105

 ―羽田空港―


 車を駐車場に停め、夜空を見上げる。


「ペガサスー!」


『ペガサス?お前、何言ってんの?』


「まあ、見てろ」


 数秒後には、白いペガサスが翼を広げ夜空に現れる。


『……ま、まじかよ。何で地球にペガサスが……』


「エルフのアギ王女から借りているんだ。ペガサス、王国に戻る。ついてこい」


『なんでアギ王女から?』


「話せば長くなるが、聞きたいか?」


『長くなるならいいや。面倒くせーからな』


 翼を広げたペガサスの姿は、地球人には置物にしか見えない。

 勿論、ナイトも地球人には猫にしか見えていない。


 ――俺達は横一列となり、羽田空港の搭乗口に近付き、右手を真っ直ぐ上に伸ばし人差し指を天に向ける。俺達の指先が赤く光り、光線が円を描く。


 異次元ポータルが開き、俺達の体は瞬時にその穴に吸い込まれた。


 ◇


 ―ホワイトメイディ王国―


 時刻は午後十一時四十五分。

 日本との時差はほとんどない。


 森の中は不気味なほどに静かだった。

 東京の街のように街灯もなければ、車のライトもない。あるのは満点の星だけ。


 俺達は元の姿に戻ったペガサスの背に飛び乗る。ペガサスは白い翼を広げ夜空を駆け抜けた。


「約束の時刻まであと十五分しかない。ペガサス!獣族軍の要塞へ急げ!」


 深い森の山頂に要塞が見えた。険しい岩山、要塞の周辺には数名の衛兵がいた。


「ペガサス、俺達を降ろしたらエルフの湖畔に戻るんだ。そこにナギとセガがいるはずだ。二人を連れて来てくれ!」


 ペガサスは要塞の北側で俺達を降ろし、再び夜空に駆け上がる。


 要塞の北側には大きな岩があり、そこから要塞の様子が見てとれた。


 ナギの魔術で蝋人形にされ、牢獄に閉じこめたはずの兵士が銃を構え、要塞の周辺を見張っている。


 時刻は十一時五十五分。


『タカ、ナギやセガが来るのを待ってらんねーよ!行くぜ!』


「よし、行こう!」


 俺達は何の武器も持っていない。

 奴らに捕まれば、死は免れないだろう。


 だが、この命に代えても優香だけは必ず助け出す。


「手を上げろ!」


 背中にヒンヤリとした感触、俺達は両手を上げる。


「タカ王子よくきたな。お前は……カメナシ一族のナイト!?生きていたのか!?」


『生きてるさ。貴様はゴーラル少尉。タカ王子に銃口を向けるとは、無礼千万。あとでどうなってもしらねーぞ』


「人族のイヌになりおって。お前には獣族の誇りはないのか」


『イヌ?俺はイヌじゃねぇ、だよ。見てわかんねーの?ゴリラのゴーラル少尉よ』


「……っ、俺はゴリラではない!」





 

 

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