143

 ――異次元ポータルで地球に転移した俺達は、一先ず俺のマンションへと向かった。


「父さんと何を話してたんだよ。俺達をホワイトメイディ王国から追放するなんて、公爵になった途端偉そうに。何様のつもりなんだよ」


 親心が全く理解出来ていないナイト。

 カメナシは俺達の命を救うために、国外追放したのに、どうしてそんな簡単なことがわかんないのかな。


「それともうひとつ。タカ、国王陛下に優香のことを恋人だと紹介しただろう。まだ優香はお前の恋人じゃないからな」


「優香は俺の恋人だよ」


「俺はもう猫じゃねぇ。優香と俺は同棲してるんだ。同じベッドで一緒に寝てキスだってしてるんだからな」


「きゃっ、やだ!かめなしさん!私達は同棲してないよ。かめなしさんは飼い猫だっただけで、一緒に寝るとかキスとか矢吹君が誤解することは言わないで」


「誤解って何だよ。マジでヘコむ。俺は何度も優香に告白しただろう」


「あれはその……。猫だったから、本気だと思わないし」


「だから、今は猫じゃないし。ホワイトメイディ王国の獣族でもないし。優香と同じ人間なんだから。それに、異世界ファンタジーのTAKAじゃなくて、俺のファンだったくせに。浮気するなんて許さないからな」


 優香は都合が悪くなったのか、小さくなったペガサスの頭を撫でて誤魔化す。


「矢吹君やかめなしさんやセガさんが、本当に異世界から来たなんて、まだ夢を見ているみたいで……信じられない。猫のかめなしさんがNAITOだったなんて、イメージ壊れちゃう」


「……っ、イメージが壊れちゃう!?」


 ナイトはフーッと俺を威嚇する。

 人間になったのに、猫の習性が抜けないようだ。


「そうだよな。信じられないよな。無理もない」


 優香は俺に視線を向けた。


「私、だからね」


「……無理?」


 ナイトが「フン、ほらみろ」と勝ち誇った顔をした。


「異世界ファンタジーのNAGIの振りをするなんて、絶対に、絶対に、無理だからね」


「なんだ、そっちかよ。になるのがムリじゃねーのかよ」


 ナイトは口をへの字に曲げ、超不機嫌だ。


「優香、大丈夫だよ。ステージに立つ時はみんなメイクをしてるし。エルフのナギが人間の振りをしてバレなかったんだから。それにナギの魔術でキーボードは弾けるしな」


「私、仕事あるし。動物病院辞めたくないの」


「動物病院の先生との交際、まだ断ってないのか?まさか、本気であの獣医と!?」


「……そうじゃないよ。北川先生との交際はちゃんと断る。でも……」


「優香、俺達と一緒にやろう。優香の力が必要なんだ」


「……異世界ファンタジーのファンを騙すなんて」


 セガが優香の手を両手で握り締める。


「優香、俺達とバンドやろうぜ!」


「セガ、呼び捨てにすんな。優香に触ってんじゃねぇよ!」


 ナイトにバシッと頭を叩かれ、セガは顔を歪めた。


 優香の携帯電話が音を鳴らす。

 電話の相手は優香の母親で、メールには【かめなしさんがいなくなったの。優香、どうしよう……】と、書かれていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます