カクヨムは作者ばかり
カクヨムは作者ばかりだ。
よくいわれる言葉だ。実際、応援してくれる人、レビューをくれる人を検索すると必ずと言っていいくらい小説を発表している。読みあっているだけじゃないか。本当の読者がいない。カクヨムの読者層は貧弱だ。なろうの層の厚みとは比べ物にならない。そういう人もいる。
これは半分真実であり、半分誤っている。
純粋な読者はなろうの方が圧倒的に多い。これに異論を挟む人はいないと思う。カクヨムも読者層の拡大に努めてきた。しかし、まだ歴史が足りない。そういう考察もある。
私はその考察に、一部異論を挟むものである。
カクヨムとなろう。読者にとって魅力的なのはどっちだろう。
優れた作品は両方ともある。
それはそうだ。作者は認められる場所で投稿しようとする。
反応がもらえれば泣くほどうれしい。片方での評価が今ひとつでも、もう片方なら別の評価がもらえるかもしれない。なろうは多くの読者に読んでもらえる、カクヨムはプロから認めてもらえるチャンスが多い。
重複投稿が禁止されていないなら、両方に投稿しよう。
それぞれに魅力があるのなら、当然そうなる。だから少なくとも、両方のサイトで認められる可能性の高いウェブ小説は、特に同時投稿が多い。
しかし、作品の質は変わらなくとも。むしろ多様性という意味では、カクヨムの方が明らかに優れていようとも。読者はなろうよりは増えない。それには明確な理由がある。
作者は何を求めて喜ぶのか。それは自分の作品が認められることである。
だから☆ひとつで泣き笑いし、絶望する。それは当然の感覚だ。
しかし、忘れていないだろうか。読者にもそれがあることを。
創作に関わる人間にとって最も重要な感情は、承認欲求である。それは当然、読者にもある。AKBがなぜウケたのか。それは自分の想いが、感情がアイドルグループを押し上げる力になると感じさせてくれたからだ。
自分たちの想いは間違いではなかった。それが結果になった。その純粋な感覚を嬉しいと思い、それが更に応援する力となる。その連鎖こそが今の新しいアイドルグループの形を作った。
考えてみよう。カクヨムは作者を応援するサイトだ。
読者も大切にしている。しかし、読者の立場からすると息苦しい。自分たちの意見で押し上げた作品よりも、編集部が選んだ作品が優先される。それは、作品の質を選別する行為としては正しい。しかし、握手をして応援してきた可愛いアイドルの隣で、見たこともないような美人がスターとなっていくのを見て、ファンは素直に祝福できるだろうか。
だから読むだけなら、仮に読みたい作品がなろうにもあるのなら。読み専の人間にはなろうの方が心地よい。
これが、現状でカクヨムがなろうより多くの読者を獲得できないと考察する理由である。
もちろん、小説を書いている人間も読者である。むしろひときわ熱心で、真摯な読者である。それが互いに切磋琢磨する意味で感想を言い合うのだから、これはこれで素晴らしい。冒頭でカクヨムの読者層が貧弱であるという意見に対し、半分は誤っていると評したのはそのためだ。
私は個人的には、これでも良いと思う。
ただ、ひとつの考察として、カクヨムがなろうに勝つ可能性を考えてみる。
カクヨムには責任を負う能力がある。
AKBならプロデューサーとテレビ局がついているようなものだ。なろう同様の別サイトを立ち上げて並立させていけば、その利点で読者の承認欲求を満足させることはたやすい。戦略次第ではなろうを圧倒できる。少なくともその可能性は十分にある。
創作者、そして創作者と同一の成功感覚を有することを喜びとする者。
承認欲求を満たせるかどうかで、流れは大きく変わる。
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