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こんなことなら、優香と初体験を済ませておくべきだった……。
◇
――勤務先の交番。山田巡査と小川巡査は巡回に出掛けて、俺一人。
デスクで雑務を済ませ、酔っ払いが置いていったスポーツ新聞を何気なく広げた。
一面は芸能ニュースだ。
日米合作映画か、興味ねぇな。
大型新人俳優だってさ。
すげぇな、二万人から選ばれたラッキーボーイだってさ。俺の方がイケメンじゃん。
ふ〜ん、矢吹貴か、二十四歳ね。
へぇ~、矢吹と同姓同名じゃん。
世の中には、同じ名前をした奴がいるもんだな。
えっ?同姓同名……?
へっ……この顔……?
新聞に掲載されている写真に、どこか見覚えがある。俺は新聞に額をひっつけて、マジマジと写真を見る。
ええっ〜!?こ、この俳優……!?
……や……矢吹だよな!?
あいつ、いつ日本に戻って来たんだよ?
あいつ、俳優になったのか?
すっげぇ!?そんな才能があったなんて。
……って事は、東京に住んでるのか?
まじで?
このこと、優香は知ってんの?
なんで、東京に戻ってんだよ!
――その時、交番の前で喧嘩が勃発した。
一人はスーツを着たサラリーマン風。一人は迷彩服で顔に獣のマスクを被っている。
この近辺で映画かドラマの撮影でもしているのか?ハロウィンでもないのに、仮装ってことはないよな。
どちらが不審者であるのか判別するまでもなく、それは今まで体験したこともないくらい異様な光景だった。
「てめぇ、何さらしとんねん。なんや、そのマスク?ふざけとんのか」
「何のことだ。ぶつかって来たのはお前だろ。俺は
「大根すり?はあ?大根なら、家に帰って母ちゃんの足を擦ったらええやろ」
ロレツも回らず、足元もおぼつかないスーツ姿の男が、よたりながら迷彩服の男に殴り掛かる。
迷彩服の男は俊敏な動きで、その拳を交わし、酔っ払いの顔面にストレートパンチを浴びせ、さらに回し蹴りをした。
酔っ払いは口から血を吹き、歩道にドサッと倒れ込む。
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