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「すっごいイケメンが運転してたね。私ね、メイク用品一式持ってるから貸してあげる。ロッカールームのテーブルの上に赤いポーチが出してあるから、メイクしておいで」
「藤崎先輩、本当ですか?助かります!」
「そのキスマークは、ファンデーションでも隠れないね。うふっ、絆創膏でも貼るしかないよ」
「あわわわ……」
慌てて首筋を隠す。
『だから、言ってるだろ?早く貼れって』
テリーの言葉に、思わず言い返す。
「絆創膏貼ればいいんでしょ」
藤崎先輩が目を見開いた。
「えっ?そうね……」
「わ、わ、藤崎先輩すみません。藤崎先輩に言ったわけではありません。ヨークシャーテリアに」
「ヨークシャーテリア?」
「いえ、その……絆創膏ペタペタって」
私は棚から絆創膏を取り出し、首筋にペタペタと貼る真似をする。
「貸してごらん。私が貼ってあげるから。そういえば、優香ちゃんの彼氏、どこかで見たことあるんだ。どこだっけ?」
「き、気のせいですよ」
「そうかな?誰かに似てるよね。俳優かな?アイドルかな?」
「……藤崎先輩、私の彼はそんなにイケメンじゃないですから。アハアハ」
笑って誤魔化すが、彼は俳優矢吹貴だもん。
イケメンに決まってる。
『男のマンションから出勤だなんて、苺のパンツもいい度胸してるよな』
「う、煩いっ!」
「……えっ?何?私?煩い?」
私の怒鳴り声に、ドン引きした藤崎先輩。
「藤崎先輩、ち、違います。ワンワン、キャンキャン、ヨークシャーテリアが吠えて煩かったから、つい……すみません」
「ワンちゃんが鳴くのは、私達に構って欲しいからよ。動物の気持ちになって、ワンちゃんやネコちゃんに接しないとね」
「……すみません」
『ふん、怒られてやんの。優香、さっさとメイクして、仕事しろよな』
「ぐっ……。ロッカールームでメイクしてきます」
私は笑ってるテリーをジロリと睨み、ロッカールームへ直行した。
藤崎先輩に矢吹君の顔を見られ、ドキドキと鼓動が高鳴る。メイクを済ませ自分のロッカーを開けるとバッグが光って見えた。
エメラルドグリーンの光……?
バッグを開くと、そこにはサファイアのリング。サファイアは青藍色をしていて、エメラルドグリーンの光は消えていた。
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