第2話

一時間ほどした後、電話の場所のビルには異様な者が立っていた。

服装こそはコートを羽織っておりいたって普通で少しもおかしくはない、

黄色の薄汚れたきぐるみのうさぎの頭と化したその頭部だけが

この灰の街の中では明るすぎて異様にういていた。

そしてうさぎは先ほど住所を受け取った携帯を片手に目標を確認していた。


秋雨市というこの市はかつての日は商業地区として栄えた。

この地区で買うものはどこよりも安く、そして飲食店もひけをとらない味と値段で

軒を連ねて存在していた食の街。

あの当時はきらびやかな電飾と香ばしい匂いで染まり

何人もの人間が会社帰りだったり飲み会で訪れていた活気のある街の1つだった。

しかし今となっては闊歩していとも簡単に脅かす『ガキ』達のおかげで灰の街へ。

丁度この地域の中心にあたる街ともあって北端の市のように

壊滅したわけではないものの『ガキ』に光を奪われた哀れな街の1つといえよう。


本当は折部はここに『仕事』で来たくはなかった。

この市には近日に『仕事』がなされており、その跡がのこっていなくもない。

自分のあしがつくことだけは嫌う、だから少なくとも1ヶ月はあけたかったのだが。


でも『それ』はそんなことお構いなしに『仕事』を放り込んできた。

肩をコキコキと鳴らしビルの中に入る。

さすがに深夜の10時過ぎともあってもう誰も市民は残っていない。

エレベーターの横に不自然に手斧が置いてあった。

それをひょいと持ち上げエレベーターのスイッチを殴るように押す。

エレベーター内部も見れたものじゃない。

頭の悪いスプレーの落書きやピンクビラがはりつけてある。

3階のスイッチを押すときっとすぐについてしまうだろう。

この落書き等にかまっている暇はないしそんなことより


—扉が開いた瞬間銃を持った背中が見えた。

折部は扉が開く数秒前に振りかぶりその背中の少し上

首筋に向かって刃を振りかぶっておろす。

急に出血したがためだろう喉に血があがってごぼごぼともがく敵を足蹴にして

三階にフロアに足をつける。


どうやらここは昔中華料理店だったらしい。

入り口には中国語でなんらかの店名が書いてある。

扉を少しあけて中をのぞくと、3人ほどまた見張りの男がいる。

一番手前が銃、奥二人はどうやら鈍器らしい。

ドアを思い切り手斧の柄の部分で叩く。

するとその騒音に銃を持った敵が気だるげにこちらのほうにおびきよせられてきた。

物陰に身を隠していた折部は姿が見え次第その腕を引き地面にたたきつけた、

そして力のかぎり腕に足を振り下ろし骨を折ってやる。


けたたましい悲鳴が響いたことで残り二人が急いで入り口にくる。

そして残り二人がくるタイミングで足をつっかえぼうのように出し

一人を転ばせると、そいつにつまづいてもう一人も重なるように転んだ。

足を出した屈んだ体勢から立ち上がりの反動と一緒に手斧を振りかぶり

二人の首を重ねて両断した後、腕を折っておいた見張りの首も振りかぶった足で折る。

そして中に誰もいないことを確認すると最奧のVIPルームと思わしき部屋へ。


そこには怯えきった目で腰を抜かした派手な格好の男がいた。

彼はなにか言い訳をしようと口を開きかけたがその言葉は

折部がどこからか引っ張り出しかぶせた熊の着ぐるみの頭によってふさがれた。

もごもごと動くその頭とそれ以外の丁度の境目を見定め


慣れたような手つきで折部は手斧を振り切った。


中身を伴った熊の着ぐるみがごろごろと転がり血の雨が降り注ぐ中

折部は腹を鳴らしながらその場をあとにした。

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