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 ◇


 ―ホワイトメイディ城―


 警護の兵士を眠らせ城内に入ると、階段で五歳くらいの男の子と可愛い獣族の女の子が仲良く遊んでいた。


 女の子には獣耳がある。


「……もうこんなに大きくなったんだ。一気に成長するんだね。君たちはギダ殿下とアリシアだよね?」


 俺の問い掛けに、ふたりは頷く。

 エジソン大元帥に暗殺され、エルフの魔術師に新たな命を授かり転生したギダ殿下とアリシア。


 俺達のことは、二人の新たな記憶の中にはない。


「……アリシアだって!?」


 ナイトは幼児になってしまったアリシアに驚きを隠せない。アリシアもまた獣耳のない兄を人族だと勘違いしている。


「あなたは誰ですか?王族の方々ですか?ギダ殿下、ご親族ですか?」


「僕の知らない人だよ。カメナシ、カメナシはおらぬか」


 ギダ殿下は執事を呼ぶ。ジャン・カメナシはナイトの父親だ。


「ギダ殿下お呼びでしょうか」


 姿を現したカメナシは、俺達を見て目を見開いた。


「……これは、タカ王子、ご帰還されたのですか?よくぞご無事で……。ギダ殿下、アリシアと一緒にお部屋でお遊び下さい。カメナシはこの方々とお話がございます」


「タカ王子は……私の兄弟ですか?ギダのお兄様ですか……?」


「それは違いますよ。タカ王子は国王陛下の第二王子です。さぁ、お部屋へ」


「「はーい」」


 二人はパタパタと階段を駆け上がる。

 カメナシは二人が部屋に入ったことを見届けると、俺達に視線を向けた。


「父さん……」


「父さん?」


 カメナシは変わり果てたナイトの姿に驚愕した。


「……ま、まさか。ナイトなのか!?獣耳や尻尾はどうしたのだ!」


「父さん、俺はもう獣族じゃない。エルフの魔術師に人間にして貰ったんだ」


「……なんということを。お前は誇り高き獣族を捨てたというのか!」


「誇り高き?国王陛下の執事でいることが、誇り高きことなのか?本来ならば、父さんこそがこの国の国王になるべきなのに」


「……ナイト、口を慎め!恐れ多いことを言うでない。ギダ殿下とアリシアは幼いながらも正式に婚約をしている。国王陛下の温情により、カメナシ一族には公爵の身分を与えられたのだよ」


「公爵……、ギダ殿下の婚約者の親が執事では釣り合いが取れないからな」


「今宵は王族の晩餐会が開かれている。騒ぎ立てるでない。さぁ、こちらへ」


 俺達は中広間に通された。

 そこにはブルーのドレスを身に纏った獣族の夫人が、椅子に腰を降ろしていた。


 ナイトと同じブラウンの瞳が、こちらに向けられた。


「……ナイト?ナイトなのね!?」


 公爵夫人となったアターシャが、ナイトに駆け寄り、獣耳を無くした頭を優しく撫でた。




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