外の世界③
ベイルアウトしてから3時間後、降り立ったのはアメリカ最前線の基地、100年の間に島そのものが要塞と化したハワイだった。
基地を隠す為に島全体に広がる自然の中を、銃などの武器を背負いながら斑鳩の背中を追う。
勿論私たちが落とされた事はアメリカの軍需部に伝えられており、ハワイに潜んでいる事も知られている。
そんな敵の真ん中に立つ緊張感の中でも、斑鳩は焦る素振りすら見せずに的確に、かつ迅速に対応して前を走っている。
足場が悪いコオラウ山脈を登っていると、慣れない地形で少しずつ距離が離される。
追い付くために必死に足を前に出すが、猫のように身軽な斑鳩は息を切らしてすらいない。
「待ってくれ斑鳩」
「分かった、周囲は見ておくから焦らずゆっくり来てくれて良いよ。そのまま姿勢を低くして来てね、小隊見つけたからさ」
そう言って背中のDragunovを構えた斑鳩はスコープを覗き込むと、息をゆっくりと吸い込んで短く吐き切る。
「距離は2000か、当たるかな。心配になってきたよ、狙撃はアサルトの次に得意だからね、久し振り過ぎて当たる気がしないや」
そう文句の様な事をぶつぶつ呟きながら狙いを定めている斑鳩は、外した時の為にH&K MG4を脇に置く。
「Dragunovで当たる訳ないだろ、どう考えても射程外だろ。もう少し引き付けてか……」
言葉の途中で1発発砲した斑鳩は、次の為にリロードしてもう1度構える。
斑鳩が狙っている小隊の方向を拡大して見てみると、既に1人が血を流して倒れていて、仲間の2人が後方に運んでいる。
「当たる当たる、ELIZAちゃんもう少しスコープの倍率高く出来ないかな?」
「すげぇ……射程外のあんな小さな的を1発で当てやがった、Dragunovには悪条件なのによ」
「ほらほらエイルちゃん足止めないで。こちら斑鳩、落とされちゃった」
「足痛いなクソ、何でこんな目に遭わないといけないんだよ!」
イライラとストレスが最高潮に達したところで上を向いて叫ぶと、それまで見上げもしなかった青い空が映る。
働かされていた工場には無かった空は、憧れの友希那と同じ色をしていた。
「すげぇ綺麗だ、ははっ……これが外の世界かぁぁー!」
「はははっ、君は面白い子だね。それじゃあ行こうかエイルちゃん」
再び銃を背負い直した斑鳩は私に手を差し出すと、まるで子どものような笑顔を浮かべて掴んだ私の手を引く。
少しだけ元気が戻った足で高い山を登ると、雄大で鮮やかな緑と、空の青を映し、太陽の光を吸い込む海がキラキラと光る。
「こちら斑鳩……了解。じゃあ頼んだよ友希那ちゃん、愛してるよ〜。あははっあ、それはやめて下さい。うん、じゃね」
「おい、友希那と通信してたのかよ。私にも喋らせろよ」
通信を切断した斑鳩の肩を掴んで迫るが、ニコッと笑って私の手を掴んで踊り出す。
突然の事に流されるままに踊らされていると、ikarugaが遠くの空からこちらに来る。
「楽しいかい?」
「割と思ってたよりはな、なんか……サンキュ」
「それは良かった、じゃあ始めるとしようか」
「何をだよ、こんな山の上でやることなんて……」
斑鳩の白い髪が一瞬で真っ黒に染まると、触手の様に動いて背中の銃を構える。
そして頭を出したアメリカ軍に対して鉄の雨を降らせ、余っている触手が撃っていた触手と交代して、先に撃った触手のリロードを援護する。
進む事も、下手に後退する事も出来なくなったアメリカ軍は、コンカッショングレネードを投げ付けるが、鉄の雨に阻まれて鉄片が全て無効化される。
徐々に斑鳩の髪色が元の白色に毛先から戻っていき、次々に銃を元あった鞄の中に入れて髪に戻る。
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