107

 銃口を突き付けられたまま要塞の奥へと進む。要塞には小さな礼拝堂があった。


 礼拝堂の通路には赤い絨毯が敷き詰められ、サイドには木製のベンチが置かれている。


 あの冷酷なエジソン大元帥に信仰心があるとは意外だった。礼拝堂の奥に進むと、そこには白いタキシードを着用した男が、女を抱きかかえていた。


 男にはレオン大佐と同じく獣耳が生えている。


 抱きかかえられている女は白いウェディングドレスを着用し、髪にはウェディングベールをつけ顔は見えない。


 気を失っているのかぐったりしているようにも見えた。


 その男がゆっくりと振り返る。

 鋭い目をしたシャム猫だった。


『タカ王子、ようこそ、我が要塞へ』


「……お前がエジソン大元帥か」


『そうだ。エルフの魔術師に猫の姿に変えられてしまったがな』


「……優香はどこだ」


『ふっ、ふっ、ふっ、自分の恋人がわからないのか?お前の目の前にいるだろう』


「……なんだって!?」


 ウェディングドレスを着ているのが、優香だというのか!?


『俺は婚約者アリシアをギダ殿下に奪われた。婚約者がいながら、不義密通を繰り返したギダ殿下とアリシアに罰を与えたのに、国王はエルフの魔術師に二人の命乞いをした。二人が赤ん坊として転生したことを、俺が知らないとでも思ったか』


「……そのことと、優香に何の関係があるというんだ!」


『ギダ殿下はまだ赤ん坊だ。即ち王位継承第一王子はギダ殿下ではない。王位継承者はお前なんだよ!俺はお前を殺し、お前の婚約者と結婚しホワイトメイディ王国の国王となる!死ぬ前に俺と同じ苦しみを味合うがいい』


「そんなことはさせない!」


 ズンッ……と銃声がし、俺は床に崩れ落ちる。激痛が襲い足から血が吹き出す。


『レオン大佐、俺の挙式を人間の血で汚すな』


『エジソン大元帥、申し訳ありません』


「……優香!優香は地球人だ!俺のことも、この国のことも、何も知らないんだ!優香から手を離せー!」


 俺の叫び声に……

 優香が目を覚ます。


「……ここは……どこ?あなたは……?」


『俺はエジソン大元帥だ。お前は今宵俺の妻となるのだ』


「あなたが……私の夫?」


『そうだ。異論はないだろう』


「……そうね。凛とした耳、鋭い眼差し、男らしくて素敵。私、あなたと結婚してもいいわよ」

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