外の世界⑤
「おかえり、その子は?」
「ただいま友希那、アメリカの反攻の種火さ。先に他の種火を乗せて着いていたのか、聖冬も順調に行ってるみたいだし完璧だね」
「当然、だって聖冬さんの考えたオペレーションだから。だから皆迷わずに遂行出来るんでしょ」
「そうだな、それじゃあヤハウェちゃんを連れて日本に行こう。操縦は任せても良いかな?」
「お父さんがやるより安心だから任せといて、貴女の仲間も機内で待ってるからね」
あまりにも普通にPhantom Princessの友希那が目の前で喋っているが、こっちとしては感動し過ぎて身動きが取れない。
取り敢えず目の動きだけで出来る写真撮影をして、しっかりと記憶媒体の体に風景と共にファンプリメンバーを保存する。
「エイルちゃんもファントムに入る事になったよ、ねえエイルちゃん」
「え、おう。おぅ」
いつも凛としたライブ映像でしか見られない友希那が、目の前で柔らかな笑顔で斑鳩と話している。
その姿はどの人間よりも儚くて美しい女性で、同性でも惚れてしまう程の破壊力を持っている。
悔しいが、変人でも友希那に引けを取らない美しさの斑鳩から生まれたのも、この2人が並べば納得出来てしまう。
施設の前で会話に花を咲かせていた他のメンバーが、妃奈子を除いて全員走って斑鳩に駆け寄る。
1番前を走っていたドラムのベルティナ・ドライブ、ベルの愛称で呼ばれている彼女が斑鳩に飛び込む。
2歩下がって漸く踏ん張った斑鳩だったが、その後に続いた他のメンバーに押し潰される。
「こら、何をするんだ」
「お久し振りっすウラノスさん、仕事以外では2週間振りっすね!」
「新曲聞かせて、わざわざ勿体ぶったんだから」
「皆駄目ですよ、斑鳩さんとても困っていますので退きましょう」
後から歩いて来たお淑やかな妃奈子が、右腕にベッタリくっ付いた友希那の頭を撫でる。
心地良さそうに目を瞑って妃奈子の肩に頬擦りをして、見ているだけで癒される。
「エイルじゃねーか! 生きてたんだなお前も、こっちも全員無事だぞ」
背後から聞こえた声に振り向くと、見た目に全く合わない程笑顔でこちらに走って来る。
「悪運強いんだなドレイク、私が死ぬ訳無いだろ馬鹿野郎」
「そうだよな、お前が死んだら困るもんよ。これから日本に行くらしいんだが、俺は初めて行くからすげー楽しみだぜ」
「そうだな、それにファンプリがここに居るんだぜ。夢じゃねえよなこれ」
「夢じゃねえと思う、だって聖天使に貰ったCDが手元にあるし。妃奈子が目の前で喋ってるんだぜ」
「おい、ファンプリで1番可愛いのは友希那だ」
「何言ってんだよ、1番は妃奈子だろ」
Phantom Princessを知った時から続くこの討論が、遂に本人の目の前で決着をつける時が来た。
「友希那さん、ファンプリで1番はあんただよな」
「いいや妃奈子さん、1番は貴女だよな」
それぞれ本人に直接問い質してみると、2人はお互い顔を合わせて微笑み合う。
「私は妃奈子一択、私が1番なんて有り得ない」
「もう何言ってるの、1番可愛いのは友希那なんだから。私より身長小さいのに、合わせようとして無理にヒール履かなくても良いのに」
「それは違う、違うの。コンプレックス突いてくるのは駄目、何も大きくならなかっただけ」
少し怒った様な顔で妃奈子を少し見上げる友希那だが、手はしっかり妃奈子の腕に巻き付けられている。
「皆そろそろ飛ぼうか、天皇陛下の方から私たちに召集が掛かった。恐らく始まるんだろうね、第三次世界大戦が」
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