?」


「当たり前よ」


「ほらぁああああ」


「ゴホン。部長。お見苦しいですよ。人の目もあります」

後方から来た姉よりも背の高い美しさというよりは、格好良さというのだろか。

とにかく女ではあるのにとても厳格そうな人が姿を見せた。


「あー、さやかちゃん?」


「はい。彩です。申し遅れました。私、革命の狼煙部、副部長の竹田 彩と申します。お見知り置きを。貴方が入部してくださる由美さんですか?」


「はい。そうです。姉がお世話になっております」


「姉!?」「入部?!」「え!?」

という教室のどよめきがより一層増した。


「つーか革命の狼煙美人ばっかじゃね?」「部活の内容さえ普通なら俺は入ってた」「

男共は三年生の二人を見て、少し入りたいと思ってしまったようだ。


「では、明日の放課後、我々の部室にて新入部員の挨拶と、我々の挨拶とこの部の説明を行いますので、是非来てください。本日は部活はありませんので。ではお気をつけて」


「は、はい」

姉と対照的すぎるその人に私は心の中でこう思ってしまった。


絶対この人が部長の方が良かった!と。


「行きますよ。部長。まだ1人しか新入部員決まっていませんよ」


「もう。妹との交流タイムを邪魔しないでよ」


「はいはいわかりました。」

猫を運ぶように姉は竹田先輩に掴まれ引っ張られて行った。


「アッ!そうそうそう!影の魔法使い!あの子このクラスなんじゃないの!?」

と姉が突然思い出したかのようにクラスを覗き込んだ。


「ねえねえ!君さ!このクラスにいるはずなんだけど、影の魔法使い知らない?」


「え?ええと?知ってますよ」

悪運。真田君は窓際の席。そして姉の近くにいる生徒で最も近かった真田君が姉に標的にされた。


「そう!でどの人?」


「もう帰りましたよ?」


「またまたぁ〜初日からそんなに早く帰るわけないじゃない!ねぇ?」

と姉がこちらに顔を向けたので御白君の席を指差した。


「え?マジ?」


「マジよ。」


「あぁあああ!目つけてたのになぁ」


「でも待ってください。部長我々にはまだ、冬実先生という裏の手を用意したではございませんか。ほらまずは職員室に行きますよ」


「そうだったわね!影の魔法使いも驚くでしょうね!私達が顧問の先生に頼んで呼び出して貰ってるとは知らずに.....ふふふ」


なんて言った!?

顧問に呼び出すように頼んだ?

まさかそんな作戦まで考えていたのか、この姉は。

悪知恵が無駄に働く人だ。

お疲れ様。御白君。君は今罠にハマっているみたいよ。


「それでは失礼。4組の方々も騒がしくして申し訳ありません。私達、革命の狼煙部は部員を募集していますので、興味がありましたら是非」

そう言い残し2人は帰っていった。


教室ではまだ「三神さんが!?」など驚きの声が聞こえて来た。



ーーー



「君!野球に興味ない?」

「吹奏楽部どう?」

「魔法研究とか興味ない?」

「革命の狼煙です!是非」

「魔法陣は好き?」

などなど、まさかの校門前にて絶賛新入生獲得ラッシュが始まっていた。


そしてそれは運の悪いことに逃げようとして、最も先に校門に来た御白に全ての勧誘が向いてしまった。


「すみません。今日は急いでいるので!」


その声虚しく、周りを囲まれ逃げ場を失っていた。


(これ以上の無理強いは許しませんよ)


頭の中にそんな声が響いた。


伝達魔法。


無属性の魔法の一つ。

対象を選んで言葉を意思として飛ばす。

その魔法使いが優秀であればあるだけはっきりと伝達できる。


そうこのようにハッキリとその声が聞こえるということは、とてもその使い手が優秀だということ。


それにより我に返った、勧誘者達は、これ俺の部活の説明が書いてあるから読んでみて興味があったら是非。などそのようにして十数枚の紙を渡されその人達は散っていった。


(残念ね。逃げられると思った?)


他の者の反応がないことからこれは俺にだけ送られて来ているのだろう。


黄色の魔法である。


黄色はカラーズの情報伝達係。


危険なく報酬を貰えるが、その分その重要性はとても高い。


そしてその教師が顧問を務めている部活は、ほぼ間違いなく革命の狼煙だろう。


だからバレずに逃げようとしたのに、まさかこんなことになるとはな。


逃げれるか?黄色の得意魔法は情報伝達以外は知らない。そもそもあの人は前線に出たりしない。


だから多分そこまで強くはない。


よしここは強行突破と行くか。


しかしそう上手くはいかなかった。

先ほどのタイムロスは痛すぎた。


「みーつけたぁああああああ」

「ちょ!?部長流石にそれは!」


「エア・スピード・アタァアアアアアアク!」

ただの加速魔法である。

もちろん、エア・スピード・アタックなどという名前もない。


昇降口より、先ほど部活動紹介にて、革命の狼煙部を紹介していた女性。三神 美咲が走って来た。


三神姉は俺の目の前で上手く足を止めた。

ほお。魔法のon、offそして止める時に別の魔法で、体に働く力を逃した。この人、魔法が上手い。


「こんにちは!君が影属性の人で間違いないかな?」

合ってるが関わりたくない。

そもそも無断の魔法使用が禁止されているのにこんなことをしても大丈夫なのだろうか?


「影?ああ、4組の人ですね。僕ではありません。お役に立てず申し訳ありません」

と、頭を下げてその場を去った。

嘘も方便という。


「え?ちょ?冬実先生!どの人?この人じゃないの!?」

冬実先生?誰だそれ?


( 間違いないよ。その子、御白 友晴君こそ影属性の魔法使いだよ)

黄色かァアアアアアアア!


カラーズはお互い名前を知らない。色だけ知っていればいいし、拷問されても色しか出ない。


だからこそ名前を言われても気づかなかった。


名前を知ってるやつもいるが、どのような状況であっても口を割らないことをお互い約束している。


「ち、違う!適当なことを言わないでください。僕は本当にただの火属性なんです!」


「え!?どっちなの!?」

意外と押し切れるかもしれない?


「影ってそもそも魔法無いでしょう?意味なくないですか?」

「でも入試を通ったそうなのよ。影使いの人は。だから興味あるのよね」

「そーなんですか。でも僕は人違いですので。それでは失礼します」

「君さ、部活は決めた?」


「は?」

突然何を言いだすんだこの人は。


「その様子を見るに、まだ見たいね!」


「どう!うちの部活!革命の狼煙部!」

「部長。校内での魔法の使用は禁止されているとあれほど言っているでしょう」

うお。イケメン!?いや女か。

スカート履いてるしな。

女の子にモテそうな人が後ろから歩いてきた。


「ごめんね〜」

「先生にもうすぐで呼び出されるでしょうね」

「えぇ!嫌だァ」

「はいはい。それでこの方は?」

「うーん?知らない。影属性の人かと思ったらどうやら違うみたい」

(その子なんだって!)

「先生。本人が違うと言っているじゃないですか。なんの根拠があってそんなこと」


(そいつがカラーズ団員だから!とは言えないし。ねえもう吐いちゃいなよ。友晴君)

おい。なんてこと言ってるんだ。無視だ。


「そうでしたか。うちの部長が迷惑をかけました。私は革命の狼煙部、副部長の竹田 彩と言います。もし革命の狼煙部に興味があれば是非」

「わかりました。考えておきます」

会釈をしてその場を去った。

いや、正確には竹田先輩が三神姉を猫を持つように掴んで引っ張って行ったのだが。


逃げ切った。


そう思った。


( 隙だらけよ。黒)


は?


飛行魔法により空から、黄色による雷魔法の攻撃が降ってきた。


なんでー?


雷魔法の中で初級に分類される【 サンダー】という魔法だ。そのままの名前である。


初級魔法は基本的に詠唱は魔法の名前だけで良いためこのように奇襲には向いている。


まあ、大声で言葉にしちゃったら奇襲の意味ないのだが。

伝達魔法解除してなかったんだな。

煩いほどに意識に届いて来たよ。


いつも戦わないから、こういう簡単なミスをするのだろうな。


だから奇襲が奇襲として成立しない。


御白は空から攻めてくる黄色に向けで指を立てた。

「火炎・装填・速射・直線」


「発射」


火属性魔法。

火炎弾。


詠唱という詠唱はなく、必要なのは起こしたい条件を設定するのみ。


だが、その魔法は使い慣れていないと、イメージ不足により、弾丸が身体の内部で破裂したりするので、練習が必要なのである。


「ちょ!?待って!?それ私死ぬからァアアアアアアア」

いや、そりゃそうだろうよ。飛行魔法なんて風属性でない黄色が使って、上手く扱えるわけないし。避けられないですよね。


「すみません。先生でしたか、奇襲されたかと思い、反撃してしまいました。これ真っ直ぐしか飛ばないので避けてください」

そう言い終わると御白の右手の指から直線上に弾道が走った。

御白は笑顔を先生に向けた。


「ちょぉおおおお!部ちょぉおおおお!私風属性得意じゃないから方向転換とかできないのぉおおおおおお!!!」


「え!?先生!?。ちょ君その魔法」


「火炎弾ですね。それもイメージがいいのかワードが最小限ですね」


「これ先生避けられると思う?」


「あの体制から起こりうる結果ですが。そうですね。あの速度で自ら弾丸に被弾するという結果ですね」


「あぁ!もう!一度くらいの無断使用は仕方ありません!」

「一度くらい?部長先程の無断使用を無かったことにしようとしてませんか?」

「なっ!?感の良い女の子はモテないわよ!」

三神姉は先生と御白とのちょうど間に向け指を立てた。


「 火炎・装填・速射・標的 」


「発射ァ!」


御白の指から放たれた火炎弾を三神姉が見事に撃ち落とした。


「ほぅ?」

流石だな。賞金稼ぎをしてる部活の部長だけはある。


「ナァアアアアイスッ!さぁ!くらいなさい!サンダァアアアアアアア」


飛行しながら片手に纏った、雷魔法を返す刀を失った御白に対して振り下ろした。


(全く。黄色やりすぎだ)

黄色にだけ伝わるように意識で言葉を流した。


ズコォォオオオオンッという地響きが周囲に響き渡った。


そして後に残ったのは黒く焦げた、地面だった。


(影の自分ドッペルゲンガー 解除)

偽物の自分を作り出し、本物は影の中に潜み、解除したタイミングで影から出るという魔法。影の続く範囲は行動が自由なため、影の中で安全に隠れることができる。


「炎撃・気絶・装填・連射・標的」


「発射」


下駄箱の置かれている校内から、外にいる黄色に向かい火炎弾が6発連射された。


黄色は避けることできず全て被弾。

6発目が当たった時、丁度気絶した。


外傷は見られなかったが、周りにいた生徒達は何が起きたのか、突然の出来事にただ呆然と立ち尽くしていた。


「こんにちは。御白君。学内での魔法の使用は禁止されている。全く。あのバカ達は今年もやらかしたんですか。今年は顧問の先生までときた。対応に困りますねこりゃ」

眼鏡をかけた男の先生だった。

歳は40前後といったところだろうか。


「あの冬美先生はどうなるのでしょうか?」


「そうですね。クビでしょうかね。魔法の無断使用と生徒への攻撃。クビ以外は無いでしょう」

それはそうか。

でもアレだ。心が痛む。俺はあの人と知らない仲じゃ無いし、あの戦いも楽しんでいた。

だからこそクビと聞いて心が痛む。

「そうですね。例えばこれが顧問と先輩が新入部員である貴方の実力を測るためにやったとするならば、何のお咎めも無いのですが?」


なるほどな。


俺が革命の狼煙部に入部すれば、黄色はこのまま先生でいられるのか。


あー。何というか結局入っちまうことになったな。


黄色、借しだからな。


「まさにそのパターンですね。俺は革命の狼煙部の新入部員ですよ」

俺はその先生にそう答えていた。


「言葉では何とでも言えますが?入部届けはありますかな?今渡してもらえれば私から先ほどの一件があった時には既に入部届けを受け取っていたということにできるのですが?」


「まじか。助かるわ」

すぐに鞄から入部届けを取り出し、名前と所属する部活の欄に革命の狼煙部と記入してその先生に渡した。


「よかったです。これで先の一件はただの実力試験として処理できます」


「ありがとうございます」

その先生が去ったので、俺もそのまま昇降口へ向かった。


気絶した黄色は三神姉達に連れられ保健室へ運ばれたみたいだ。


俺がその場に姿を向かうと周りからは「生きてた」「え?生きてる」と聞こえてきだが、反応せずにそのまま昇降口を出た。


結局入っちまったな。



ーーー



男は手に入部届けを持ちながら廊下を歩いていた。


佐藤 伸彦のぶひこ27歳


「解除」

その瞬間、彼の顔や体の形が変化した。

見た目を変化させる無属性魔法である。


先ほどまでの40歳前後の男から若い男の姿へ変化した。


( 上手くいった?)


「完璧ですよ律子先生。ですが、まさか貴方があんなに容易く負けるとは思いませんでしたよ」


( ホントよねぇ。あの子、あんなに強くなっていたなんてね)


「だから言ったじゃ無いですか。武器の一つは召喚しないと無理ですよって」

まあ武器を出したところで勝てないでしょうけど。


( 一回は魔法のみでやってみたかったのよ。それに黒に影魔法使わせたんだから、私もまだまだ戦えるわね)


「 御白君ですよ。全く。それを皆の前で口にしてはなりませんよ。それに、別に彼は影魔法を隠しているわけでは無いですよ」


( そーなのよねー。それよりも、魔法の無断使用禁止なのよ?わかってる?)


「お互い様です。それにバレなきゃいいんですよ」


( 教師としてあるまじき言動ね)


「貴方こそですが」


( それもそうね。じゃお疲れ様、紺 」


「その呼び方をするなと言っているだろ。お疲れ律子先生」


伝達が切れた後、1人ため息をつきながら、先ほどの御白の戦いを思い出していた。


カラーズの青と紺は潜入系を得意とする変装のプロである。


やはりカラーズの中でも随一と言われる奇襲力。


全く末恐ろしい子だ。


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