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――その時……
チャペルのドアがガチャンと音を鳴らした。一番後ろの席に座っていた私は、思わず振り返る。
ドアが開き太陽の光が、チャペルの中に差し込んだ。
眩しい光の中に……
男性のシルエットが浮かび上がる。
そこに立っていたのは……
矢吹君……?
嘘……
どうして……矢吹君が……?
矢吹君はすぐに私を見つけた。
私に視線を向けると、ニコッて笑った。
やだ……笑い掛けないでよ。
私の心臓はもう張り裂けそうだ。
久しぶりに見る矢吹君は、立っているだけで芸能人のオーラを放ってる。太陽の光よりも眩し過ぎて、視線が合わせられない。
ドアは一瞬で閉まり、矢吹君はコツコツと私の方に近付いて来る。
どうしよう……。
心臓はバクバクと音を鳴らし、泣きそうだ。
思わず私は前を向き、矢吹君から視線を逸らした。
矢吹君……こっちに来ないで……。
お願い……来ないで……。
矢吹君は何食わぬ顔で、私の隣にスッと立った。
「もう挙式終わったんだね。仕事が押して来るのが遅くなった。見れなくて残念だったな」
「どうして……ここに来たの……」
「田中から、招待状貰ったんだよ」
「……うそ」
「本当だよ。嘘ついてどうすんの。フラワーシャワーの花、俺にもちょうだい」
「……う、うん」
小さな籠に入ったカラフルな薔薇の花びら。籠を持ち私達はチャペルの外に移動する。
仲良く腕を組み歩く二人に、私達は花びらを投げる。
綺麗な薔薇の花びらが、二人の頭上にヒラヒラと舞った。
「おめでとう!美子!」
美子が私と矢吹君に視線を向けた。
美子は矢吹君を見ても驚きもせず、もう一度私に視線を向けニコッて笑った。
……明らかに計画的犯行だよ。
みんなの歓声が飛び交う中、美子と榊さんは極上の笑顔を向ける。
華やかで幸せに満ちた笑顔。
幸せの連鎖。その場にいた者達は、心が満たされとてもハッピーな気持ちになる。
前列にいた恵太がギョッと目を見開き、矢吹君に視線を向けた。
「矢吹……来たのか……」
「中原、元気か?もう傷は大丈夫か?お前彼女と一緒に参列したんだな」
「彼女……チッ、そーだよ!彼女だよっ!てめぇ、優香とどーなってんだよっ!優香を泣かせたら許さねぇと、俺は言ったはずだぞ!」
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