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「ナイト、ご両親の許可を得なくても大丈夫か?お前の意思は変わらないんだな」


『俺はお前と対等になりたい。人間になって正々堂々とお前に挑む』


 ナイトは再びエルフ王とパギの前に跪く。


『お願いします。猫なんてもう懲り懲りだ。俺を人間にして下さい』


「よいのだな」


『後悔は致しません』


「よかろう。ナギを地球に連れて行かぬと誓うなら願いを叶えてやろう」


『……ナギは地球には連れて行きません。お願いします』


 パギは杖を振り上げた。

 ナイトの体は光のループに包まれ、見えなくなった。その光はやがて卵の形となり、卵の中でプヨプヨとナイトが動き回っているのがわかる。


 数分後、卵からニョキッと手が出た。

 次に二本の足が出る。卵の殻がポロポロと崩れ落ちるように、光の中で一糸纏わぬナイトの体が露わになる。


「きゃあ……っ」


 優香は頬を真っ赤に染め、両手で目を隠した。


 俺と同じ肌の色。

 茶色の髪、瞳の色はブラウン。

 容姿は今までと殆ど変わらないが、明らかに違うことは、獣耳と尻尾がないこと。


「あれ?な、ない?ない?」


 ナイトは頭やお尻に触れ、「ひゃっほ~!」と声を上げ飛び跳ね、お尻をフリフリした。


「……ナイトが人間に!?」


「マジかよ。すげーな。完璧じゃん」


 セガはナイトの裸体をまじまじと見て感心している。


 ナギは虹色のスティックを振り、ナイトに白いスーツを着せ、獣耳の代わりに人間の耳をつけた。


「裸族じゃないんだから。優香さんが困ってるだろう。エルフ王、パギ、ありがとう。さぁ、みんな、もう出発して。国王陛下に逢って、地球に移転することを認めて貰うんだ」


「……ナギ、ありがとう。けど、本当にいいのか?」


「僕はエルフの王子だよ。僕は地球に未練は無い。歌はこの国で歌い続ける」


「……ナギ、必ずまた逢いに来るから」


「うん。いつでも遊びにきて。セガ、七人の姉さんも待ってるから」


「はは、七人も妻には出来ねーよ。人族は一夫多妻制じゃねーからな。でも、エルフが一夫多妻制なら、それもアリだけど」


 エルフ王がフーッと鼻息を荒げる。

 宮殿の中を強風が吹き荒れ、セガの体は洗濯槽の中で回る衣服みたいにグルグルと回転し、目を回してひっくり返る。


 アギ王女と俺の婚約も正式に解消し、俺達四人はペガサスに付けられた白い馬車に乗り込む。


「……ナギ、ありがとう」


「タカ王子、セガ、ナイト、元気でね。優香さん、三人のこと宜しくお願いします」


「……私、ナギさんの代役なんて無理です」


「大丈夫だよ。ステージで笑ってるだけでいい。キーボードの前に立つだけで、指が勝手に動く魔術を掛けたから心配はいらない」


「……指が勝手に!?」


「ペガサス!行け!」


 ペガサスは翼を広げ空に駆け上がる。

 獣族の誇りを捨て人間となったナイトを乗せ、一路ホワイトメイディ城を目指した。

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