第44話:友人
第44話:友人
結婚をした翌日。二人は
「『
視覚的には何も変化がないが、柵の内側。
トワはふと隣に立つアレクに尋ねた。
「
「ええ、はっきりと
指輪を通してトワが視認したものが、ちゃんと伝わっているようである。
「これが行っていなかった行為ですか?」
「やね。
「トワ?」
アレクはトワのげんなりした表情に声をかける。
「いや、なんか凄い量が
「
「やっぱり、
「対外的には
「そやね。いらんトラブル招きそうや」
トワはアレクを見上げた。
「出発は明日やね?」
「その予定ですが……。延ばしましょうか?
アレクの気遣いに、トワは首を横に振る。
「それは道中でもある程度出来るから、ええよ。ただ、急ぎで作っておきたいもんが出来たから、今日一日突貫で作るから明日迎えに来てくれへん?」
「それはかまいませんが、私がついてなくて大丈夫ですか?」
「
見せびらかすように左手をかざすトワだが、伴侶相手では苦笑を誘うだけだ。
「では、明日はいつも来ている時間に迎えに来ます。旅用の荷物は忘れずにまとめておいて下さい」
「はいな。アレクもがんばって、皆の視線に耐えてね」
悪戯っぽい笑みのトワに、アレクは苦虫を噛み潰したような顔になる。
「言っておきますが、あれはトワのせいですからね」
「でも、村の人も部下の人達も薄々気付いてたって雰囲気やん。私はただトドメを刺しただけであって――」
「いや、それが問題なのでは」
アレクは情けなさそうな声を上げる。
昨日、見事にアレクの
「人望なんて足し算やって」
「足し算?」
「そや。
「それはありがたいのですがね」
生暖かい視線も結構辛いものがあるのである。
アレクはため息をついて、表情を普段のものに戻した。
「いまさら言っても詮無き事ですか。では、私は戻って手続きと準備をすすめておきます。本当に何かあったら知らせて下さいね。すぐにかけつけます」
「はいな」
アレクが去ったのを確認してから、トワは
便箋はまだ封書に入れられたままで、それを取り出す前にトワは封書に向って話しかけた。
「なぁ、もしかしてハギも
便箋を取り出すと、かつての文章はそこにはなく、ただ一文だけが書かれていた。
他の
トワは舌打ちして、封書を
ハギとはトワの友人である。中学二年にしてカリスマ腐女子という重すぎる十字架を背負った少女で、一部の女子からは教祖扱い、男子からは「このままでは世界が」「どうしてこんなになるまで放っておいたんだ」「駄目だこいつ……早くなんとかしないと」などと恐れられていた。
トワにとっては動画製作仲間であり、従姉妹が自殺し精神的に危うかったトワに寄り添ってくれた恩人でもある。
トワが封書にハギという存在の確認をしたのは、封書の封をしていたシールの存在だ。
そのシールに描かれた悠久山安慈のイラストが一通目も二通目も彼女の絵柄だったからだ。
ハギの姉は血筋というか売れっ子
ハギがかかわった作品は商業誌、同人誌問わずトワは所有していた。原稿を書くのを直接見た事もあった。
だからこそ、シールの絵柄がハギのものである事がわかった。
「よし」
トワは頬を両手で叩いて意識を切り替えた。
今、自分にはやらねばならない事がある。共に生きると誓った伴侶もいる。前を向いていかなければならない。
「まぁ、あいつの事やから、こっちに来ててもそうそう死なんやろ」
トワは今も生きている。だから、彼女も例えこの
そう信じて、トワは作業に入った。
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