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ナイトはペガサスを呼び寄せる。
ペガサスは翼を広げ夜空を旋回し、窓の外に降り立つ。
『タカ、あばよ!』
「待て!ナイト!」
ナイトは窓から飛び出し、優香を抱いたままペガサスの背中に乗る。
『ペガサス!行け!』
ペガサスは翼を広げ、夜空に駆け上がる。
俺は窓枠から身を乗り出し、ペガサスの足を掴んだ。ペガサスの足にぶら下がったまま夜空に舞い上がる。
「タカ!」
ナギとセガが俺達を見上げる。
「……ちぇっ、また自分だけ地球に行く気かよ。ナギ、俺にもペガサス貸してくれ」
「セガ、ペガサスはレンタル商品じゃないんだよ。あのペガサスはアギ王女がタカに与えたものだ。僕にはどうにもならないよ」
「だったら、空飛ぶ絨毯とか、空飛ぶ箒とか、魔術が使えるんだから、何だって出せるだろう」
「それって、エルフをバカにしてるの?」
「してねーよ。俺も地球に行きたいって言ってんの。もう一度、バンドがしたいんだよ。俺達の曲を歌いたいんだ」
「うん。僕も歌いたい。その前に、僕達には重要な仕事が残ってる。人族と獣族とエルフが平和に暮らせる国を作ることだ」
「そんなの無理に決まってんだろう。タカがアギ王女との結婚を破談にしたせいで、エルフ王が怒り狂ってんだから。獣族軍が衰退しても、このままだとエルフ王が国王やギダ殿下を暗殺しかねないよ」
「そうだよね。人族とエルフがもっと密接になる必要がある。エジソン大元帥のように、人族と姉さんの誰かが結婚すればいいんだよ」
「はん?エルフの王女と王族が?ギダ殿下にはアリシアがいるし、タカは優香にゾッコンだし、他に誰がいるんだよ。人族は王族しかいねぇんだよ」
ナギがニヤリと口角を引き上げ、俺の鼻先を指さした。
「エルフの王女はあと七人いる。セガのことみんな気にいってるよ。誰がタイプ?義兄さん」
「バ、バカ!誰が義兄さんだ!俺は断る!みんな、お前と同じ顔じゃん!クローンじゃねぇんだから。ペガサスなんていらねーし。自力で異次元ポータルまで歩く!」
「また森で迷子になっても知らないからね。義兄さん」
「……っ、バカヤロウ!義兄さんって、何度も呼ぶな!」
夜空には美しい星が煌めく。
地球では見ることが出来ないほどの、眩いばかりの星が、俺達を包み込んだ。
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