アメリカ解放宣言②

全盲の女性が少女の補助を受けて立ち上がると、足下に転がっていたナイフで滑って転ぶ。

少女はそのまま気を失ってしまった女性を見て溜息を吐き、誰かに通信を繋いで背中を踏みつける。


「あ、帰って良いぞ君。迷惑掛けたね」


「お、そうか。なんか申し訳ないな、じゃあな」


背を向けて外に続く通路に歩くと、前から誰かが駆けて来る。

壁に背を付けて銃口を向けて警戒していると、徐々に姿が見えてくる。


「な、おいマジかよ。何で友希那がこんな所に」


Phantom Princessのライブが終わった直後だが、確かに目の前に世界的スターの九条 友希那がこの場に存在している。

何かサインが貰えるものが無いか探すが、生憎余計なものを持っていない。


そうしている内にすれ違う距離になり、引き止めようと腕を伸ばす。

距離感覚が狂ったみたいに触れる事が出来なかったが、すれ違う瞬間に目が合ったような気がした。


「一体どんなドジすればこうなる訳、役に立たない上に面倒事を増やすのは得意ね。アルテマもありがと」


「なに構わんよ、昔世話になったのを返してるだけだからな」


「そんなの良いのに、早くしないとさっき大量の特殊部隊が来てたから。捕まって皮を剥がれて奴隷にされるかも」


友希那は女性を抱え上げ、少女と走って私を追い抜いていった。

それに付いて行って外に出ると、特殊部隊が撃った弾丸がドアに当たる。


頭に来て銃を構えると、上から影が降ってきて音も立てずに着地する。

影が立ち上がってフードを脱ぐと、絹のように綺麗なブロンドが揺れて落ちる。


「マジかよ……エージェントM029」


「ん、その名前はもう古い筈だけど。今はMI6の統括、ウラノスクイーンって呼ばれ慣れてるから変な気分ね」


「今日は何の日だよ。絶対ドレイクに自慢してやろう」


「私が道を……貴女手伝って、そのF-2000はアクセサリーじゃないでしょ?」


「当然だろ、あんたの隣に立てるなんて光栄だな」


「カウント、Three、Two……」


合図の前に飛び出して階段を駆け下りると、物陰から身を出して銃を構えた特殊部隊が一斉に引き金を引く。

飛来する弾丸が自分の脇をすり抜けながら滑っていった直後、お返しに撃とうとしたが、いつの間にか肉薄していたウラノスクイーンが全て斬り捨てていた。


そこに向けて弾丸が集まるが、既に宙を舞っていたウラノスクイーンには届かない。

更に見えない地面を蹴るように地面と逆さまになり、虚空を蹴って真下の特殊部隊に突っ込む。


そこから空いた穴から友希那が抜け出し、それを確認したウラノスクイーンが私に合図を送る。

不本意ながら何も出来なかった戦場を抜け出し、前を走る友希那を追い掛ける。

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