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『あっ、つい関西弁が……。俺は大丈夫だよ。かなり……傷は痛むけど、生きてるし、死ぬ予定もないし』


「……恵太が重傷だって、ニュースで……」


『まじで?全国ニュースで報道されてんの?あり得ないな。俺が犯人捕り逃がしたこと、全国にもう知れ渡っているのか。こんなところで、いつまでも寝てらんねーな。優香、俺はピンピンしてるから、心配すんな』


「……よかった……よかった」


 涙が溢れ落ちた。

 すっごく不安だったんだよ。


『優香……泣いてんのか?』


「だって……恵太が死ぬかと思ったんだ。よかったよ、恵太が生きててくれて、本当によかった」


『バカだな。俺はあれしきのことで死なねぇよ。絶対に犯人を逮捕してやる。けど、犯人の似顔絵誰も書けねーんだよな。まるでゴリラみたいだったから』


 犯人は迷彩服に獣のマスクだと、ニュースで報道されていたけど、本当だったんだね。


 そういえば……。

 私は不思議な能力のせいか、殆どの犬や猫は毛むくじゃらの姿に見えるけど、かめなしさんみたいに獣耳以外肌もつるんとしていて人間みたい見える場合は珍しい。


 まさか、恵太にも同じ能力があるのかな?


 そんなわけないよね。

 恵太はかめなしさんのこと、猫にしか見えてなかったし。


 傷害事件の犯人が獣のマスクを被っていたとの、目撃情報もあるんだから。


「ねぇ恵太。私、お見舞いに行っていい?」


『え……見舞い!?わざわざ大阪にか?見舞いはいいって。仕事あるんだろ。無理すんな』


「でも……行く。恵太に逢いたい」


『……お、俺に……?わかった。待ってる。じゃあな』


 恵太に……逢わないと。

 恵太に逢って、矢吹君の事をちゃんと話さないと……。


 ――プルルル……プルルル……


 恵太との電話を切ると、すぐに携帯電話が鳴った。電話の相手は、矢吹君だった。


「もしもし……」


『優香、ニュース観たのか』



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