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「ナイト、バカなことを言うな。本来ならばお前は獣族の王子だ。人間にして欲しいなんて……」
『タカ、俺は本気だよ。俺が獣族の誇りである獣耳も尻尾も失えば、国王陛下も許して下さるだろう』
魔術師パギが「ふん」と鼻を鳴らす。
「一度斬り落とした獣耳や尻尾は、二度と元に戻ることはないのじゃ。それでも人間になりたいと?」
『はい。そうすれば国王陛下も許して下さるでしょう』
ナイトは振り返り優香を見つめ、再びパギに視線を向けた。パギはエルフ王と顔を見合わせた。
「人間となり、どうするつもりだ」
『俺はタカやセガ、ナギとともに地球に転移します』
「ナギだと?ナギはエルフの王子だ。地球に行くことは許さぬ。どうしても連れて行くというのなら、皆を大木の中に閉じ込めるまで」
パギが杖を振り上げると、草木の蔓がミシミシと音を鳴らしながら伸び、大蛇のように俺達の手足に絡み付く。
ナギは虹色のスティックを取り出し、瞬時にその蔓を切り裂いた。
「ナギ王子、魔術の腕を上げたものじゃ。このわしに逆らうとは、なかなかやるのぅ」
パギはクツクツと声を上げて笑った。
「じゃが、お遊びはそこまでじゃぞ」
パギが杖を振り上げたと同時に、無数の蔓が俺達に襲いかかる。ナギは俺達の前に飛び出した。
「ま、待って!僕は地球には行かない!僕はエルフの王子だ。人間の世界では生きられない。だから、みんなを大木の中に閉じ込めるなんてやめて!」
「ナギ、それは
「僕はお姉様みたいに嘘はつかない。だから、お願いだ。お父様!タカ王子もナイトも解放して。パギ!ナイトの願いを……叶えて上げて」
「ナギよ、それでよいのだな」
「はい」
俺はナギに耳打ちする。
「ナギ、お前が行かなければ意味がない。四人揃わなければ再結成の意味がないんだ」
「タカ……。この場を沈めるためにはそうするしかないんだよ。僕がいなくても、僕の代わりはいる」
「お前の代わりなんて、どこにいるんだよ」
「タカ王子の傍にいるだろう。優香さんは僕にそっくりだ。メイクして衣装をつければ誰も別人だなんて思わない。大丈夫だよ」
「……優香をナギの代わりに!?」
「もともと異世ファンのNAGIは中性的な妖精のイメージ。性別の公表はしていない。バレやしないよ」
「む、無理です!私、キーボードなんて弾けません」
からくり人形のように手足をバタつかせ慌てふためく優香に、ナギはクスリと笑う。
「僕はエルフの王子だよ。魔術が使えるんだ。キーボードなんて、チョチョイノチョイだよ」
「……でも、人前で演奏するなんて、ム、ムリ」
「ナイトの願いを叶えたいんだ。お願い、優香さん」
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