ウェブ小説の対極にあるもの
ウェブ小説の対極にあるものとは何だろう。
この一連の文章はカクヨムやウェブ小説を分析することを主題としているが、あえて逆の存在を考察することも、主題をより明確にするという意味では価値があるだろう。
ここで考察の対象にするのは、非ウェブ小説ではない。あくまで対極に位置するもの、つまり正反対の存在である。それを仮に、アンチWとしてみよう。
今までに考察したウェブ小説に関する記述を反転してみる。
ウェブ小説は共通認識に依存しているので、単独には存在できない。だから、アンチWには単独で存在しうる世界観の構築が必須になる。異世界転生という題材なら、転移の必然性やシステムの説明。もしくは説明ができなくとも、そうなってしまう状況をリアルに感じさせる技術が必要になる。
異世界転生の歴史的な名作として、ターザンの原作者として有名なバローズの火星シリーズというものがある。南北戦争に従軍してた男がわけもわからずに火星に行ってしまうのだが、実は、これには科学的な説明がない。しかし、転移先の火星の描写が丁寧であり、リアルに感じられるため主人公と同じ視点で読者は納得する。
よくはわからない。しかし、この世界で生きるしかない。
ここまでできれば、説明は必要ない。ファンタジー世界でどうしてドラゴンが空を飛べるのか物理的に説明する必要が必ずしもないように。現実であることを感じさせる設定や描写があれば、それはその作品世界でのひとつの自然な法則となる。
次に、もうひとつの特徴だ。
ウェブ小説は、よみやすい文章と魅力的な導入部に大きく依存している。ある程度の着想があれば誰にでも参入でき、人気を博する可能性がある。
そのために、作品としては評価されても作者は評価されない。作者が使い捨てになる傾向があると、以前に論評した。
アンチWは、誰にでも真似できる作品では成立しない。
それでは。他人が真似できないものとは何だろう。
小説には基本的な3要素、プラスαがある。着想、ストーリー、キャラクター。そして文章を流れるエネルギーである。
誰にも思いつかないアイディア、誰にも想像できないストーリー、まるで最初から命を持っているかのように自らを主張するキャラクター。そして、作品全体を貫く生命のような血流。
年月を経ても失われない名作は、そのうちの少なくともひとつを持っている。
アンチWとは、破綻のないしっかりとした世界観をもって構成された独立の物語。そして上記の要素の何かを持っている作品だ。
これは他の人間で、代わりを見つけることはできない。
この時、出版社は作品だけではなく作家を買おうとする。
この時、本当の意味での小説家が誕生する。
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