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「誰がキモいって?あはは、誰がぁ?えへへっ」
『やっぱ壊れてる……。先生ー!婦長ー!大変だよー!』
動物達の言葉が、先生や婦長に通じるわけないのに。
「上原さん、ちょっといいかな?」
階下から、私を呼ぶ先生の声。
えっ?まさか、通じちゃったの?
まさかね?
「今、行きます!」
慌てて階段を駆け降り、診察室のドアをノックし室内に入る。
「おはようございます。あの……何でしょうか?」
「やぁ、おはよう。……んっと」
先生は周りを見渡し、ドアを閉めた。
「二階に誰かいた?」
「いえ?入院患者さん以外、いませんけど」
何の話だろう?
私なんかミスしたかな?
ていうか、ミスだらけでどのミスかわからない。
「あのさ、上原さんはライブとか好き?」
「ライブですか?アーティストにもよりますけど……」
「Mysteriousなんだけど」
「Mysteriousですか?好きです。大好き!異世界ファンタジーの次に好きなミュージシャンです」
「異世界ファンタジーも好きなんだね。よかった。これMysteriousのライブチケットなんだ。行かない?」
「わぁ~頂けるんですか?行きます!」
「本当?十二月にあるんだけど、大丈夫かな?」
先生から渡されたのは一枚のチケット。
えっ?一枚って事は一人分しかないってことだよね?
まさか、一人で行くの?
二枚あれば美子を誘うんだけど。
「この事は他の職員には言わないで欲しいんだ。個人的に上原さんを誘ってるだけだから」
個人的に誘ってる……?
先生の言ってる意味がわからず、返答に困っていたら、不意にドアが開いた。私は貰ったチケットを制服のポケットに突っ込む。
「先生、入院中のミニチュアダックスですが。あら、ごめんなさい。先生、上原さんがまた何かしましたか?」
私を見て『また何かしましたか?』だなんて、婦長もキツいな。
「いや、そーじゃないよ。ミニチュアダックスの退院の件で、上原さんに指示をしていたんだ」
真面目な先生が……
婦長さんに嘘をついた。
「そうだったんですか。先生、退院前の診察をお願いします」
「ああ、すぐに行くよ」
先生は立ち上がると、私を見つめた。
「じゃあ、あとは指示通りに宜しく」
指示通りに宜しくって……?
えっ?えっ?どうしよう!
これって、デートの誘いなのかな?
まさか……ね?
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