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 まるで、苺のパンツしか持ってないみたいじゃない。私だって、勝負下着くらい持ってるんだからね。


 矢吹君と恋人になってから、こっそり買ったんだ。でも、残念ながら、昨日は突然だったから、さくらんぼのパンツだったけど。


『まじで?苺のパンツがお泊まりってか!?苺のパンツを抱く男がいるなんて……』


「ていうか、昨日はさくらんぼのパンツです」


『うわ、ダサッ。優香、どんな男だよ。よっぽどの物好き?クククッ』


「う……煩いな」


『優香、すっぴんはヤバいぞ。ぶさいくだし、そのキスマークも厭らしいなぁ〜。クンクン、男の匂いがする。まさか朝までイチャイチャしてたのか。犬の嗅覚をナメんなよ』


「……わわわわ」


 みんなにキスマークを見られた!?

 しかも矢吹君の匂いだなんて……。


 私は慌てて首筋に手を当てて隠す。


『絆創膏でも貼っとけよ。そこの棚にあるだろ。婦長にバレたら説教だぞ』


「……だよね。そーする」


『その顔はどーしようもないな。顔にもメイクがわりに絆創膏でも貼っとくか?クククッ』


「……っ、どういう意味よ」


 ヨークシャーテリアの『テリー』とシーズーの『ジョニー』が好き勝手にほざいている。


 二匹とも発情してるの?朝から下ネタはもう勘弁してよ。


『最近、やけに艶っぽいとは思ってたんだよな。パサパサの芋姉ちゃんも男が出来ると甘露芋みたいになるんだな』


「誰が甘露芋よ。黙って聞いてたら調子に乗って、許さないからね。せめてスイートポテトにして」


 冷たい視線に気付き振り返ると、そこにはシャムとアメリカンショートヘア。二匹は黙って私を見ている。


 二匹はいまだに人間には馴染めない。


 アメリカンショートヘアの口が微かに動いた。


『くだらねぇ』


 初めて発した言葉に驚き、ゲージに近付く。


「騒いでごめんなさい。やっと話してくれたね。あなたの……名前は……?」


 ――その時、不意にドアが開いた。


「優香ちゃん、おはよう!今日、遅かったね。あれ?今日はノーメイクなの?えっ?もしかしてラブホから出勤!?」


 私はブルブルと首を振る。


「ごめん。さっき病院の窓から見ちゃったんだ。優香ちゃんがカッコイイ外車から降りるところ」


「わ、わ、でも、ラブホじゃないです!彼のマンション……」


「彼のマンションから出勤したの?優香ちゃんも大胆不敵だね。隅に置けないな」


 同じ看護助手の藤崎ふじさき先輩に、み、見られた!?


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