外の世界④
「いやー近くを飛んでいてくれて助かったよあずあず、これは日本まで送り届けてくれるのかな?」
ハワイから無事に脱出して所属不明の戦闘機に乗せられ、少しだけ不機嫌そうな女性に斑鳩が話し掛ける。
「そんな訳ないでしょ、ロシアまで来てもらってそこから個人で帰ってくれ。私だって暇じゃないんだから」
「とか言って、私の救援を真っ先に受けてくれたじゃないか」
「偶然ハワイの近くを通る仕事だったからな、あんたなんかの為に寄ってない、そっちの光ある生の為」
「最近娘はどうだ? ヤハウェちゃんは元気かな?」
「反抗期なのかな……最近はウザイとか邪魔とか言われるんだけど、特に何をした訳でもないんだけど」
「友希那に反抗期なんて無かったかな、でももう少しであるかも知れないしな。取り敢えず友希那は良い子で可愛い」
全く合わせる気が無かった斑鳩は、友希那の可愛い自慢をして終わる。
「友希那ちゃんが良い子なのは見て分かる、うちのは家から出ないし動かないし、今から家に来てもらうからよろしくね」
「日本に降ろしてもらえると助かるんだけど、やっぱり駄目だよな」
「当然。あ、あとロシアも協力するけど。アメリカとの本格的な第三次世界大戦、こっちに負ける要素なんて無いしね」
「それは助かるな、ロシアにも協力を仰ごうとしていてね。それじゃあヤハウェちゃん借りて行こう、外に出る良い機会にもなるしね」
「怪我させたら殺す」
「分かってるよ、もうそろそろ着く頃かな? それじゃあ先に降りてようかエイルちゃん」
そう言って扉を開けた斑鳩は、銃の入った鞄を背負って私の手を掴んで飛び降りる。
今まで2人の話を聞くに徹していた為、完璧に油断していた。
「あぁぁぁぁ! 死ぬ死ぬ死ぬ!」
「はははっ、大丈夫さ。落ち着いて見てみると良い景色だよ、君は景色を見ているだけで良いよ、その間に上手く着地してみせるからね」
言われた通り考えるのをやめて両手両足を広げると、安定して空を落ちるようになる。
薄暗くなった海に夕陽が呑まれると同時に、真下の施設が一斉に照明を点灯させる。
「綺麗なのは夕陽だけだぞ」
「それでも綺麗だったろ? ここが私たちの生きていた世界、そして君がこれから生きる世界さ」
「つまんねえ事言うなよ、どうせなら活きてみたいだろ?」
「君のが余程つまらないよ、でも燃え尽きるまで走り続けるのも格好良いね」
パラシュートが開いてゆっくりと降り、斑鳩の膝の上で暫く施設の光を眺める。
「足下に気を付けてね」
近くなった地面に足を着けて少し走り、衝撃と勢いを最低限まで殺して止まる。
施設の前に複数ある人影が動き、降り立った私たちの方に歩いてくる。
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