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「どうしてそのような姿に……」


「国王陛下に命じられたエルフの魔術師に、無実の罪で猫の姿にされていましたが、魔術を解いてもらう交換条件、罰として、獣耳と尻尾を切り落とし人間の姿にされました。俺はタカ王子やセガ公子と地球に転移します」


「ち、地球に転移……」


 アターシャはよほどショックだったのか、ナイトの腕の中で気絶した。


「母さん!母さん!」


「やはり、アターシャには酷であったようだ。お前は祖国を、この父や母を捨ててまでも地球に行くつもりか」


「父さん……。一度切り落とされた獣耳はもう元には戻らない」


 廊下で国王陛下の怒鳴り声がした。


「カメナシはおらぬか」


 中広間のドアを開くと、少し酒に酔った国王陛下が立っていた。


「国王陛下、わたくしならここに。アターシャの体調が悪く様子を見ておりました」


「夫人が?……これは、タカ王子ではないか!?」


 俺達は驚愕する国王陛下に跪き頭を垂れた。


「国王陛下、ご無沙汰しております」


「タカ王子、セガ公子、……お前は誰だ」


 国王陛下はナイトに視線を向けた。

 カメナシが国王陛下に頭を垂れた。


「国王陛下、この者は我が嫡男ナイトでございます。たった今、この者と親子の縁を切ったところでございます」


「親子の縁とな!?お前は……ナイトなのか!?なぜ人間に……!?」


「この者は、国王陛下に背きタカ王子とセガ公子と共に地球に行くと申しました。その罪は到底逃れませぬ。将来ギダ殿下と御成婚をするアリシアのためにも、このような者を嫡男と認めるわけにはいきません。

 国王陛下の処罰を受けるまでもなく、エルフの魔術師がこの者の獣耳と尻尾を斬り落とし、国外追放とすることに致しました」


「獣耳を斬り落としたとな……」


「はい。獣耳と尻尾は獣族の誇りでございます。この者はもう獣族でも、わたくしの嫡男でもございません。一人の人間に過ぎません」


 国王陛下が俺に視線を向けた。


「国王陛下、わたくしも地球に転移するつもりです。いや、帰還と言った方が正しいのかな。俺達人族は、元々日本人なんだから」


「タカ王子、ギダ殿下はまだ子供だ。それでもお前は、王位継承権を放棄し祖国を捨てるというのだな」


「いえ、祖国に戻るのです。本来ならば、王族である人族もみな地球に転移すべきだと思っています。この国は獣族に返還すればよいではありませんか」


「なんだと」





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