第3話 裏裏裏裏裏裏表
この世界はどこか狂っている。しかし流れは変わらない。
止まった世界の人々はどこかに《ナニカ》を求めていた。人々は天才を『神』とした。そして人々は安らぎを獲た。
しかし、それは天才の行いを認める事だった。いや、元から認めていたのだろう。天才の才能だけを。
それを天才は知っていた。知っていたからこそあの理論を作り出せたのだ。
天才はただ才能に裏切られた人達を救いたかったのかもしれない。救えないと知っておきながら、救われないと思いながら。
天才は真っ白な部屋の中で止まった世界を眺めていた。
獣は世界を変えていた。文明を進めた。町を滅ぼした。けれど人は一人も殺さなかった。人は獣に銃を向けた。それを撃ったところで意味がないと分かっているのに。
獣は世界を変える。才能を配り直す。その役目を強制されていた。
獣はこの先に何があるのかは全くわからなかった。自分がどうなるのかさえ全くわからなかった。
そんな時、獣は少女と出会った。彼女は言った。「私の後悔を終わらせる手伝いをして欲しい」と。
獣はその少女に見覚えがあった。そして獣は二つ返事で了承した。
獣は少女に取りつき。【後悔】を知った。そして少女には平等に才能を配られていなかった。少女の才能は元の状態だったのだ。
獣はその少女の結末に興味があった。その答えが少年にどれ程の影響があるのかを知りたかった。
だから獣は少女に取りつきその結末を眺めたいのだろう。
天才は真っ白な部屋の中で【後悔】を思い出していた。たった六年前の話だ。少年がただの天才になった日の事だ。
天才という名前の人形に成り果てた日の事だ。
そして、天才は見てしまうのだ。あの日の後悔が世界を変えていた。ある少女が世界を進めていたのだ。
天才は思った。何故彼女がいるのだろう。何故、才能を羨んでいた彼女がこの止まった世界を変えているのだろう。
獣と少女は考えていた。
この止まった世界を天才はどう思っているのだろうか。
平和でもなければ平等にもなれなかった世界を天才は望んでいたのだろうか。
その、問いに獣は一つだけ答えを出した。天才はこんな世界を望んでいない。天才は後悔をなかったことにするためにこの世界を作ったのだ。
少女にはその答えが理解できなかった。いつの時代も天才は理解されない。だが、少女が理解できなかったのは天才に後悔があった、という点だ。
その疑問にも獣は答えた。けれどそれは少女には分からなかった。
あの日の決別を天才と呼ばれる少年が喜んでいるように思えたからだった。
だから少女は後悔したのだ。あんなこと言わなければ良かった、と。
───そして、少女は辿り着く。いつかの後悔を終わらせる白い場所に辿り着く───
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