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「優香のママがそんなに俺のことを心配してくれてるのか?優香、このまま一緒に帰ろう。パパとママなら、きっと説明すればわかってくれるはず」


「……説明?どう説明するつもり?『猫だったけど本当はホワイトメイディ王国の獣族で、獣耳と尻尾を魔術師に斬り落とされて人間になりました』とでも言うつもり?」


「よくわかったな。流石、優香。何年も同棲してると以心伝心だな」


「だ、だから、同棲じゃないってば」


 優香はバタバタと両手をばたつかせ、俺に視線を向けた。林檎みたいに真っ赤な頬、そんな顔しなくても、ナイトとのことは疑ってないよ。


 だって、ナイトは今まで猫だったんだから。


「ナイトとセガは暫くここに住め。優香は俺が家まで送って行くよ」


「タカ、お前は有名人だ。マスコミに狙われてる。自らスクープをばらまかなくてもいいだろう。今日は俺が送る。パパとママに世話になった御礼も言いたいし、車のキーを貸せ」


 確かに俺はマスコミに狙われている。

 再び優香をマスコミの餌食にするわけにはいかない。


「わかった。今夜はお前に頼む。運転免許証は持っているのか」


「ナギの魔術で、地球人に必要なものは全て授かってる」


「用意周到だな」


 俺は車のキーをナイトに投げる。

 キーは放物線を描き、ナイトの手中に収まった。


「優香、送るよ」


「……う、うん。矢吹君、セガさん、おやすみなさい」


「おやすみ。またメールするよ」


「……うん」


 ナイトはこれ見よがしに、優香の手を掴んだ。


「わ、わ、矢吹君コレはその……。かめなしさんが猫だから。ね、ね」


「バーカ、猫じゃねーよ。人間だ」


 ナイトは俺を横目で見ながら優香とリビングを出る。


「ていうか、タカいいのか?ナイトはもう人間なんだぜ。三角関係勃発で俺達本当に再結成できんの?優香ちゃん拒否ってたし、ナギの代役務まるのかな」


「たとえナイトが人間になったとしても、俺達の気持ちは揺るがないよ」


「すげぇ自信だな。俺が参戦したら、四角関係だぞ。優香ちゃんはエルフの姫にそっくりなんだよな。性格は三番目のキギ姫と七番目のトギ姫に似てるんだよな」


 ていうか、俺には九人が同じ容姿に見えるし、性格の区別なんてつかないよ。


「だったら、お前ははキギ姫かトギ姫と付き合えばいいだろう」


「エルフの姫より、やっぱり身近にいる人間の女子が萌えなんだよな」


「俺に殴られたいのか」


「うわ、温厚なタカ王子が女のことで従弟を殴るのか、恋は盲目だな」


「煩いよ。居候なんだから、大人しくしてろ」


「はいはい」


 本当は優香と二人で住むつもりだったマンション。男三人で同居するとは想定外だが、これも致し方ない。

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