ミツェオラ⑥
「だから、JBってやつが居るだろ! 私たちはそいつに合わせてくれれば良いだけだ」
「これ以上迫るなら、私たちはお前たちを敵と見なす。死にたくなければ立ち去れ」
腰の銃を構えた警備に阻まれ、怯えるミツェオラに悪い為、大人しく引き下がる。
暗い路地の木箱の中に入れていた銃を取り出すと、煙草を咥えた口元を両手で覆った女性が、煙草に火を点けたライターをポケットに仕舞い、煙を吐いてから口を開く。
「あなたたち、この国によくそんなものを持ち込んで不法入国出来たわね。その能力は私が今欲しいものなんだけど、協力してくれる?」
「誰だ、所属と名前を名乗れ」
「失礼、私はジュリア ベネット機関の中では……」
「あんたがJBか、なら話が早い。私たちを日本に連れてってくれ」
「なら仕事をして貰うわ、タダで助ける程暇じゃないの。あなたたちが狙うのは、今、世界最強と名高い殺し屋の始末。このドイツに居るって話があるから、気を抜くと簡単に死ぬから気を付けてね」
それだけ言い残して去って行った事から、居場所や詳細は不明で、見つけ次第全力で攻撃と言う事なのだろう。
世界最強の殺し屋と聞いて、鈴鹿がそう呼ばれていた様な気がしたが、あんな化け物が出てこない事を祈る。
早速与えられた最悪な条件を達成する為に、ウラノスの記憶をよく思い出す。
当時、ウラノスが殺しをやる前に、主に世界最強の殺し屋が活動していた場所。
「イタリアのシチリア島だ、すぐに行こう」
「良いけどよ、それは勝算があるのか」
ライアーは気付かない内に焦っていた私を見詰め、見定める様にその答えを待つ。
私の答えを待つ2人も、こちらを見ることはないが、耳を澄ませている。
「勝てねぇ、確実に負ける」
「だろうな、殺しの逸話は多くあるけどよ、誰も見た事は無いんだ」
そう話すライアーの背後から、鈴鹿を小さくした様な容姿の、怪しげな少女が近付いて来る。
咄嗟に銃を構えて引き金を引いたが、下からの衝撃に銃口が跳ね上がり、流れた弾が民家の壁に突き刺さる。
両手に拳銃を持った少女が、いつの間にか私の懐深くまで入り込み、鳩尾に銃身が叩き付けられる。
抵抗出来ずに倒れ込む私を見て、やっと反応した3人が銃を構えようとしたが、一瞬の内に全てが地面に転がる。
「お前たちは殺しの対象じゃない、邪魔をするなら……」
「お前はそうだろうけど、私たちは対象なんだよ!」
すぐに起き上がって拳を握るが、喉に銃を突きつけられる。
両手を上げて地面に座り込むと、銃を仕舞って去って行く。
「天月 鈴鹿、取引だ」
「それは俺に言っているのか?」
「そうだ鈴鹿、私たちは日本に行く為にお前を殺さなきゃならねぇ。だから……」
「そんな取引は不要だ、お前たちにはここで死んでもらう。その殺し屋と一緒に居た事を後悔しろ」
右から視界を眩ませる程の光が当てられ、光の前には、隊列を組んだ特殊部隊が構えていた。
「走れミツェオラ! 兎に角反対側に走れ! JBの所に行け、私も後から行く」
「でも……」
「早く行け!」
ミツェオラの背中を押して反転し、木箱の側に落ちた小銃を拾い、降り注ぐ弾丸の雨が腕を掠めながらも、食らいついて腕だけを出して打ち返す。
木箱を突き抜けて弾丸が腕に突き刺さり、銃を落としそうになりながらも撃ち続け、震える手でリロードする。
逃げるミツェオラの盾になったライアーは、私の持っていたDragunovを数発撃って倒れ、ハルトもM9A1を握りながら、大量の血を流して建物の陰に身を隠す。
メルが振り返ったミツェオラの手を引いて走り、間一髪弾丸を受けずに十字路を曲がる。
それを見送っている間に、腕に受けた傷に包帯を巻き、膝の上の小銃を持ち直す。
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