消え去る日だ②
ケイにしっかりと怒られた後に階段で座っていると、初めて見る少女と女性が、私の前に歩いて来る。
挨拶なんてする気になれないからと顔を下げたままで居ると、挨拶をして教会の中に消えていった。
時計塔で時間を確認してから真上の空を見上げると、座った私の真上に、先程の少女の顔があった。
「うぉっ! びっくりするな、気配も無く近寄るなよ」
「そんなに驚く事無いのに、美味しそうで近付いただけだから安心して。別に今食べようって気も無いしね」
見た目と中身が違う様な雰囲気と、よく分からない事を言う少女は、一見無邪気とも取れるが、怪しげな笑みを私に向ける。
綺麗な女性が居ないという事は、待っている間にここに来たのか、何が目的なのかが全く分からない。
「そんな顔してどうしたの? ここに空が無いから、それとも自由に駆けられる大地が無いから、それとも大切な人が居ないから。その全てかな?」
「……お前いくつだよ、何でそんな事聞いてくんだ」
「私は7年と2ヶ月8日19時間28分34秒の生存時間、こんな事を聞くのは興味があるからだけど。何か他と違うのよあなたは、この私が表現出来ないなんて初めてよ」
「白い髪に片方ずつ目の色が違う、異常な頭脳を持ってやがる。お前は人間なのか?」
「はあ? 私が人間じゃないって……それ本気で言ってるの」
空を見る為に上げていた顔を私に向けると、その目の色は、両方とも真っ赤に染まり、鳴る時間でもない時計塔の鐘を鳴らす。
低く鳴り響く時計塔に目を向けると、いつの間にか針が0時を指していて、黒い空を半分光に変え、地をひっくり返して水底に落とす。
何かに掴まるために手を伸ばすと、突然景色が機内に変わっていて、都子の小さな手を掴んでいた。
「お、おぉ! 都子……空と大地は、正常」
「いつまで私の手を掴んで寝惚けてるつもり?」
手を叩かれてベッドに投げられ、にこにこしているウラノスに、「おかえり〜」と手を振られる。
心拍数上昇中と表示されたのにすら驚き、久し振りにテクノロジーに囲まれると、少しだけまだ違和感がある。
「あの少女は何なんだウラノス、あの化け物は」
「あの子は化け物じゃないよ、何せ聖冬なんだからね。君は選択肢を間違えただけだから、強制的にASCが切断させたのだろう。あれは追体験じゃなくて、己で道を決めるものだからね。どちらにしろ疲れただろう、君には休養が必要だ」
「そう言えば疲れたな、あんな過酷な所見た事ねえ。あれは現実じゃ有り得ないだろ、命がいくつあっても足りないっての」
「そうだね、実際1つじゃ足りなかったのさ。私以外はね」
綺麗にカットされた林檎が入った器を置いていき、ウラノスは質問を受け付けないと言う様に、目の前のASCを操作して出ていく。
それに続いて都子が出ていった為、この部屋には私一人となり、仕方無くもう1度目を瞑る。
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