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「……タカ!大丈夫!?」


 入口から飛び込んで来たのは、ナギとセガだった。セガのライフル銃はレオン大佐を捉えている。


「ていうか、銃で蜂の巣にされるのと、ナギの魔術で蝋人形にされるのと、どちらがいい?」


『……っ』


「レオン大佐!銃を捨て大人しく言うことを聞け!そうすれば、魔術師に頼んで猫の魔術を解いてやるよ。なぁ、ナギ」


「そうだね。エジソン大元帥はもう僕の家族だし、レオン大佐はその弟分だもの。国王もエルフ王も許してくれるだろう。ねぇ、義兄にいさん。獣族軍は国軍となり国王に仕えるか、解隊して森で静かに暮らすのとどちらがいい?」


「に、義兄さん!?」

『義兄さんだと!?』


 ナギの言葉に、エジソン大元帥と俺は同時に声を上げた。ナギは俺達の問い掛けを無視し、俺に駆け寄る。


「タカ……!血が……!ごめん。もっと早く来ればよかった。今すぐに傷を治してあげる」


 ナギは俺に近付き傷口に手を翳す。ナギの手のひらから黄金の光が放たれ、銃弾が傷口から飛び出し床に転がる。傷口は徐々に小さくなり完治した。


「まあ、ナギ、いつの間にそんな魔術を覚えたの?エルフの落ちこぼれ王子が、随分立派になったこと」


「姉さん、酷いな。僕だって、魔術くらい使えるさ」


「……姉さん!?えっ?姉さん!?」


 エジソン大元帥が目を見開き、ウェディングドレスを身に纏った花嫁に視線を向けた。


『お前は……地球人ではないのか!?いや、地球人だよな。タカ王子の恋人だろう。控室でメイドがウェディングドレスを着せたはず……』


「やぁね。エジソンったら。私が地球人に見えるの?私はエルフ王の次女、イギ王女よ。控室で彼女とすり替わったのよ。地球人は私が魔術で眠らせているから、今もソファーで熟睡してるわ」


『お前は……エルフ王のイギ王女!?俺を騙したのか!?』


「ダーリン、騙したなんて酷い。私達は神の御前で誓いのキスを交わしたのよ。もう夫婦だわ。十字架のリングはその証拠。私、あなたみたいにワイルドな人好きよ」


『……っ』


 イギ王女はエジソン大元帥のネクタイをムンズと掴む。


「エルフ王と王妃に、結婚のご挨拶を致しましょう。レオン大佐、あなたには私達の護衛を命じます。同行しなさい」


『……ちっ』


 レオン大佐は渋々イギ王女のあとに続く。セガはその様子を見ながらゲラゲラ笑った。








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