23:50

聖 聖冬

アメリカ解放宣言

警報が鳴り響く廊下を駆け抜けて管制室を制圧し、全ての牢獄の鍵を解錠する。

館内放送のマイクに口を近付けて、困惑する囚人たちに指示を出す。


「全員ここから出ろ、先導は今向かっている。全員指示に従って迅速に動けよ、もたもたしてるやつは捕まって首落とされるぞ」


「刺激し過ぎだろ、仲間に引き込むのも考えろよ」


「煩いぞ、お前こそとっとと配置に付けよノロマ。マジでケツの穴増やすぞ」


「待て待て悪かったって、今配置についた。お前も早く放送局に来いよ」


通信を切って管制室から出ると、巡回していた警備が戻って来る。

それにばったり出会い、暫く睨み合いが続く。


「おう、巡回ご苦労さん」


「テロリストがこっち……」


「撃つぞー!」


引き金を引いてどこかに通信を繋いだ警備を撃ち、倒れた二人の所持品を漁る。

警棒とベレッタと言うシケたものしか無かったが、貴重な銃だけ貰っておく。


何だか放送局まで行くのが面倒になってきた為、もう一度ドレイクに通信を繋ぐ。


「何か面倒だし、お前が宣言しとけ。どうせ音声だけだから良いだろ、じゃあ頼んだぞ」


「待てよいきなり言われても俺……」


通信を切ってAlice In Unreadableを鼻歌で歌いながら、制府の役人が見張っている監視カメラを撃つ。

暑苦しい覆面を外して一息つくと、ASCに一通のメッセージが届く。


「誰だよこんな時に」


メッセージを開いて中を確認すると、明日の午後十二時に武器製造工場の裏で待つとだけ書かれていた。

差出人不明、そして何故か職場がバレている。


送ったやつの職場が偶然一致しているとも考えたが、その可能性は極めて低いだろう。

何故ならわざわざこんな事をしなくても直接来れば済む話だ。


「おいおい、こそこそ付け回しても面白くねぇだろ? 正面から来いよ!」


振り返って弾丸を廊下に叩き込むと、鉄と鉄がぶつかり合う音がする。


「今更刃物なんて時代遅れじゃねぇのか?」


「腕が落ちたんじゃないかアルテマ、どこぞの誰かにすら見つかったぞ」


「君の目が見えないから介護しながら行ってるんだろ、そんな状態でどうやってやれって言うんだ」


「何なんだよ、余裕ぶっこいてんな」


撃ち返してこない二人に近付くと互いに取っ組み合っていて、小さな少女が両目を瞑った女性を組み伏せていた。

二人は動きを止めてこちらを向くと、片手を上げて軽い挨拶を投げ掛けてくる。


もう戦意すら失せた為話を聞こうと待っていると、どこかで見たような顔だった。

思い出そうと振り絞ってみるが、毎日工場のやつだけでも百人以上見る為分からない。


「おう、こんな所で何してんだ」


右手を挙げて挨拶を返し、隣に座る。


「テロリストが今日ここを襲撃すると聞いたからな、私たちはそのリーダーに会おうと思って来たんだ」


「あぁ、私がそのリーダーってやつだな」


「おやおや偶然だな、ほら私のお陰だろうアルテマ。アメリカに入るのも大変だったのだぞ」


下敷きにされている女性がはしゃぐ様に手をばたつかせ、上の少女に眉間をぐりぐりと押されて沈黙する。

奇妙な光景を見せられながら座っていると、ドレイクが解放宣言をし終える。

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