消え去る日だ④
HK416を組み立て終わると同時に、作戦開始時刻10分前が表示される。
空のマガジンをドレイクの頭に当てて起こすと、痛がりながらもマガジンを投げ返してくる。
マガジンをキャッチして弾を入れ、ポケットの中に押し込む。
5分前に集まれる様に先に部屋から出ると、廊下には誰の姿も無く、逆に不自然なくらい静か過ぎる。
不安になってウラノスに集合の時間をメッセージで問い合わせると、私たち以外はもう集まっていると返信が来た。
ついさっき出たドアを開けて顔だけを部屋に覗かせ、もたもたと準備を始めたドレイクに、早くするように急かすと、ロクに服も着ずに部屋から飛び出て来る。
AK-47を私に持たせている間に身なりを整え、マガジンに弾を入れながらconference roomを目指す。
掌にroomkeyを表示して、センサにkeyを認証させて部屋に入るが、弾込め夢中だったドレイクは、部屋に入れずに全身を壁に打ち付ける。
反発して倒れたドレイクを見て、複数人のPhantomが笑い、心配して助けようとしたウラノスは焦っていたのか、keyを表示させずにドレイクの二の舞を演じる。
「いたた……あははは、帰って良いですか」
「いや駄目だろ」
額を手で押さえながら涙目で私にそう問うが、正直今帰られると何をしに来たのか分からなくなる。
無表情の聖冬とティエオラを見ていても、出来るだけ早く復帰して、meetingを始めてほしい。
「はい、今から航空防衛作戦のmeetingをstartします。英語喋れないから日本語で良いですか」
「いや、今の時代何語でも自動翻訳されるだろ。てかASCはお前が作ったんだから1番分かるだろ」
「そうだね、無理に出来ない英語なんて使わなくても良いよね。イギリス英語の方が好きだし、では作戦を説明するよ」
無事ドレイクも通過出来たのを見送ってから立ち上がったウラノスが、壇上に戻ってモニタの前に立つ。
日本列島を長方形で繋がるように空母を配置させ、公海にレーダーピケット艦でピケットラインを敷き、その後方に防空のスペシャリストである、秋月型駆逐艦を配置している。
ここまでは理解が出来たのだが、何故か攻める兵器の筈の空母が、それぞれ8隻の艦に囲まれ、4つの海域に展開している。
「なぁ、なんで空母なんて置いてんだ?」
「えっ、何でって、攻撃するからかな」
「どこを?」
「朝鮮半島と中国さ」
「あー……なら左の2隻は?」
「これは中国の空母に対抗する為さ、今はもう少し西に居るだろうから、交戦は少し後になるけどね」
「おい、急にそんなに戦争を進めてくのかよ」
「もう何百年も耐えてきた世界は、各地でこう言う動きが見られている。先に宣戦布告を出したのは朝鮮半島の2国と中国だからね、この戦争は必ず世界を巻き込んでしまう、アメリカとロシアがどう出るかで決まるね」
まるでゲームを楽しむ様な感覚でそう言ったウラノスの言葉に、誰も異を唱えないこの空間が異常なのか、私が正しいのか、感覚が麻痺してくる。
それからは自分に問う時間が続き、作戦の内容が全く頭に入って来なかった。
「ル……エイル、大丈夫かエイル」
漸く入った音はドレイクの低い声で、目の前には都子とウラノスが立っていた。
顔を上げて周りを見てみると、既に周りには殆ど人は居らず、出撃時刻の30分前の表示がいつの間にか出ていた。
「どうしたんだ」
「どうしたんだじゃないでしょ、作戦も聞かずにぼーっとして。話し合いで貴女は今作戦から外す事にしたわ」
「ごめんねエイルちゃん、折角だけどドレイクくんだけ借りてくよ」
「待てよウラノス、私は何で外されたんだよ。実力なら都子との訓練で……」
「ごめんね、実力は問題視してないけど、心の方がね。君はまだ死ぬ覚悟が出来てないみたいだし……」
「回りくどい言い方ね、要するに足でまといって事よ。私たちに枷は要らない、自由を勝ち取る戦いに、わざわざ情けなんて掛けてられないの。死ぬ覚悟も無いなら、さっさとアメリカの武器製造工場に戻りなさい」
刀を地面に立てて柄頭に両手を合わせて乗せた都子は、容赦無く今作戦に邪魔になる私に、戦力外通告を告げる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます