アメリカ解放宣言③

走りながら追撃してくる特殊部隊を減らし、細い裏路地に滑り込む。

反転して銃を構えて待ち伏せ、路地に一人ずつ入ってくる隊員を撃つ。


罠と悟って様子見をする特殊部隊を放置して走り出すと、屋根から屋根に飛んでいたウラノスクイーンに拾われる。

突如虚空に足が着くようになり、手を離される。


「おい、死んじまう……」


「良いから信じて足を前に出して、今から振り返らずに友希那と莫迦とアルテマを守ってあげて」


「あんたは?」


「ちょっと足止めしてくから、ikarugaの反応があるから気を付けてね。テロ期待してるわ」


フードを被って姿を消したウラノスクイーンに渡されたケースを開けると、高価な為滅多にお目にかかれないHK416が入っていた。

マジかよと声が漏れそうになったが、足下に展開されていた何かに特殊部隊の弾丸が当たり、それどころじゃなくなる。


ケースを捨ててHK416を取り出し、上空を飛び回るikarugaの弾丸を避ける。

このままだといつか弾丸を受けるが、打開策なんてある筈が無い。


恐らくウラノスクイーンの力で空を駆ける事が可能となっているが、だからと言って飛ぶ事は出来ない。


「だりぃな、NATO弾でも食らっとけよ!」


飛んでいったNATO弾は効果的な打撃を与える事無く回避され、代わりにミサイルが返される。


「めちゃくちゃだな! こんなの渡されてもどうにか出来るかよクソが」


「期待したのだが、ここで諦めるか君は」


「諦めてねぇ、黙って見てろドジ盲目野郎」


そうやって普通に会話をしていたものの、よく考えると盲目の女性も浮いているということになる。

ikarugaに向けた視線をもう一度声の方に向けると、確かに宙に浮いて隣を飛んでいた。


「君は酷いな、私だってもう目は見えてるんだからな。じゃあ頼んだよティオ、頑張って〜」


「君こそ失敗して僕の仕事を増やさないでほしいな、頑張るのは君の方だ」


目の前に現れた女性は突然ASCの刻印に触れ、指を体の中に捩じ込む。


「おい! 何だよ気持ち悪いな、痛くはねえけど入ってる感覚が……」


「黙ってて、必ず成功するわけじゃないんだ。生きたいなら僕の集中を切れさせない事だね」


紅かった左眼が金色に変わると、目の前に小さな人が組み上げられ、情報が視界に埋め尽くされる。

何かのプログラムを捩じ込まれ、アメリカのASCに不適合なイギリスのASCの情報が表示される。


頭の中に映る記憶は私が生まれる一世紀以上も前の、イギリス制府が倒れる際に起こったテロの映像だった。

今より少し幼いPhantom Princessがウェストミンスター寺院で歌い、M029が宙を舞ってイギリス軍を撃つ姿。


今の髪色からは想像出来ない程綺麗な蒼髪な、盲目の女性が花になる姿。

友希那が目の色の無くなったウラノスを突き刺す姿。

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