71

「うん、ニュース観たよ」


『重症の中原巡査って、あの中原だよな?大丈夫なのか』


「恵太にさっき電話したんだ。報道は大袈裟だって笑ってた。意外と元気そうだったよ」


『なんだ、そうか。よかった。お見舞いに行くのか?』


「うん、行くよ。明後日の日曜日に行くつもり」


『俺も一緒に行っていいかな?』


「えっ?映画の撮影は……?」


『スケジュールは大丈夫。必ず行くから、俺の新幹線のチケットも一緒に予約してくれない?』


「どうして……、矢吹君が……」


『俺さ、中原と話がしたいんだ』


「……えっ?」


『優香とのことを、中原にちゃんと話したいんだ』


「私も……同じこと考えてた。矢吹君のチケットも予約取るね。午前九時くらいの新幹線にするつもりだけど、大丈夫?」


『大丈夫、必ず行くから。じゃあ、おやすみ』


「……おやすみなさい」


 矢吹君も一緒に行ってくれるんだ。


 すごく嬉しかったよ。

 でも恵太は、何て言うだろう……。


 恵太はまだ私と遠距離恋愛しているつもりなのかな……。


 私が恵太を裏ぎって、矢吹君と交際していることを知れば、恵太はあの時みたいに怒って矢吹君に殴りかかるのかな。


 でも、警察官の恵太が俳優の矢吹君にそんなことをしたら……恵太は警察官の職をなくしてしまう。


 ◇


 ―日曜日―


 私達は東京駅の山陽新幹線口で待ち合わせた。


 新幹線のチケットは自由席。

 俳優の矢吹君と並んで座ることに抵抗があり、離れて座るつもりだったけど、矢吹君は堂々と私の隣に座った。


 一緒にいると、矢吹君が俳優だってことを忘れてしまう。矢吹君は初めて出逢った時と同じだったから。


 でも恵太に逢うことは、内心ドキドキしている。


 矢吹君と二人で行くなんて、恵太に話してないから。


 恵太はきっと驚くよね。

 ショックが大き過ぎるかな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます