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「カメナシ一族はこの獣族の王族であり、ジャンはその直系です。ギダ殿下とアリシア御成婚の際に、王位を獣族に返還なされてはいかがですか」


 国王陛下は怒りから、拳をプルプルと震わせた。


「タカ王子。恐れながら、わたくしどもにそのような考えはございません。国王陛下、このような無礼な振る舞いを許すおつもりですか?この者達をこの王国に帰還させてはなりません。タカ王子の王位継承権を剥奪し、国外追放されるべきかと」


 カメナシの強い口調に、国王陛下は深く頷いた。


「タカ王子、セガ公子、並びにナイト・カメナシ、以上三名を国外追放とする。処刑されたくなければ、即刻この王国から立ち去るがよい!二度とこの王国に帰還することは認めぬ!」


「……国王陛下、わかりました。最後に紹介したい人がいます。彼女は上原優香さん。地球人であり俺の恋人です。俺は彼女と日本で生きていきます。どうか、お元気で……。セガ、ナイト、行こう」


 俺は唇を噛み締め、優香の手を掴み広間を飛び出す。セガもナイトも俺達の後に続いた。


 ホワイトメイディ城の前に待たせていたペガサスの馬車に乗り込む。俺達を見送ってくれたのは、カメナシと城から飛び出したギダ殿下とアリシア。


 俺はカメナシに声を掛ける。


「カメナシ、ありがとう。わざとあんなことを言ったんだよね。国王陛下の怒りを鎮めるために……」


 カメナシは優しく微笑み、アリシアの頭を撫でた。小さな獣耳がブラウンの髪からピコンと飛び出す。


「さて、何のことでございましょう。ホワイトメイディ王国はギダ殿下とアリシアが、戦争のない平和な国にすることでしょう。人族と獣族、エルフが一丸となり、この王国も住みよい国となりましょう」


「……カメナシ。国王陛下とお后のことを宜しくお願いします」


「タカ王子、わたくしは国王陛下の元執事でございますよ。公爵の位を与えられても、生涯国王陛下にお仕え致します」


 馬車の中から、ナイトが声を荒げる。


「タカ、行くぞ。俺達を国外追放した男といつまで話してんだよ」


 カメナシがソッと耳打ちをする。


「不出来な嫡男ではありますが、タカ王子、何卒宜しくお願い申し上げます」


「カメナシ、わかったよ。じゃあ、元気で……」


 ギダ殿下とアリシアは「バイバイ」と、無邪気に手を振る。


 この王国の未来は……

 人族の小さな王子と獣族の小さな姫が、作り上げてくれることだろう。


 ペガサスは馬車を引き、青空に駆け上がる。


 ――俺達の新たな人生の幕が上がった。

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