ここから歩き出す⑤

海に到着したは良いものの、ポイントが立っている地点には何も無く、広い蒼があっちこっちしているだけ。

暫くしてから全員に通信が入り、旧ホーネットのライブ映像が送られてくる。


だがその周りはアメリカ軍の軍艦や戦闘機に囲まれ、Phantom Princessを背に向けて壁の役割を果たしている。

その中には斑鳩とアルテマ、それと瓦礫の山に連れていった女が居た。


ホーミングや機銃の弾丸をPhantom Princessまで届かない様に防ぎ、一心同体と言う言葉がぴったりな程の連携を見せる。

旧ホーネットの甲板では攻撃を気にせずにライブを続けていて、時々防ぎ切れなかった弾丸を避けながら演奏を続ける。


「この通りだから、ちょっと迎えに行くのが遅れるわ。そっちにも軍じゃなくて特殊部隊が向かってるから気を付けてね」


終わると同時に旧ホーネットに向かって戦闘機が数機消え、背後から銃声が大量に響く。

振り返ってみると、言っていた通り大勢の特殊部隊が壁を作って、子どもにも構わず乱射していた。


「痛いよ! おじさん助け……」


少し離れていた所で1人遊んでいた少年が、血を流して地面に倒れる。

手を伸ばしたドレイクの手を貫いた弾丸が砂に落ち、近くに居た子どもに大量の鉄が突き刺さる。


「子ども狙ってんじゃねぇぞクズ共が! 未来があるアメリカ国民を、歪んだ常識の下で殺すんじゃねえ!」


持っていたHK416を撃ちながら鞄を放り投げ、体中に弾丸を受けながら進み続ける。

だが辿り着く前に力が抜け、左眼に熱と痛みが走って首が持っていかれそうになる。


動かなくなった体でASCが響かせる生命活動の危機を眺めていると、突然小さな人が粒子から組み上げられる。


「どーも! ELIZAちゃんに注目! 許可が出たからUranos Code行ってみよっか、驚いたら駄目だよ」


訳の分からないそれは両手を広げて文字を大量に打ち込み、移りゆく視界の中で、少し前に見た瓦礫の山を映し出す。

そこに映った完璧なスタイルの白髪女性は、私を包んで抱きしめる。


それが徐々に温かく確かなものに変わり、銃の音が響き渡る海辺に戻って来る。

少し前まであった痛みが夢の様に引いていて、柔らかい誰かの腕の中に居た。


「ここで良いのかな、私の作ったUranos Codeも完璧。貴女がエイルで良かったかな?」


「世界の聖天使、ひじり 聖冬みさと……何でここに」


「貴女から呼んだのに無責任じゃないかな? 折角助けに来てあげたのに、作詞途中だから特別だよ」


「何をするんだ、こんな状況でさ……もう終わりだ。私たちには才能なんて無かった、このアメリカは大き過ぎる敵だったんだ」


周りを見回してみると、子どもの盾になっているドレイクと愛佳が、穴だらけの体にも関わらず、気力を振り絞って立っていた。

立っているのが信じられない程の体は、機銃掃射により2つに千切られる。

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