Reloaded⑦
「ふわぁぁ〜、寝たねぇ。そろそろ私も真面目にやろう」
「最初からしてればかっこいいのに、ねぇアルテマ」
「そうだな、これを使う機会がなくて残念だけど」
「待て、起きて早々何だよお前ら」
私だけ置いて話を進める3人を止めて、一体何がどうなのか、それを教えてもらわないとここから先の作戦に、支障が生じかねない。
潤んだ目を擦るウラノスを見て、不覚にも可愛いと思ってしまったが、元は男だと頑張って思い込ませるが、どう足掻いても完璧な女だ。
HK416をケースから出してファンプリの音楽を再生して、無理矢理気分を上げて、神経から体を高揚させる。
後部座席で何かを漁っているウラノスに、特殊武装は使用可能か聞こうと振り向くと、いつの間にかスカートに変わっていて、めくれ上がって下着が丸見えだった。
「おい、見るなよセイ。ウラノスも早く隠せ」
「何をさ、ちょっと今落とした特殊武装のアレをね。探してるんだけどなかなか……」
「見てやりなさいセイ、これだけの美人の下着なんて滅多に拝めないわ。ほら、何なら写真撮ってやりなさい」
それに気付いたアンジュがウラノスのスカートを捲り、やっと気付いたウラノスが手で押さえる。
「エイルちゃん早く言ってくれても良いじゃないか」
「スカートに変えるなよ、今から本格的にファンプリを助けに行くんだろ。お前は馬鹿なのか?」
「スカートの方が動きやすいじゃないか、ねぇアンジュ」
「私はスカートなんて履かないから、残念だけど万年スーツ。後で画像送ってあげるから、これで捗らせなさいよセイ」
「結構です母さん、間に合ってますから」
「はいはい、あんたは昔から任務してればそう言うのは発散されるものね」
「もう私は出る、外で待ってるから早くしてくれよ」
「待って待って、私ももう良いから一緒に待ってるよ。ここからは1人になる事は厳禁なんだからね」
隣に下りたウラノスは何も武器を持っていなくて、綺麗な顔で私を見ながら、指先で頬を突かれる。
その指を掴んで手の甲側に曲げてやるが、特に痛がる様子も無く、これ以上曲げると折れそうなまでになっていた。
「今は痛覚切ってあるんだ〜、痛くないよう、止まらないようにね。あと君は武器を持ってない事を疑問に思ったけど、ちゃんと持ってるよスカートの中に。靴の中と胸の間にナイフもあるよ、見たい?」
「いや……いい。やっぱいい、でもやっぱ後で……」
「東の方向から武装集団です! グルカの民です、この人数では絶望的以前に、私たちでは相手になりません。5人で鈴鹿さん1人の強さです、新記録ですよ!」
警報を鳴らしたELIZAが西の方向を拡大して映像を表示すると、軍用車両に乗った武装集団が、バイポッドの付いた狙撃銃をこちらに向けて、スコープを覗き込んでいた。
その中の一人としっかりと目が合い、狙われているのに気が付き、爪を気にしていたウラノスを抱えて脇に飛ぶ。
「なになになに、ティオに怒られちゃうじゃないか」
「グルカの民らしい、狙撃されたぞ」
ELIZAが再び出した映像には、しっかりと先程まで立っていた位置を、弾丸が通り過ぎるのが映っていた。
「あらあらまぁまぁ、荒々しいね。それじゃあ食い止めてくる、狙撃銃置いとくから援護頼むよエイルちゃん」
「おい狙撃なんてした事ないぞ! ……クソ、やるしかないのかよ」
見た事も無い様な速さで走っていったウラノスの背を見ながら、ケースに入った狙撃銃を取り出して、バイポッドを付けてスコープを覗き込む。
SV-98と遅れて表示されたが、そんなものはどうでも良い、当てられるかどうかが問題であって、
「サポートします、わたしがポイントを置きます。そこに合わせて照準を置いて引き金を引いて下さい」
「分かった、早くやれ。ウラノスがもう肉薄する」
「通信繋ぐよエイルちゃん、私が撃てと言ったら撃つんだ。見逃すなよ」
「お、おう。やってやるよ」
コンカッショングレネードのピンを外して車両の目前で脇に転がった直後、起爆して車が大きく宙を舞うが、グルカ兵に傷を付けることなく、その役目を終える。
「左から2番目、3秒後」
出された指示に従ってELIZAがポイントを置き、約束の時間に引き金を引く。
着弾予想地点にウラノスの頭が被さり、スコープから目を離して瞼を閉じる。
「完璧だ、次はさっきの位置から東に14度、南に23度。4秒後」
ウラノスの声がして直ぐにスコープを覗くと、グルカ兵が1人倒れていて、ククリナイフを危なげなく避け続けていた。
「死んだかと思ったじゃねぇか馬鹿」
「動くなよ、上手く立ち回れないだろ」
両手のナイフを振るい続けるウラノスが2人の腕を斬り、約束の時間になってもう1発弾丸を放つ。
その弾丸はウラノスの背後から迫ったグルカ兵のククリナイフを弾き飛ばし、反転したウラノスに首を貫かれる。
「チッ、汚ねえ。エイル、今度は好きな所に弾倉の中を使い切れ。リロードしたら報告しろ」
「おう、当たってくれるなよ」
言われた通りにテキトーに弾倉の中身を使い切って、ウラノスに連絡を入れる。
「そろそろだ、それを仕舞ってそこで待機してろ」
「分かったよ二重人格者、やりにくいったらありゃしねえ。準備はまだかよ、ウラノスが死んじまうぞ」
動きが徐々に鈍くなったウラノスの体に穴が空き始め、痛がる素振りは見せないが、その穴の数が多くなる程、徐々に動きにキレがなくなっていく。
そして、少し離れた距離からRPGを構えていた男が、立て続けに2発のロケット弾を放つ。
「南方向162からロケット弾だ! やっぱり援護した方が良かっただろ!」
「もう十分だ、間に合わせてくれたみたいだ」
そういったのを最後に通信が強制的に遮断され、戦闘が繰り広げられていた場所を中心に、大規模な爆発が発生する。
遅れて轟く轟音に空を見上げると、戦闘機が頭上を通過して、爆撃が行われていた。
「おい、どこが間に合ってるんだよ。お前ごと巻き込む理由なんて無かっただろ! そんな少数相手なら、戦闘だって避けれただろウラノス。何か返事してみろ!」
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