【12】涙のバージンロード……? 摩訶不思議。
貴side
103
優香とのことがマスコミに騒がれ、1週間以上が経過した。
所属事務所社長の指示で、車の運転も禁止され、仕事の現場にはマネージャーの送迎となる。
「貴、わかってるだろうな」
「
「それならいい。明日は少しゆっくり出来る。午後四時に迎えにくるからな」
「はい。失礼します」
地下駐車場で白いワンボックスカーから降り、エレベーターに向かう。
突如薬指のリングが青く光った。胸騒ぎがしフェラーリに視線を向けると、ワイパーに紙らしきものが挟まり、ヒラヒラと揺れていた。
フェラーリに近付き、紙をぬき取る。
【午前零時獣族軍の要塞で待つ。来なければ彼女の命はないと思え。エジソン大元帥】
「……彼女?」
ワイパーにはネックレスのチェーンがぶら下がっていた。
ネックレスを手に取るとそこには……。
「どうしてこれが……!?」
俺が優香に渡したサファイアのリング。
エルフ王のアギ王女より賜りしもの。
優香を守ってくれるはずのリングが、どうしてここに……!?
優香の携帯電話に電話を掛けたが、コールするだけで留守番電話へと切り替わる。
俺はフェラーリの鍵を開け運転席に飛び乗り、優香の家に車を走らせた。
―北千住―
午後十時、住宅街は静けさに包まれていた。俺は車から降り、歩道から優香の部屋の窓を見上げた。優香の部屋の明かりは消えている。
「ナイト!いるんだろう。大切な話があるんだ!」
暫くして、出窓に人影が移る。
その人影には獣耳があった。
「……ナイト!お願いだ!出て来てくれ!」
レースのカーテンが開き、二つの目がキラリと光った。
『タカ、こんな夜中に何の用だ。優香ならいないよ。出張で帰らない』
「……出張?違うんだ!出張なんかじゃない!」
『出張じゃない?何のことだ』
「獣族軍に浚われたんだ!」
『……な、何だって!?』
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