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「ナギ、優香は……」
「大丈夫、眠っているから。今、ナイトが付き添ってる。獣族軍はとりあえず蝋人形にして、牢に閉じこめてある。あとはエジソン大元帥とイギ王女が決めるだろう」
「そうか。ありがとう……。セガ、お前も無事でよかった。あれからどうしていたんだ?ホワイトメイディ城には戻ったのか?」
「森で迷っちまって、国軍に捕らわれる寸前に、ナギに助けて貰った。エルフの湖畔でナギや王女たちと暮らしていたんだ。優香ちゃんと同じ顔が9人もいるんだぜ。エルフの湖畔はハーレムだよな。人族ってだけでモテモテだ。
アギ王女は使用人のリルクと結婚出来なければ駆け落ちすると騒ぐし、イギ王女は誰でもいいから結婚したいと騒ぐし、毎日が大騒ぎだよ」
「それでイギ王女とエジソン大元帥を?」
「本人がこの結婚に大乗り気で、自ら志願したんだよ」
「そっか。よくエルフ王が許したな」
「エルフ王が了承済みのわけねーだろう。アイツ、今頃は石像になってっかも」
セガはゲラゲラと笑っている。
確かに、エルフ王ならやりかねない。
控室のドアを開けると、ソファーに横たわる優香に、ナイトが唇を近付けていた。
「ナイト!何やってんだよ!」
『ちぇっ、お邪魔虫め!いいとこだったのに。姫の目覚めは王子のキスに決まってんだろ』
「優香に手を出したら許さないからな」
『ふん、俺達は毎日同じベッドで寝て毎日チューをしてっから。今さらだよな。ウェディングドレス姿の優香は、超綺麗だよ。このまま俺達も挙式したいくらいだ』
「……ナイト、お前」
『俺は優香が好きだ。お前の何十倍も、何百倍も好きだ!人気女優と共演して浮かれてるお前とは違うんだよ!』
「……人気女優?」
『知らないとでも思ったか。テレビも雑誌もチェックしてんだよ。優香以外の女とキスしてんじゃねーよ!』
「……風月桜か。あれは仕事だ」
『お前がやりたかったのは、歌じゃなかったのかよ!バンドは遊びだったのかよ!俺達は夢を掴むために地球に行ったんじゃねーのかよ!』
「異世界ファンタジーの活動は続けることは出来なかった。何故なら、魔術のせいでナイトは行方不明、ナギは昏睡状態だったし、俺もセガも追われていたから……」
『俺はお前に幻滅したよ。優香は俺が地球に連れて帰る。お前は王国の王位継承者だ。ここに残るんだな』
ナイトは眠っている優香を抱きかかえ立ち上がる。
「ナイト、待って。僕が魔術師に頼んであげる。その魔術を今すぐ解いてもらおう。ね、そうしよう。国王もエルフ王も、ナイトが僕達をそそのかして地球に連れて行ったなんて、もう思っていないよ」
『優香の傍にいられるなら、俺は一生猫で構わない。優香は動物と話せる不思議な能力を持っているんだ。俺が猫でも優香と話せるし、俺の姿も優香にはちゃんと見えてる』
「……まさか」
『タカ、もう二度と優香の前に現れるな。いいな。ナギ、ペガサスを借りるぜ』
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