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「だって、無理だろ。お前は芸能人なんだよ。優香と付き合うなんて無理だよ」
「心配すんな、俺は優香を泣かせたりしない。もう二度と優香を手離さない。中原、お前にももう渡さないよ」
「矢吹、本当だな?お前が優香を泣かせたら、その時は俺が……」
――ボカッ!
「いってぇ――……。アホ、傷口が開くやろ」
美咲さんが恵太の頭を殴った。
「頭殴って、腹の傷口が開くわけないやろ」
まるでボケとツッコミのコントみたいだ。恵太は痛みに顔を歪ませ、苦笑いしている。
「恵太!その時はどうすんねん!その先を言うたら、許さへんで!」
美咲さんは指をポキポキと鳴らし、恵太を威嚇している。
「わかってるて……。ジョ、ジョーダンや。矢吹に、念を押しただけやんか」
私と矢吹君は、二人を見て吹き出した。
微笑ましくて、可愛くて。恵太は私よりも先に、運命の人を見つけていたんだね。
だから、最近は電話もメールもなかったんだ。
でも……よかったよ。
安心……したよ。
美咲さんは口調はきついけど愛情に溢れている。恵太のことを大切に想い、愛していることが伝わってくる。
私はこれから先も、恵太の幼なじみで……。
恵太の一番の親友で……。
ずっと、ずっと……
恵太の傍にいるから……。
恵太は、私の家族みたいな……
大切な存在だから。
美咲さんと、幸せになってね。
私は……なれるかな?
矢吹君と……幸せになれるかな?
恵太の言葉を思い出し、少し不安だった。
「中原、お前に聞きたいことがあるんだ。犯人は迷彩服を着て、顔に獣のマスクを被っていたんだよな?」
「そうだよ。特殊メイクみたいに完璧なマスクだったよ。目の錯覚かもしれないが、手も人間の手じゃなかった」
「……人間の手じゃなかった?」
「毛むくじゃらのゴリラみたいな手だったが、日本語を話していたし、喧嘩していた酔っ払いの証言では、『大根すり』を探していたとか。意味わかんねーよな。よほど腹が減ってたのかな」
「大根すり?」
「恵太、それちゃうで。喧嘩を目撃していた人の証言によると、探していたのは『だいげんすい』やて。軍隊の『大元帥』か、それとも人の苗字じゃないかって、今捜査中や」
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