【16】エルフの魔力で錯覚って、なに? 摩訶不思議。

優香side

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 結局、かめなしさんに送ってもらうことになった。


「……本当に無免許運転じゃないよね?」


「バーカ、俺の運転なめんなよ。ハンドルさばきはタカより上手いんだから」


「……うそ」


 かめなしさんは異世界ファンタジーのメンバーとして活動していた時に、ナギの魔術で運転免許証を取得したらしい。日本で暮らすために必要な戸籍や住民票も全部ナギが用意したらしい。


 それは魔術で偽造したものに違いないが、車の運転は想像以上に上手だった。


 自宅前に矢吹君のフェラーリを停め車から降りる。車のエンジン音を聞き付け母が家から飛び出した。


「優香……!かめちゃんが……!」


 かめなしさんが私のリングに気付き、手を掴むとサファイアのリングがピカッと光を放った。


 その光は母の目を直撃する。母はポカンと口を開け、数回瞬きをした。まるで電池が切れたロボットみたいに固まっている。


「……ママ!?」


 数秒後、母は生気を取り戻し穏やかな顔で私を見つめた。


「あら?私、どうしたのかしら?優香お帰りなさい。かめちゃん遅かったわね。いらっしゃい」


「……かめちゃん!?」


「やだ、優香、従兄のかめちゃんを忘れたの?暫く一緒に暮らすことになったのよ。さぁ、上がって。かめちゃんの部屋は……、えっと、かめちゃんの部屋は……どこだっけな?」


 ママは首を傾げ、「そうだ。優香の部屋の隣ね」と頷いた。


 かめなしさんが私の従兄?

 一体、どーなってるの!?


「かめなしさん、どーいうこと!?」


「あとで説明するよ。おばさん、暫くお世話になります」


「はい。おやすみなさい」


 かめなしさんは私の手を掴んだまま、二階に上がる。


「どーいうことって、聞いてるの。ちゃんと説明して!」


「これはエルフの魔法のリングだ。優香がピンチの時は魔法の光を放ち、優香を守ってくれる」


「だ、だからなんでかめなしさんが従兄なのよ!?」


「パパやママは俺の第二の家族なんだよ。どうせ暮らすなら、タカのマンションよりこの家がいいに決まってるだろう。優香の隣が俺の部屋。優香、宜しくな」


「宜しくって、困るよ。かめなしさんはもう猫じゃないし、私達他人だし、私は……矢吹君と……」


「わかってるよ。タカが好きなんだよな。エルフのペアリング付けてるから、錯覚起こしてるだけかもよ」


「……さ、錯覚?」


「エルフのペアリングは魔力があるからな」


「……っ、錯覚?」


 それって本当なの?

 矢吹君の気持ちは、錯覚を起こしてるだけ!?


「優香、明日北川動物病院まで送るよ。獣医とは別れてくれ」


 かめなしさんに言われなくても、北川先生にはちゃんと話をする。


「夜、寂しくなったら、俺がいつでも添い寝してやるからな」


「……っ、結構です!」


 部屋に飛び込みドアを閉めた。

 鼓動がトクトクと音を鳴らす。


 薬指にはサファイアのリング。


「……エルフの魔力で恋の錯覚?」


 あのキスも……

 あのぬくもりも……

 あの言葉も……

 全部……!?





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