恵太side
64
―大阪―
俺は美咲と魔の一夜を過ごし、あれから優香に、電話は愚かメールすらしてない。
……って言うか、出来ねぇよ。
俺は馬鹿正直だから、優香に嘘がつけない。
優香の声を聞いたら、絶対に浮気がバレてしまう。いや、あれは同意の上の情事ではなく、俺を計画的に泥酔させた上で美咲が襲った計画的犯行に違いない。
俺達は大阪と東京で、大切に遠距離恋愛を育んできたのに……。
優香が就職し、俺が警察学校に入学した頃から、互いが忙しくなり連絡を取り合っていなかった。
でも、離れていても優香とは通じ合えている自信があった。
だって俺達は、幼稚園の頃からの幼なじみだ。優香の考えていることや優香の性格は、全部わかってる。
俺の心の中にはいつも優香がいて、優香の心の中にも俺がいて、矢吹の出現で俺達の関係に亀裂は走ったが、それも今は完全に修復されて、俺達はキスをした仲なんだから。
去年の年末と年始は、優香の家に泊めて貰ったんだ。優香を抱くチャンスなんて、山ほどあったのに、俺は優香を抱く事が出来なかった。
何故って?
優香が机の上にあるウルフのぬいぐるみを『タカシ』と呼んだことで、矢吹からのプレゼントだって分かったから。
矢吹とは完全に別れたと思っていたのに、そのぬいぐるみを大切に飾っている優香を見ていたら、俺は優香にそれ以上手が出せなかった。
優香の心の中には、まだ矢吹がいるんだって、そう思ったから。
優香の心を占めているのは、俺だけじゃない。その比率は半分ずつ?それとも、矢吹で埋め尽くされているのか……?
勇気を出して、重ねた唇。
優香の心を埋め尽くしているのは、矢吹じゃない、この俺だ!って、そう思っていたのに……。
うわああーー……!
一生の不覚!
な、な、な、んで、俺が美咲に埋め尽くされてんだよ!
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