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「うん、ニュース観たよ」
『重症の中原巡査って、あの中原だよな?大丈夫なのか』
「恵太にさっき電話したんだ。報道は大袈裟だって笑ってた。意外と元気そうだったよ」
『なんだ、そうか。よかった。お見舞いに行くのか?』
「うん、行くよ。明後日の日曜日に行くつもり」
『俺も一緒に行っていいかな?』
「えっ?映画の撮影は……?」
『スケジュールは大丈夫。必ず行くから、俺の新幹線のチケットも一緒に予約してくれない?』
「どうして……、矢吹君が……」
『俺さ、中原と話がしたいんだ』
「……えっ?」
『優香とのことを、中原にちゃんと話したいんだ』
「私も……同じこと考えてた。矢吹君のチケットも予約取るね。午前九時くらいの新幹線にするつもりだけど、大丈夫?」
『大丈夫、必ず行くから。じゃあ、おやすみ』
「……おやすみなさい」
矢吹君も一緒に行ってくれるんだ。
すごく嬉しかったよ。
でも恵太は、何て言うだろう……。
恵太はまだ私と遠距離恋愛しているつもりなのかな……。
私が恵太を裏ぎって、矢吹君と交際していることを知れば、恵太はあの時みたいに怒って矢吹君に殴りかかるのかな。
でも、警察官の恵太が俳優の矢吹君にそんなことをしたら……恵太は警察官の職をなくしてしまう。
◇
―日曜日―
私達は東京駅の山陽新幹線口で待ち合わせた。
新幹線のチケットは自由席。
俳優の矢吹君と並んで座ることに抵抗があり、離れて座るつもりだったけど、矢吹君は堂々と私の隣に座った。
一緒にいると、矢吹君が俳優だってことを忘れてしまう。矢吹君は初めて出逢った時と同じだったから。
でも恵太に逢うことは、内心ドキドキしている。
矢吹君と二人で行くなんて、恵太に話してないから。
恵太はきっと驚くよね。
ショックが大き過ぎるかな。
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